35話 私の好きな人
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樹が帰ってくると、三人はそれぞれのフレーバーで合格をもらっていたが、新たな課題に直面していた。フードワゴンとして勝負に勝つためには、斬新なオリジナルフレーバーが必要だろうと大家さんが指摘したのだ。確かに当たり障りのない品揃えだけでは、個性溢れる世界大会参加チーム達の中でお客さんを引きつけることは難しいに違いない。そんなわけでジェラートを作る手は止められ、一同はアイデア出しに頭をしぼっていたのだった。
「おかえり、樹ちゃん」
キッチンに入ってきた樹を見ると、花房は右手の甲で額の汗を拭いながらそう言って振り返った。どうにもその仕草が色っぽく見えたので、樹は一瞬固まった。
「・・・樹ちゃん?」
「あっ、ただいま」
「何買ってきたんだ?」
「ちょっと、勝手に取らないでよ」
樹が手に持っていた紙袋を樫野が遠慮なく引ったくる。中に入っていたのは蜂蜜の瓶だった。ガラスの内側から今にも甘い香りを放ちそうな、とろりとした黄金色にいちごは思わず唾を飲む。
「蜂蜜かあ・・・これ、オリジナルフレーバーになると思う?」
「バカ天野、蜂蜜って言ったら・・・」
「店員が今朝も日本人の学生が来たって言ってた。多分天王寺さん」
「でも蜂蜜だったらどんなフレーバーでも使えるよね。味にコクや深みが出るし」
そんなことを話していると、席を外していた安堂が古めかしい唐草模様のふろしき包みを持って現れた。
「これ、役に立たないかな。僕が日本から持ち込んだんだけど・・・」
「和菓子の材料か!たしかに斬新な味のヒントになりそうだな・・・」
抹茶に小豆に白玉粉、黒蜜など安堂は自分の武器になるものを持参したらしい。樹はこの中のものをどう見ても純然たる和菓子にしか変換できず、自分の発想力の無さを呪った。
そんな中、並べられた食材の中でいちごが目をつけたのは薄紅色の花びらが詰められた綺麗な瓶だった。
「これって、桜の花・・・?」
「そう、桜。塩漬けになってる」
「この桜の花でジェラート作ったらどうかな・・・シーソルトアイスって結構おいしいんだよね・・・」
いちごの声に、花房も思い出したように言う。
「そういえば、フランスではバラをはじめ、スミレやパンジーをスイーツに使ったりしてるよね」
「確かに何度か見たわ。受け入れやすい味かもしれない」
「ちょうど、市場で買ったシチリアンソルトもあるしな。ソルトジェラート、作ってみるか!」
自分たちだけのフレーバー、真夏のパリにひんやりとした花香る春風を吹かせる。
「おかえり、樹ちゃん」
キッチンに入ってきた樹を見ると、花房は右手の甲で額の汗を拭いながらそう言って振り返った。どうにもその仕草が色っぽく見えたので、樹は一瞬固まった。
「・・・樹ちゃん?」
「あっ、ただいま」
「何買ってきたんだ?」
「ちょっと、勝手に取らないでよ」
樹が手に持っていた紙袋を樫野が遠慮なく引ったくる。中に入っていたのは蜂蜜の瓶だった。ガラスの内側から今にも甘い香りを放ちそうな、とろりとした黄金色にいちごは思わず唾を飲む。
「蜂蜜かあ・・・これ、オリジナルフレーバーになると思う?」
「バカ天野、蜂蜜って言ったら・・・」
「店員が今朝も日本人の学生が来たって言ってた。多分天王寺さん」
「でも蜂蜜だったらどんなフレーバーでも使えるよね。味にコクや深みが出るし」
そんなことを話していると、席を外していた安堂が古めかしい唐草模様のふろしき包みを持って現れた。
「これ、役に立たないかな。僕が日本から持ち込んだんだけど・・・」
「和菓子の材料か!たしかに斬新な味のヒントになりそうだな・・・」
抹茶に小豆に白玉粉、黒蜜など安堂は自分の武器になるものを持参したらしい。樹はこの中のものをどう見ても純然たる和菓子にしか変換できず、自分の発想力の無さを呪った。
そんな中、並べられた食材の中でいちごが目をつけたのは薄紅色の花びらが詰められた綺麗な瓶だった。
「これって、桜の花・・・?」
「そう、桜。塩漬けになってる」
「この桜の花でジェラート作ったらどうかな・・・シーソルトアイスって結構おいしいんだよね・・・」
いちごの声に、花房も思い出したように言う。
「そういえば、フランスではバラをはじめ、スミレやパンジーをスイーツに使ったりしてるよね」
「確かに何度か見たわ。受け入れやすい味かもしれない」
「ちょうど、市場で買ったシチリアンソルトもあるしな。ソルトジェラート、作ってみるか!」
自分たちだけのフレーバー、真夏のパリにひんやりとした花香る春風を吹かせる。