6話 チョコレートの天使と悪魔
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次の日から、Aグループには変化が訪れた。いつもの二人の応酬がなくなったのだ。しかし、決して好意的ななくなり方ではなかった。樹が樫野に何を言われても無視しだしたのだ。
「どうしたんだろう・・・?なんか悪化してない?」
「か、風邪引いて声がでないのかも!大丈夫、東堂さん?」
「風邪なんか引いてないわ」
いちご達は思い切り動揺しているが、樹としては、妙に清々しかった。真面目に夢など語ってみても彼はあの調子なのだ。不覚にも涙など流してしまったことが悔やまれてしょうがないが、もう話すこともないのだからどうでもいいだろう。
「人の前に天野さんは自分の心配をしなさいよ。顔色が良くないわ」
「そ、そうかなあ・・・なかなか思うようなチョコレートケーキができなくて、今実験中なんだよね・・・」
「東堂さんは順調なの?テストの準備」
「そこそこね」
そして、樹は樫野以外にはそこそこ愛想がよかった。なので、いちごなどはなかなかその変化を嬉しく受け止めてみたのだが、花房はそうもいかなかった。
「樹ちゃん、何かあったのなら遠慮なく言って」
授業後に、花房はサロン・ド・マリーに樹を連れ出した。樹は案外ふらふらとついてきたが、花房が何を心配しているのかは解せない様子だった。
「別に何もないわよ。むしろ清々しい気持ちね」
「えっと、でも樫野が・・・」
「樫野?別にどうだっていいでしょ」
樹は紅茶のシフォンケーキを一欠片くちに入れる。花房は手に負えないと苦笑するほかなかった。
「なんだか、今までうるさくしてて悪かったわ。わざわざ気の合わない人間と関わろうと思うのが間違いだったのよ。ここに来てひとつ勉強になったわ」
「なんか間違ってる気がするんだけど・・・気が合わない人とも、それなりにうまくやっていった方が・・・」
「なんで?これが一番うまいやり方じゃない」
というか、樫野と気が合わないことはないと思う、と花房は言いかけてやめた。やたらとテンポのいい悪口の応酬はどう考えても気が合ってこそ成り立つものだと他人からみれば思うのだが、どうも本人達には自覚がないらしい。
「・・・こういうこと言うのもなんだけど、樹 ちゃんって、本当に友達いなかったんだね」
「人に言われると無性に気に障るけど、どうして?」
「人とのつき合い方がよく分かってなさそうだから」
花房は穏やかに微笑んでみせた。樹はたまに彼と話していてとても敵わないなと思うときがあったが、それはいつも彼がそのような微笑み方を見せるときだった。なんというか、彼が『経験豊富』なことを思い知らされるのだった。
「それより、あなたはこんなところで油を売っていていいのかしら。テストまであと少しよ」
「んー、まあね。だいたいの着想はできてるよ」
「それは楽しみなことね」
樹は紅茶をすする。と、視界の端に新たな来客がうつった。思わず彼女が嫌な顔をするので、花房は首を傾げた。
「知り合い?」
「そうでもないけど」
以前図書室で見かけた先輩方だった。どうも態度が気に食わない。あの日から校舎でも何度か見かけるが、目が合わないように避けているのだ。
「ああ、あれは・・・・」
花房も不意に目を細めると、樹と同じように自分の皿に目を落とした。今度は樹が知り合いなのかと尋ねる。
「まあね・・・オジョーさんっていうんだけど」
二人の男子生徒を従えた、見たところ高慢そうな縦ロールのお嬢様がそこにいた。歩き方からして、気が強そうだ。
「あの人、樫野の天敵なんだ」
花房は彼女から全力で目を逸らしながら、微笑んだのだった。
「どうしたんだろう・・・?なんか悪化してない?」
「か、風邪引いて声がでないのかも!大丈夫、東堂さん?」
「風邪なんか引いてないわ」
いちご達は思い切り動揺しているが、樹としては、妙に清々しかった。真面目に夢など語ってみても彼はあの調子なのだ。不覚にも涙など流してしまったことが悔やまれてしょうがないが、もう話すこともないのだからどうでもいいだろう。
「人の前に天野さんは自分の心配をしなさいよ。顔色が良くないわ」
「そ、そうかなあ・・・なかなか思うようなチョコレートケーキができなくて、今実験中なんだよね・・・」
「東堂さんは順調なの?テストの準備」
「そこそこね」
そして、樹は樫野以外にはそこそこ愛想がよかった。なので、いちごなどはなかなかその変化を嬉しく受け止めてみたのだが、花房はそうもいかなかった。
「樹ちゃん、何かあったのなら遠慮なく言って」
授業後に、花房はサロン・ド・マリーに樹を連れ出した。樹は案外ふらふらとついてきたが、花房が何を心配しているのかは解せない様子だった。
「別に何もないわよ。むしろ清々しい気持ちね」
「えっと、でも樫野が・・・」
「樫野?別にどうだっていいでしょ」
樹は紅茶のシフォンケーキを一欠片くちに入れる。花房は手に負えないと苦笑するほかなかった。
「なんだか、今までうるさくしてて悪かったわ。わざわざ気の合わない人間と関わろうと思うのが間違いだったのよ。ここに来てひとつ勉強になったわ」
「なんか間違ってる気がするんだけど・・・気が合わない人とも、それなりにうまくやっていった方が・・・」
「なんで?これが一番うまいやり方じゃない」
というか、樫野と気が合わないことはないと思う、と花房は言いかけてやめた。やたらとテンポのいい悪口の応酬はどう考えても気が合ってこそ成り立つものだと他人からみれば思うのだが、どうも本人達には自覚がないらしい。
「・・・こういうこと言うのもなんだけど、樹 ちゃんって、本当に友達いなかったんだね」
「人に言われると無性に気に障るけど、どうして?」
「人とのつき合い方がよく分かってなさそうだから」
花房は穏やかに微笑んでみせた。樹はたまに彼と話していてとても敵わないなと思うときがあったが、それはいつも彼がそのような微笑み方を見せるときだった。なんというか、彼が『経験豊富』なことを思い知らされるのだった。
「それより、あなたはこんなところで油を売っていていいのかしら。テストまであと少しよ」
「んー、まあね。だいたいの着想はできてるよ」
「それは楽しみなことね」
樹は紅茶をすする。と、視界の端に新たな来客がうつった。思わず彼女が嫌な顔をするので、花房は首を傾げた。
「知り合い?」
「そうでもないけど」
以前図書室で見かけた先輩方だった。どうも態度が気に食わない。あの日から校舎でも何度か見かけるが、目が合わないように避けているのだ。
「ああ、あれは・・・・」
花房も不意に目を細めると、樹と同じように自分の皿に目を落とした。今度は樹が知り合いなのかと尋ねる。
「まあね・・・オジョーさんっていうんだけど」
二人の男子生徒を従えた、見たところ高慢そうな縦ロールのお嬢様がそこにいた。歩き方からして、気が強そうだ。
「あの人、樫野の天敵なんだ」
花房は彼女から全力で目を逸らしながら、微笑んだのだった。