35話 私の好きな人
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「ここのジェラートマシンを借りたいって?」
五人の行動は早かった。大家さんは店をたたんだままの状態に保っていたので、機械も処分されていないはずだからだ。ジェラートを作るにはかかせない———というよりは、元よりここ以外に借りられるあてはない。
「はい。今度のフードワゴン対決、ぜひ手作りジェラートで勝負したいんです」
「やめておきなさい」
しかし、大家さんはぴしゃりと言ってのけた。悪い顔はしないだろうと踏んでいた五人は思わず「えっ」と声を上げる。
「ジェラートは素材の善し悪しがストレートに出ちゃうのよ。ごまかしが効かない分、極めるのが難しいわ。そんな苦労を知ってるからこそ、娘もこの店を継がなかったのよ。悪いことは言わない。別の物にしなさい」
大家さんはどうも樹たちを心配しているらしい。確かに日常的に触れていないものを短期間で売り物にしようとするのは危険きわまりない。
「でも、是非ジェラートに挑戦したいんです!」
「既に材料も市場をまわり歩いて、よりすぐりの物を購入してきました!」
しかし、五人もどうしても譲れない。意地の貫き方に関しては並大抵の学生の比ではないと自負している。どう説得しようと樹が考えだしたあたりで、いちごが唐突に床に膝をついた。そのまま、手を揃えて前につき、深々と頭を下げる。
「大家さん、お願いします!」
「ちょっ、ちょっと、何してるの!こんな汚い床に座り込んで!」
「土下座って言います。日本では、心の底から人にお願いをするとき、こうやって頼むんです」
いちごの静かだが芯の通った声に倣って、四人も膝をついた。
「お願いします!」
大家さんは呆気にとられていたが、この妙な状況にだんだん気分が絆されてきたのか思わず噴き出した。
「・・・ふふ、いいわ!じゃあ、あたしからも二つ条件を言うわね」
土下座の甲斐があって態度が変わり、五人は明るい顔で立ち上がった。
「一つは、埃だらけになってるこの店の掃除」
「任せてください!ばっちりやります!」
いちごは元気よく言った。
「もう一つは、必ずあたしを唸らせるおいしいジェラートを作ること」
「それもばっちりやってみせます!」
樹も力強く頷く。
「それなら、この店の鍵はあなた達に渡しておくわ。おいしいジェラート、楽しみにしてるわよ!」
大家さんは、生き生きとした素敵な笑顔を見せて去って行った。
やっぱり、ジェラートを作ることにしたのは間違ってない。
その様子に嬉しくなった樹は少し満足げに息を吐いたが、いつから自分はこんなことぐらいで嬉しいと思うようになったのだかと困惑した。
五人の行動は早かった。大家さんは店をたたんだままの状態に保っていたので、機械も処分されていないはずだからだ。ジェラートを作るにはかかせない———というよりは、元よりここ以外に借りられるあてはない。
「はい。今度のフードワゴン対決、ぜひ手作りジェラートで勝負したいんです」
「やめておきなさい」
しかし、大家さんはぴしゃりと言ってのけた。悪い顔はしないだろうと踏んでいた五人は思わず「えっ」と声を上げる。
「ジェラートは素材の善し悪しがストレートに出ちゃうのよ。ごまかしが効かない分、極めるのが難しいわ。そんな苦労を知ってるからこそ、娘もこの店を継がなかったのよ。悪いことは言わない。別の物にしなさい」
大家さんはどうも樹たちを心配しているらしい。確かに日常的に触れていないものを短期間で売り物にしようとするのは危険きわまりない。
「でも、是非ジェラートに挑戦したいんです!」
「既に材料も市場をまわり歩いて、よりすぐりの物を購入してきました!」
しかし、五人もどうしても譲れない。意地の貫き方に関しては並大抵の学生の比ではないと自負している。どう説得しようと樹が考えだしたあたりで、いちごが唐突に床に膝をついた。そのまま、手を揃えて前につき、深々と頭を下げる。
「大家さん、お願いします!」
「ちょっ、ちょっと、何してるの!こんな汚い床に座り込んで!」
「土下座って言います。日本では、心の底から人にお願いをするとき、こうやって頼むんです」
いちごの静かだが芯の通った声に倣って、四人も膝をついた。
「お願いします!」
大家さんは呆気にとられていたが、この妙な状況にだんだん気分が絆されてきたのか思わず噴き出した。
「・・・ふふ、いいわ!じゃあ、あたしからも二つ条件を言うわね」
土下座の甲斐があって態度が変わり、五人は明るい顔で立ち上がった。
「一つは、埃だらけになってるこの店の掃除」
「任せてください!ばっちりやります!」
いちごは元気よく言った。
「もう一つは、必ずあたしを唸らせるおいしいジェラートを作ること」
「それもばっちりやってみせます!」
樹も力強く頷く。
「それなら、この店の鍵はあなた達に渡しておくわ。おいしいジェラート、楽しみにしてるわよ!」
大家さんは、生き生きとした素敵な笑顔を見せて去って行った。
やっぱり、ジェラートを作ることにしたのは間違ってない。
その様子に嬉しくなった樹は少し満足げに息を吐いたが、いつから自分はこんなことぐらいで嬉しいと思うようになったのだかと困惑した。