6話 チョコレートの天使と悪魔
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結局テストは滞りなく進んだ。樹やスイーツ王子、特に樫野はふんだんに実力を発揮したと言える。いちごは初めてのテストだったが、足を引っ張るのを覚悟でなかなか懸命にやっていた。ひとりどうしても作業が遅れる中、みんなで後片付けを手伝ってフォローする。
「いちごちゃん、順調みたいじゃない?」
「そうね」
「すごく楽しそうだ」
実際いちごは楽しんでいた。宝石のようなフルーツをふんだんに巻き込んだロールケーキにホワイトチョコレートをあしらう。その表面に、いちごは羽をかたどった。題名は、『天使と悪魔のフルーツロール』だ。
「甘いミルキーなホワイトチョコと、苦みばしったビターチョコ。タイプの違った二種類のチョコを、一度に味わえるケーキです!」
どうして天使と悪魔の発想に至ったのか、みんなには見当もつかなかったが、一斉試食の段になってフォークを入れると、その受け売り通り二種類のチョコレートが手を取り合ってフルーツを包み込んでいるのが分かる。端的に言って、おいしい。花房はにっこりと感想を述べた。
「いちごちゃん、このロールケーキ、おいしいよ!」
「うん、いけてる!二つのチョコが、良いバランスだね!」
「彩りとホワイトチョコのデコレーションもきれい。頑張ったんじゃない」
「ほんと!?」
安堂と樹も賞賛を贈り、いちごは嬉しそうにしたが、やはり気になるところは樫野の反応らしい。樫野は視線に応じてか、ゆっくりとケーキをかみしめた。
「ほら、樫野もうまいって言ってやれよ」
花房が催促すると、樫野はケーキを飲み込み、落ち着いて口を開いた。
「クリームが固いな。泡立て過ぎだ」
「えっ・・・」
「でも、天野が今まで作った中で、一番美味い」
いちごはその言葉に一瞬きょとんとした顔をする。
「・・・・今、美味いって言った?」
「・・・ああ」
「ほんとに?内心ふつーって、思ってない?」
「素直に褒めてんだろうが!」
滅多に褒めないから照れてるんだよと安堂が耳打ちする。いちごはやっと安心して喜びをあらわにした。
「やったーっ!ありがとう、樫野!みんなみたいになるにはまだまだだけど、少しだけ認められたかなっ」
「私は認めませんわ!」
その時鈴のなるような声が、水を差した。
「えっ?」
樹はこのような声の持ち主がクラスにいただろうかと思った。
「こんな子供騙しのケーキ!」
「こ、こら、ショコラ!」
声はよくきくと樫野の胸ポケットから聞こえる。樹は樫野を無視しているのも忘れて思わず声をかけた。
「あなた・・・この歳になって胸ポケットにおもちゃを仕込んでるの・・・?」
「ば、馬鹿!ちが・・・?」
「失礼ね、おもちゃじゃありませんわ!」
反射的に声を荒げた樫野が一瞬不可解な表情をしたかと思うと、ポケットからぴゅん、と何かが飛び出し、樹といちごの前に降り立った。
「東堂樹、私への侮辱とは良い度胸ですわ!そして天野いちご!樫野に褒められたからって、いい気にならないでくださる!?」
手のひらサイズ、羽が生えていて、フォークを持った小さな女の子。樹には見覚えがあった。いちごが連れているものと同種にちがいない。
(何が起こってるの・・・)
樹は彼女を呆然と見下ろした。その横で、いちごも目を見開いて驚愕しているようだった。
「いちごちゃん、順調みたいじゃない?」
「そうね」
「すごく楽しそうだ」
実際いちごは楽しんでいた。宝石のようなフルーツをふんだんに巻き込んだロールケーキにホワイトチョコレートをあしらう。その表面に、いちごは羽をかたどった。題名は、『天使と悪魔のフルーツロール』だ。
「甘いミルキーなホワイトチョコと、苦みばしったビターチョコ。タイプの違った二種類のチョコを、一度に味わえるケーキです!」
どうして天使と悪魔の発想に至ったのか、みんなには見当もつかなかったが、一斉試食の段になってフォークを入れると、その受け売り通り二種類のチョコレートが手を取り合ってフルーツを包み込んでいるのが分かる。端的に言って、おいしい。花房はにっこりと感想を述べた。
「いちごちゃん、このロールケーキ、おいしいよ!」
「うん、いけてる!二つのチョコが、良いバランスだね!」
「彩りとホワイトチョコのデコレーションもきれい。頑張ったんじゃない」
「ほんと!?」
安堂と樹も賞賛を贈り、いちごは嬉しそうにしたが、やはり気になるところは樫野の反応らしい。樫野は視線に応じてか、ゆっくりとケーキをかみしめた。
「ほら、樫野もうまいって言ってやれよ」
花房が催促すると、樫野はケーキを飲み込み、落ち着いて口を開いた。
「クリームが固いな。泡立て過ぎだ」
「えっ・・・」
「でも、天野が今まで作った中で、一番美味い」
いちごはその言葉に一瞬きょとんとした顔をする。
「・・・・今、美味いって言った?」
「・・・ああ」
「ほんとに?内心ふつーって、思ってない?」
「素直に褒めてんだろうが!」
滅多に褒めないから照れてるんだよと安堂が耳打ちする。いちごはやっと安心して喜びをあらわにした。
「やったーっ!ありがとう、樫野!みんなみたいになるにはまだまだだけど、少しだけ認められたかなっ」
「私は認めませんわ!」
その時鈴のなるような声が、水を差した。
「えっ?」
樹はこのような声の持ち主がクラスにいただろうかと思った。
「こんな子供騙しのケーキ!」
「こ、こら、ショコラ!」
声はよくきくと樫野の胸ポケットから聞こえる。樹は樫野を無視しているのも忘れて思わず声をかけた。
「あなた・・・この歳になって胸ポケットにおもちゃを仕込んでるの・・・?」
「ば、馬鹿!ちが・・・?」
「失礼ね、おもちゃじゃありませんわ!」
反射的に声を荒げた樫野が一瞬不可解な表情をしたかと思うと、ポケットからぴゅん、と何かが飛び出し、樹といちごの前に降り立った。
「東堂樹、私への侮辱とは良い度胸ですわ!そして天野いちご!樫野に褒められたからって、いい気にならないでくださる!?」
手のひらサイズ、羽が生えていて、フォークを持った小さな女の子。樹には見覚えがあった。いちごが連れているものと同種にちがいない。
(何が起こってるの・・・)
樹は彼女を呆然と見下ろした。その横で、いちごも目を見開いて驚愕しているようだった。