41話 決断の時
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天王寺敗退の知らせは、チームいちごをどよめかせた。
しかも、大敗とのことだ。
チームフランソワといえば、いちご達にとっては一回戦で姿を見たきりの存在だが、その一回戦のフードワゴン対決で彼女らがクレープを選択し、チーム天王寺と同数の売り上げを叩き出していたことは皆の記憶に残っていた。
「でも、あの天王寺会長が負けるなんて・・・!」
「信じられないですう」
ショコラ、キャラメルたちスピリッツも動揺を隠せない様子だ。たまらず、樫野は調理台に拳を打ち付ける。その衝撃にスピリッツ達がびくりと跳ね上がった。
「なんで負けちまったんだよ!あの時の悔しさは、今でも忘れちゃいねえ・・・決勝でリベンジしたかったのに・・・なんでだよ・・・」
「樫野・・・」
日本でのグランプリ決勝で人一倍の心残りを抱えていた樫野の心境が思いやられ、いちごは胸を詰まらせる。完成しなかったエッフェル塔。あの日からずっと樫野の中に再戦への闘志と自責があることをみんなが知っていた。
「詳しい情報を知る必要があるね。それに・・・」
花房はチーム天王寺への懸念を露わにしながらも、腕の中で未だ意識を取り戻さない樹の顔に視線を落とした。
グランプリの行方とは比べようもなく心配だった。
スイーツ王国で樹とパートナーに何があったのか。いちご達も同じ気持ちのようで、全員がどこに感情を傾けるべきか見失ったような顔をしていた。
「ともかく、理事長や学園の関係者に・・・」
「その必要はないわ!」
ひとまず大人の力を借りようと口を開いた安堂の言葉が、居丈高な声に遮られた。
全開になった調理室のドアから、小城とマロンが現れる。
「え、どうして・・・?」
「私を誰だと思ってるの?」
「美夜の凄さは知ってるはずよ?」
いつも通りぽかんとした顔を隠せないいちごに、小城とマロンは通常運転の高飛車な調子で相対するのだった。
ともかく一同は小城の拠点に移動することになった。家のコネクションで試合のビデオが届いているというから、気に掛かる天王寺敗退の真相も把握できるし、意識を取り戻さない樹が休めるだけの場所もある。
直ちに手配された車に乗り込み走ること十数分で、学園の建物にも匹敵するほど豪奢な小城の別荘にたどり着いた。
「佐藤、塩谷。真くん達をシアタースペースに案内して。東堂さんはこっちの部屋で寝かせられるわ」
「分かりました。ありがとうございます」
「樹ちゃん・・・」
屋敷の中を二手に分かれ、小城の後ろに樹を抱えた花房と樹の荷物を持ったいちごが心配そうに続く。案内された部屋はゲストルームその1といった雰囲気だが、さすがに高価なもので埋め尽くされている。
小城は完璧なベッドメイクを豪快に崩すように掛け布団を剥がしてスペースを作る。ありがたいが意外な動作だ。
花房は面食らったが、シーツの上に樹を横たえた。またも小城がすかさずその上に布団をどさっとかける。
「これで大丈夫ね。この子、こんな立派なところで寝たことないでしょうから、目を覚ましても夢かと思うんじゃない?おーっほっほっほ!」
二人はこの状況の高笑いに思わずげんなりしながらも、小城が微妙に樹を気に入っていることを思い出した。なんだかんだ情のある女だ。
「医療スタッフも手配してあるから抜かりは無いわ。私たちは問題の準決勝戦を見るわよ!さあ、ついてらっしゃい!」
「あ、はい!・・・花房くん?」
ついて行こうとしたいちごは、花房がまだ樹のベッドの側に屈んでいるのに気づいた。
もう一度名前を呼ぼうとした時に、花房が手を伸ばして樹の額にかかった髪をそっと搔き分けるのが目に入り、言葉を失う。
それは、思わずどきりとするほど優しい所作だった。
それにあの視線の熱さ。
もしかして、とここに来てようやく一つの可能性に行き当たったいちごは真っ赤になる。
(花房くんは、樹ちゃんのこと・・・)
「わたし、今まで全然気づかなかった・・・」
「・・・いちごちゃん?」
「あっ、何でもない何でもない!お医者さんが来るならちょっと安心だね!樹ちゃんと一緒に優勝するためにも、試合ちゃんと見ておこう!」
「うん、そうだね」
「ビデオの準備はもうできてるわよ。行きましょう!」
小城に急かされて二人は部屋を後にする。
後ろ髪引かれながらも今はビデオに集中する、と息を吐いて気分を切り替えようとする花房の横で、いちごは依然として赤い顔で口を押さえ、ひとり悶々としていた。
誰かに言いたいがこの状況、耐えるしかない。
人知れず苦しい状況に陥ったいちごはブンブンと首を振って無理やり気持ちを落ち着けた。
しかも、大敗とのことだ。
チームフランソワといえば、いちご達にとっては一回戦で姿を見たきりの存在だが、その一回戦のフードワゴン対決で彼女らがクレープを選択し、チーム天王寺と同数の売り上げを叩き出していたことは皆の記憶に残っていた。
「でも、あの天王寺会長が負けるなんて・・・!」
「信じられないですう」
ショコラ、キャラメルたちスピリッツも動揺を隠せない様子だ。たまらず、樫野は調理台に拳を打ち付ける。その衝撃にスピリッツ達がびくりと跳ね上がった。
「なんで負けちまったんだよ!あの時の悔しさは、今でも忘れちゃいねえ・・・決勝でリベンジしたかったのに・・・なんでだよ・・・」
「樫野・・・」
日本でのグランプリ決勝で人一倍の心残りを抱えていた樫野の心境が思いやられ、いちごは胸を詰まらせる。完成しなかったエッフェル塔。あの日からずっと樫野の中に再戦への闘志と自責があることをみんなが知っていた。
「詳しい情報を知る必要があるね。それに・・・」
花房はチーム天王寺への懸念を露わにしながらも、腕の中で未だ意識を取り戻さない樹の顔に視線を落とした。
グランプリの行方とは比べようもなく心配だった。
スイーツ王国で樹とパートナーに何があったのか。いちご達も同じ気持ちのようで、全員がどこに感情を傾けるべきか見失ったような顔をしていた。
「ともかく、理事長や学園の関係者に・・・」
「その必要はないわ!」
ひとまず大人の力を借りようと口を開いた安堂の言葉が、居丈高な声に遮られた。
全開になった調理室のドアから、小城とマロンが現れる。
「え、どうして・・・?」
「私を誰だと思ってるの?」
「美夜の凄さは知ってるはずよ?」
いつも通りぽかんとした顔を隠せないいちごに、小城とマロンは通常運転の高飛車な調子で相対するのだった。
ともかく一同は小城の拠点に移動することになった。家のコネクションで試合のビデオが届いているというから、気に掛かる天王寺敗退の真相も把握できるし、意識を取り戻さない樹が休めるだけの場所もある。
直ちに手配された車に乗り込み走ること十数分で、学園の建物にも匹敵するほど豪奢な小城の別荘にたどり着いた。
「佐藤、塩谷。真くん達をシアタースペースに案内して。東堂さんはこっちの部屋で寝かせられるわ」
「分かりました。ありがとうございます」
「樹ちゃん・・・」
屋敷の中を二手に分かれ、小城の後ろに樹を抱えた花房と樹の荷物を持ったいちごが心配そうに続く。案内された部屋はゲストルームその1といった雰囲気だが、さすがに高価なもので埋め尽くされている。
小城は完璧なベッドメイクを豪快に崩すように掛け布団を剥がしてスペースを作る。ありがたいが意外な動作だ。
花房は面食らったが、シーツの上に樹を横たえた。またも小城がすかさずその上に布団をどさっとかける。
「これで大丈夫ね。この子、こんな立派なところで寝たことないでしょうから、目を覚ましても夢かと思うんじゃない?おーっほっほっほ!」
二人はこの状況の高笑いに思わずげんなりしながらも、小城が微妙に樹を気に入っていることを思い出した。なんだかんだ情のある女だ。
「医療スタッフも手配してあるから抜かりは無いわ。私たちは問題の準決勝戦を見るわよ!さあ、ついてらっしゃい!」
「あ、はい!・・・花房くん?」
ついて行こうとしたいちごは、花房がまだ樹のベッドの側に屈んでいるのに気づいた。
もう一度名前を呼ぼうとした時に、花房が手を伸ばして樹の額にかかった髪をそっと搔き分けるのが目に入り、言葉を失う。
それは、思わずどきりとするほど優しい所作だった。
それにあの視線の熱さ。
もしかして、とここに来てようやく一つの可能性に行き当たったいちごは真っ赤になる。
(花房くんは、樹ちゃんのこと・・・)
「わたし、今まで全然気づかなかった・・・」
「・・・いちごちゃん?」
「あっ、何でもない何でもない!お医者さんが来るならちょっと安心だね!樹ちゃんと一緒に優勝するためにも、試合ちゃんと見ておこう!」
「うん、そうだね」
「ビデオの準備はもうできてるわよ。行きましょう!」
小城に急かされて二人は部屋を後にする。
後ろ髪引かれながらも今はビデオに集中する、と息を吐いて気分を切り替えようとする花房の横で、いちごは依然として赤い顔で口を押さえ、ひとり悶々としていた。
誰かに言いたいがこの状況、耐えるしかない。
人知れず苦しい状況に陥ったいちごはブンブンと首を振って無理やり気持ちを落ち着けた。