10話 飴色カラメル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「プリン対決見てきたんですよね?」
樹が部屋に戻るなり、美和はそう話しかけてきた。情報が早い女だ。
「どうして知ってるの」
「サロン・ド・マリーじゃたいした騒ぎだったんですからそりゃね」
「いちごが勝ったわよ」
「あはは、まじっすか!素人転校生に負ける先輩お嬢様とか!ウケる!」
美和はなんの気後れもなさそうに笑い出す。清々しいので樹はどちらのフォローもする気がなくなった。
「そういえば、東堂さん、どうしてその時あの四人と一緒じゃなかったんですか?」
「え、ああ・・・何となく乗り気じゃなくて」
「そうですか」
美和は特に気にした風も無く話を切り上げる。樹は珍しく言いよどんでしまったことが自分でおかしく感じた。
「ところで東堂さんはケーキグランプリにエントリーする予定も無く?」
「ええ、そうね。あなたはどうなの」
「あんな面倒くさいことしませんって。勝てるメンバーも集められませんし」
「中等部予選くらいなら何とかなりそうなものだけど」
「甘いですよ。今年はエントリー人数が増える見込みですからね、ふるい分けが厳しくなるかもしれません。一般的な二年生レベルだとやはり厳しいですよ」
ちなみに今年人数が増えるという予測は、昨年のスイーツ王子の快挙のこともあるし、天王寺出場の噂によるところもあるらしい。美和はケーキグランプリに関する情報をしゃべることは割と好きなようだ。方向は違えどケーキグランプリに対する情熱はなかなかあるらしい。
「プリン対決で小城さんが負けたなら、小城さんは新しいチームを作ってくるんでしょうね。メンバーは佐藤さんと塩谷さんの他にもうひとり必要ですが・・・あの性格で寄ってくる人なんているんだか・・・」
「だれ、佐藤と塩谷って」
「腰巾着」
「ああ」
そんな話題で盛り上がりを見せていると、突然ドアが開けられた。寮長かと思い、二人はびくっとしたが、そこにいたのはルミだった。樹は息をついた。
「何、ノックぐらいした方が良いわよ、ルミさん」
「いちごちゃんがおらんねん!どこにも!」
樹は目を丸くした。
「学園中探してみたけど・・・荷物も持ち出されとるし、多分出てったんやと」
その後樹も交えていちごをまた探してみたルミだが、成果は無く、男子寮からスイーツ王子を呼びつけることにした。その報告に、三人も驚愕の表情を見せる。
「マジかよ!」
「・・・あの時・・・」
「かなり傷つけてしまったかもね・・・」
安堂と花房がなぜか青ざめた顔をする。
「・・・ったく、ちょっときつく言われたくらいで家出するようじゃ、厳しいパティシエの世界でやってけねーよ」
樫野は投げやりに言う。樹とルミには状況がよく飲み込めない。
「樫野に言われても慣れっこだろうけど」
「普段優しい僕たちに言われたんだ。ショックだったんだろうな」
「うん、うん」
「お前らなあ・・・」
「やばっ!」
ルミはふと腕時計を見て声を上げた。
「もうすぐ門限時間や!このまま無断外泊になったら思いっきり退学やで!」
「困ったね・・・」
「ちっ・・・」
樫野はひとり早足に寮に向かって歩き出す。投げやりにいちごを見捨てたようでは無かった。あれは考えがあるんだなと安堂が呟いた。
「じゃあ、とりあえず樹ちゃんたちは帰った方が・・・」
「何があったかくらい、教えてくれないの」
樹の言葉に、花房は少し目を瞬かせた。彼女が何か聞いてきたにしては大人しい声だった。いつもは問いつめるような口調なのに、覇気がないとも言える。
「・・・えっと」
「やっぱり今日はいい、明日聞くわ。行きましょう、ルミさん」
「ああ、じゃあ・・・」
女子寮へ戻る二人の背中を、花房はしばらく見つめていた。
樹が部屋に戻るなり、美和はそう話しかけてきた。情報が早い女だ。
「どうして知ってるの」
「サロン・ド・マリーじゃたいした騒ぎだったんですからそりゃね」
「いちごが勝ったわよ」
「あはは、まじっすか!素人転校生に負ける先輩お嬢様とか!ウケる!」
美和はなんの気後れもなさそうに笑い出す。清々しいので樹はどちらのフォローもする気がなくなった。
「そういえば、東堂さん、どうしてその時あの四人と一緒じゃなかったんですか?」
「え、ああ・・・何となく乗り気じゃなくて」
「そうですか」
美和は特に気にした風も無く話を切り上げる。樹は珍しく言いよどんでしまったことが自分でおかしく感じた。
「ところで東堂さんはケーキグランプリにエントリーする予定も無く?」
「ええ、そうね。あなたはどうなの」
「あんな面倒くさいことしませんって。勝てるメンバーも集められませんし」
「中等部予選くらいなら何とかなりそうなものだけど」
「甘いですよ。今年はエントリー人数が増える見込みですからね、ふるい分けが厳しくなるかもしれません。一般的な二年生レベルだとやはり厳しいですよ」
ちなみに今年人数が増えるという予測は、昨年のスイーツ王子の快挙のこともあるし、天王寺出場の噂によるところもあるらしい。美和はケーキグランプリに関する情報をしゃべることは割と好きなようだ。方向は違えどケーキグランプリに対する情熱はなかなかあるらしい。
「プリン対決で小城さんが負けたなら、小城さんは新しいチームを作ってくるんでしょうね。メンバーは佐藤さんと塩谷さんの他にもうひとり必要ですが・・・あの性格で寄ってくる人なんているんだか・・・」
「だれ、佐藤と塩谷って」
「腰巾着」
「ああ」
そんな話題で盛り上がりを見せていると、突然ドアが開けられた。寮長かと思い、二人はびくっとしたが、そこにいたのはルミだった。樹は息をついた。
「何、ノックぐらいした方が良いわよ、ルミさん」
「いちごちゃんがおらんねん!どこにも!」
樹は目を丸くした。
「学園中探してみたけど・・・荷物も持ち出されとるし、多分出てったんやと」
その後樹も交えていちごをまた探してみたルミだが、成果は無く、男子寮からスイーツ王子を呼びつけることにした。その報告に、三人も驚愕の表情を見せる。
「マジかよ!」
「・・・あの時・・・」
「かなり傷つけてしまったかもね・・・」
安堂と花房がなぜか青ざめた顔をする。
「・・・ったく、ちょっときつく言われたくらいで家出するようじゃ、厳しいパティシエの世界でやってけねーよ」
樫野は投げやりに言う。樹とルミには状況がよく飲み込めない。
「樫野に言われても慣れっこだろうけど」
「普段優しい僕たちに言われたんだ。ショックだったんだろうな」
「うん、うん」
「お前らなあ・・・」
「やばっ!」
ルミはふと腕時計を見て声を上げた。
「もうすぐ門限時間や!このまま無断外泊になったら思いっきり退学やで!」
「困ったね・・・」
「ちっ・・・」
樫野はひとり早足に寮に向かって歩き出す。投げやりにいちごを見捨てたようでは無かった。あれは考えがあるんだなと安堂が呟いた。
「じゃあ、とりあえず樹ちゃんたちは帰った方が・・・」
「何があったかくらい、教えてくれないの」
樹の言葉に、花房は少し目を瞬かせた。彼女が何か聞いてきたにしては大人しい声だった。いつもは問いつめるような口調なのに、覇気がないとも言える。
「・・・えっと」
「やっぱり今日はいい、明日聞くわ。行きましょう、ルミさん」
「ああ、じゃあ・・・」
女子寮へ戻る二人の背中を、花房はしばらく見つめていた。