35話 私の好きな人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
結局樹達のジェラート屋のスタートは他より遅く、まばらにやって来る客も桜のジェラートには手を出さない。このままではいけないといちごは辺りを見回して、何か思いついたように桜のジェラートをきれいな三角錐の形に盛りつけ、白いソースを細く巻き付けた。
「できた!」
突然のフォルムチェンジに皆が反応する間もなく、いちごはワゴンの前に立ってそれを高く掲げた。
「みなさーん!ここでしか買えない『ダ・ヴィンチ・コード・ジェラート』ですよー!ルーヴルの記念に是非どうぞー!」
背後に見えるルーヴルのシンボル的存在であるピラミッドがその瞬間、彼女の手にある桜ジェラートとシンクロした。記念と聞いて好奇心がかき立てられた観光客が足を止めはじめる。心得たとばかりにスピリッツ達もワゴンの上部に新たな看板をこしらえて、いちご達の前にはたちまち長蛇の列ができた。
スペースに限りのあるイベントのために樹達は客の整理の手腕も求められたが、皆は難なくこなした。客が入ってくると俄然やる気がでるものだ。
「最後尾はこちらでーす!」
「暑くなってきたわね、追い上げられるわよ!」
「うん!」
ここに来てチームいちごの世界大会随一のイケメン集団ぶりが本領を発揮しはじめて、列の整理や呼び込みへと三人がワゴンの外に繰り出す度に女性客達が引き寄せられてきた。これはいける、とひとりワゴンの隣に陣取って四人の配備に指示を出し始めた樹は、自分の姿も大した宣伝効果になっていることには気づいていないようだった。
経営にゆとりがではじめたので、五人は一人ずつ休憩時間を設けることにした。樹は他の出店も見学したいと思っていたので、先に休憩に行ったいちごが涎まじりに聞かせてくれた感想をもとに効率よく目当ての箇所を廻った。
天王寺のハニーワッフルの売れ行きはかなり芳しいし、パリ本校Aチームと思しき美女軍団のクレープもそれに引けを取らない。そして、小城たちのサラダ・デ・フルータにも行列ができていた。完全に素材使いで勝負しているメニューを樹が凝視していると、けばけばしいドレスを身にまとった小城に気づかれた。
「あら、あなた随分余裕そうねえ・・・」
「まあ、今がとても売れ時なので」
「相変わらず小生意気ねえ」
言葉の割に小城の表情は不機嫌そうではない。じろじろと樹の格好をつま先からてっぺんまで観察すると、おもむろに高級ブランドのカバーがかかった携帯電話を取り出して、一枚写真を撮った。
「わっ、ちょっと何するんですか!?」
「いいじゃない別に。ちょうどようこに何か面白い写真送ってあげようと思ってたところなのよ」
「それが私・・・?」
何食わぬ顔で本当にメールを送信している様子の小城に、樹は面食らう。日本校でのチーム小城は解散したものの、鮎川との交流は続いているらしい。というか、海外から気軽に写真付きメールを送信できるあたりにひしひしと経済的余裕を感じる。
「私のことも撮っていいわよ。あ、でも真くんに見せるんだったら美人に撮りなさいよね!」
「遠慮しときます」
迷いなく踵を返した樹は、スーツ姿の人々が続々と小城の店に向かうのに気づいた。おそらく父親に電話して、シャトー製菓の社員でカウント数を稼ごうというのだろう。
(天王寺さんレベルであんなことやられたらたまらないわね・・・)
樹は呆れつつも、この形式の勝負で小城のチームとぶつからなかったことに素直に安堵した。
「できた!」
突然のフォルムチェンジに皆が反応する間もなく、いちごはワゴンの前に立ってそれを高く掲げた。
「みなさーん!ここでしか買えない『ダ・ヴィンチ・コード・ジェラート』ですよー!ルーヴルの記念に是非どうぞー!」
背後に見えるルーヴルのシンボル的存在であるピラミッドがその瞬間、彼女の手にある桜ジェラートとシンクロした。記念と聞いて好奇心がかき立てられた観光客が足を止めはじめる。心得たとばかりにスピリッツ達もワゴンの上部に新たな看板をこしらえて、いちご達の前にはたちまち長蛇の列ができた。
スペースに限りのあるイベントのために樹達は客の整理の手腕も求められたが、皆は難なくこなした。客が入ってくると俄然やる気がでるものだ。
「最後尾はこちらでーす!」
「暑くなってきたわね、追い上げられるわよ!」
「うん!」
ここに来てチームいちごの世界大会随一のイケメン集団ぶりが本領を発揮しはじめて、列の整理や呼び込みへと三人がワゴンの外に繰り出す度に女性客達が引き寄せられてきた。これはいける、とひとりワゴンの隣に陣取って四人の配備に指示を出し始めた樹は、自分の姿も大した宣伝効果になっていることには気づいていないようだった。
経営にゆとりがではじめたので、五人は一人ずつ休憩時間を設けることにした。樹は他の出店も見学したいと思っていたので、先に休憩に行ったいちごが涎まじりに聞かせてくれた感想をもとに効率よく目当ての箇所を廻った。
天王寺のハニーワッフルの売れ行きはかなり芳しいし、パリ本校Aチームと思しき美女軍団のクレープもそれに引けを取らない。そして、小城たちのサラダ・デ・フルータにも行列ができていた。完全に素材使いで勝負しているメニューを樹が凝視していると、けばけばしいドレスを身にまとった小城に気づかれた。
「あら、あなた随分余裕そうねえ・・・」
「まあ、今がとても売れ時なので」
「相変わらず小生意気ねえ」
言葉の割に小城の表情は不機嫌そうではない。じろじろと樹の格好をつま先からてっぺんまで観察すると、おもむろに高級ブランドのカバーがかかった携帯電話を取り出して、一枚写真を撮った。
「わっ、ちょっと何するんですか!?」
「いいじゃない別に。ちょうどようこに何か面白い写真送ってあげようと思ってたところなのよ」
「それが私・・・?」
何食わぬ顔で本当にメールを送信している様子の小城に、樹は面食らう。日本校でのチーム小城は解散したものの、鮎川との交流は続いているらしい。というか、海外から気軽に写真付きメールを送信できるあたりにひしひしと経済的余裕を感じる。
「私のことも撮っていいわよ。あ、でも真くんに見せるんだったら美人に撮りなさいよね!」
「遠慮しときます」
迷いなく踵を返した樹は、スーツ姿の人々が続々と小城の店に向かうのに気づいた。おそらく父親に電話して、シャトー製菓の社員でカウント数を稼ごうというのだろう。
(天王寺さんレベルであんなことやられたらたまらないわね・・・)
樹は呆れつつも、この形式の勝負で小城のチームとぶつからなかったことに素直に安堵した。