10話 飴色カラメル
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いちごが、小城とプリン対決をすることになったらしいと聞いたのは次の朝だった。なんでも、樹が離脱したあとに四人がサロン・ド・マリーに行った時彼女と一悶着あったらしく、居合わせた理事長の悪ノリもあって、スイーツ王子とのケーキグランプリエントリーを賭けた争いとなってしまったようだ。しかも天王寺が監督するらしい。
プリンの実習はいちごが来てからは無かったし、いちごは授業でやったもの以外に関しては特に練習していた様子もない。これはまた徹夜でもするのではないかと思ったら、案の定ルミが「いちごが帰らない」と言ってきたので、樹は実習室を見に行った。
「うわ、何これ」
樹は調理台の惨状を見て度肝を抜かれた。
「あ、樹ちゃんも来たんだ」
「もしかして対決のこときいたの?」
「きいたわ」
作りかけのものから完成品まで、カラメルの焦げ具合もばらばらなプリンがところせましと並べられている。調理室中のボウルや鍋を使ったらしく、その他の器具も材料で汚れきったまま無造作に置かれていた。
「・・・授業が始まるまでに片付くのかな?」
安堂は苦笑した。
「それより、おかげでバッチリできるようになったよ!ね、食べてみて!」
いちごは取っておいたいくつかのプリンを配った。その指にいくつもテーピングが貼られているのが見える。
「これは、おいしいよ!」
「驚いたな!一晩でここまで上手になるとは!」
「・・・ああ」
「比較は出来ないけど、問題ないと思う」
四人はその味に一様に頷く。
「カラメルソースがちょうどよくなってますー!」
「いっぱい作るにもほどがありますわ!」
「なによ、ショコラ!」
カラメルソースの指導をしていたらしいキャラメル達もにっこりしている。
「でも、時々鬆がはいっちゃうのよね・・・。同じように作ってるのに」
褒められているのにいつもより浮かれず、いちごは一つプリンを持ち上げて言う。鬆というのは生地の中に空気が入って出来る穴で、見かけ的にも舌触り的にもあると美しくない。
「それ、もしかして下のオーブンで焼いた?」
「えっ?うん・・・」
「あのオーブン、他のより焼き上がりが強くなるんだよね。上のは焼きむらが出やすいし」
「そうなの?」
安堂がいちごに新たな知恵を授ける。樫野もそれに続く。
「オーブンにも、一台一台癖がある。数をこなして、知っていくしか無いな」
祖母のオーブン一つでやっていた樹も最初は知らなかったことだが、一度にたくさんのオーブンを使う機会に触れて、何となく気がついた。そのことが仲間内では割と周知の事実であることに少し気後れを感じたが、百年前から知っていたように振る舞うことにする。
「あー!おいしいですー!」
「なにこれ、甘過ぎ!」
スピリッツ達は他のプリンにも手を付けては批評している。
「あ!それって、カラメルの焦がしが足りないが甘いよね」
「キャラメルは実は甘い方が好きなんです!」
そうだろうなとは思っていたが、やはりそうだ。逆にカフェは苦い物好きで過度に甘いものは苦手らしい。
「いちごちゃん、今夜も特訓するの?だったら、差し入れ持ってくるよ」
「ありがとう!でも、今夜はちょっと用があるから、いいわ!」
いちごは、何か考えがありそうな顔をしていた。
プリンの実習はいちごが来てからは無かったし、いちごは授業でやったもの以外に関しては特に練習していた様子もない。これはまた徹夜でもするのではないかと思ったら、案の定ルミが「いちごが帰らない」と言ってきたので、樹は実習室を見に行った。
「うわ、何これ」
樹は調理台の惨状を見て度肝を抜かれた。
「あ、樹ちゃんも来たんだ」
「もしかして対決のこときいたの?」
「きいたわ」
作りかけのものから完成品まで、カラメルの焦げ具合もばらばらなプリンがところせましと並べられている。調理室中のボウルや鍋を使ったらしく、その他の器具も材料で汚れきったまま無造作に置かれていた。
「・・・授業が始まるまでに片付くのかな?」
安堂は苦笑した。
「それより、おかげでバッチリできるようになったよ!ね、食べてみて!」
いちごは取っておいたいくつかのプリンを配った。その指にいくつもテーピングが貼られているのが見える。
「これは、おいしいよ!」
「驚いたな!一晩でここまで上手になるとは!」
「・・・ああ」
「比較は出来ないけど、問題ないと思う」
四人はその味に一様に頷く。
「カラメルソースがちょうどよくなってますー!」
「いっぱい作るにもほどがありますわ!」
「なによ、ショコラ!」
カラメルソースの指導をしていたらしいキャラメル達もにっこりしている。
「でも、時々鬆がはいっちゃうのよね・・・。同じように作ってるのに」
褒められているのにいつもより浮かれず、いちごは一つプリンを持ち上げて言う。鬆というのは生地の中に空気が入って出来る穴で、見かけ的にも舌触り的にもあると美しくない。
「それ、もしかして下のオーブンで焼いた?」
「えっ?うん・・・」
「あのオーブン、他のより焼き上がりが強くなるんだよね。上のは焼きむらが出やすいし」
「そうなの?」
安堂がいちごに新たな知恵を授ける。樫野もそれに続く。
「オーブンにも、一台一台癖がある。数をこなして、知っていくしか無いな」
祖母のオーブン一つでやっていた樹も最初は知らなかったことだが、一度にたくさんのオーブンを使う機会に触れて、何となく気がついた。そのことが仲間内では割と周知の事実であることに少し気後れを感じたが、百年前から知っていたように振る舞うことにする。
「あー!おいしいですー!」
「なにこれ、甘過ぎ!」
スピリッツ達は他のプリンにも手を付けては批評している。
「あ!それって、カラメルの焦がしが足りないが甘いよね」
「キャラメルは実は甘い方が好きなんです!」
そうだろうなとは思っていたが、やはりそうだ。逆にカフェは苦い物好きで過度に甘いものは苦手らしい。
「いちごちゃん、今夜も特訓するの?だったら、差し入れ持ってくるよ」
「ありがとう!でも、今夜はちょっと用があるから、いいわ!」
いちごは、何か考えがありそうな顔をしていた。