34話 心に浮かぶのは
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「おい、珍しく女子扱いされたからってほだされんなよ?花房見てみろよ、目がヤバい。これは面倒くせえぞ」
樫野が小声で囁く。
「ほだされてないわよ。そんなこと言ってないで助けてくれない?ちょっと苦手なのよ、こういうタイプ」
「あー・・・おい、コイツはマジで恋愛なんかするタイプじゃねえから」
鋭い目で助けを求められた樫野は、花房の言葉を少し反芻しながらリックに言った。
「その『恋愛なんか』って言い方、気に入らないな。恋もスイーツも甘い方がいいっていうのが僕の考え方さ。それに僕は樹を誘っているわけで、君たちに意見なんか聞いてない」
リックは少しも態度を変えずにぺらぺらと喋った。「行かないって言ったわよね?」と樹は安堂に確認を求めたが、どうやらきれいに忘れられているらしい。
「まあ、もし君たちの中に樹の彼氏がいるっていうんなら、大人しく引き下がってもいいけど?」
どうせいないだろうという顔をしながらリックは勝ち誇った笑みを向ける。ある人物を頭に浮かべそうになった樹は心を平静に保とうとするあまり硬直した。
「この中にはいないけど、樹ちゃん彼氏いるよ?」
「えっ?」
いちごが本人に代わって勇ましく言い放ち、四人はきょとんとした。
「え、嘘だろ?」
「もう樫野、気づかなかったの?空港で会った前の中学の人!あたし樹ちゃんのこと頼まれたじゃない!」
「いちご、それ・・・それ、違う」
樹は焦りのあまり咳き込みながら、ぶんぶんと手を振る。
「うそ、そうだったの!?やだ、あたし・・・」
「天野、もう黙ってろ!」
「えーと・・・結局、いないんだね?」
リックはさすがに苦笑いしながら、確認をとる。嘘をついても仕方がないので樹は頷いた。
「じゃあ、今度の対決で僕のチームが勝ったら、僕の彼女になってよ」
「・・・は?」
樹は思わずぽかんとして、直後頬に赤みが差した。
そんなことを直球で言われたのは初めてだ。
慌てて頬に手を当てる樹の様子に、リックは満足そうに笑みを浮かべた。
安堂は展開の早さに戸惑いながら、とりあえず反論することにした。
「ちょっと待ってよ!東堂さんはトロフィーじゃない!物のように扱うなんて失礼じゃないか!」
「そんな風に受け取ってしまったなら失礼。でも、僕らイタリア人はコロッセオに代表されるように、ローマ帝国の時代から賭け事が大好きな人種でね」
リックは調子づいて続ける。
「君たちが樹を守るナイトなら、この対決に勝ってみせればいいだけだよ」
挑戦的なリックの視線を受け止めた花房は口を開こうとしたが、樹が息を吐いて立ち上がったので、そちらに視線を奪われた。
「リカルド・ベニーニ。その勝負、私が乗ります」
「樹ちゃん!?」
樹は驚いている皆をよそに、堂々と腕を組んで言い放った。
「私のことで三人とあなたが競うだなんて、お門違いだわ。こういうことは他人任せにできない。私とあなたの問題でしょう?」
「・・・へえ」
「勘違いの余地は与えないわよ。もともとこっちは勝つつもりで来たんだから。そのついでにもう一勝負勝ってあげるのも、手間じゃないと思っただけよ。その上で」
樹は敢えてリックの顔を下から覗き込んで、視線をまっすぐにぶつけた。
「いいわよ、勝ったんなら付き合ってあげても」
リックは満足げにその視線を受け止めた。
「それは燃えるな。強気な女の子は大好きさ」
「まあ、言ってなさい。泣き寝入りさせてやるわ」
「今日のところは帰るよ。対決の準備をもっと念入りにして、必ず勝ってみせるから」
リックがバイクで颯爽と去って行くと、糸が切れたようにみんなは席に着いた。
「樹ちゃん!なんであんなこと言ったの!?」
「お前、留学で浮かれてんのか!?」
「落ち着いて、東堂さん!」
「今のはちょっと、思わせぶりだったよ?」
「え、そうなの?」
自分よりも赤い顔でまくしたてる三人をスルーして、樹は少々ジト目で指摘した花房の言葉にだけ反応した。
「私だったら、こんな高飛車なこと言う女絶対嫌なんだけれど・・・ちょっと見誤ったわね」
「・・・今までの自分、全否定だな」
樫野は呆れた顔をして呟いた。樹は何食わぬ顔をしながらも、肘鉄を食らわせる。
「まあ、付き合うって言うのも微妙な条件だもの。有り得ないとは思うけれど、万が一そんなことになっても、さっさと振って日本に帰れば済むことでしょう」
「潔いのかどうなのか・・・とにかく、ジェラートを頑張ろう。大変なことになってきちゃったな」
安堂は疲れた顔で息を吐く。
「よーし、頑張るぞー!」
意気込みも新たにいちごは腕を突き上げる。樹達もそれに倣ったが、それぞれに少々複雑な思いを抱えていた。
(彼氏はいない・・・けど、本当に受けていい勝負だったかしら)
さっき、心に浮かんだのは誰だっただろうか。
そんなこと、とっくに分かっているはずだった。
樫野が小声で囁く。
「ほだされてないわよ。そんなこと言ってないで助けてくれない?ちょっと苦手なのよ、こういうタイプ」
「あー・・・おい、コイツはマジで恋愛なんかするタイプじゃねえから」
鋭い目で助けを求められた樫野は、花房の言葉を少し反芻しながらリックに言った。
「その『恋愛なんか』って言い方、気に入らないな。恋もスイーツも甘い方がいいっていうのが僕の考え方さ。それに僕は樹を誘っているわけで、君たちに意見なんか聞いてない」
リックは少しも態度を変えずにぺらぺらと喋った。「行かないって言ったわよね?」と樹は安堂に確認を求めたが、どうやらきれいに忘れられているらしい。
「まあ、もし君たちの中に樹の彼氏がいるっていうんなら、大人しく引き下がってもいいけど?」
どうせいないだろうという顔をしながらリックは勝ち誇った笑みを向ける。ある人物を頭に浮かべそうになった樹は心を平静に保とうとするあまり硬直した。
「この中にはいないけど、樹ちゃん彼氏いるよ?」
「えっ?」
いちごが本人に代わって勇ましく言い放ち、四人はきょとんとした。
「え、嘘だろ?」
「もう樫野、気づかなかったの?空港で会った前の中学の人!あたし樹ちゃんのこと頼まれたじゃない!」
「いちご、それ・・・それ、違う」
樹は焦りのあまり咳き込みながら、ぶんぶんと手を振る。
「うそ、そうだったの!?やだ、あたし・・・」
「天野、もう黙ってろ!」
「えーと・・・結局、いないんだね?」
リックはさすがに苦笑いしながら、確認をとる。嘘をついても仕方がないので樹は頷いた。
「じゃあ、今度の対決で僕のチームが勝ったら、僕の彼女になってよ」
「・・・は?」
樹は思わずぽかんとして、直後頬に赤みが差した。
そんなことを直球で言われたのは初めてだ。
慌てて頬に手を当てる樹の様子に、リックは満足そうに笑みを浮かべた。
安堂は展開の早さに戸惑いながら、とりあえず反論することにした。
「ちょっと待ってよ!東堂さんはトロフィーじゃない!物のように扱うなんて失礼じゃないか!」
「そんな風に受け取ってしまったなら失礼。でも、僕らイタリア人はコロッセオに代表されるように、ローマ帝国の時代から賭け事が大好きな人種でね」
リックは調子づいて続ける。
「君たちが樹を守るナイトなら、この対決に勝ってみせればいいだけだよ」
挑戦的なリックの視線を受け止めた花房は口を開こうとしたが、樹が息を吐いて立ち上がったので、そちらに視線を奪われた。
「リカルド・ベニーニ。その勝負、私が乗ります」
「樹ちゃん!?」
樹は驚いている皆をよそに、堂々と腕を組んで言い放った。
「私のことで三人とあなたが競うだなんて、お門違いだわ。こういうことは他人任せにできない。私とあなたの問題でしょう?」
「・・・へえ」
「勘違いの余地は与えないわよ。もともとこっちは勝つつもりで来たんだから。そのついでにもう一勝負勝ってあげるのも、手間じゃないと思っただけよ。その上で」
樹は敢えてリックの顔を下から覗き込んで、視線をまっすぐにぶつけた。
「いいわよ、勝ったんなら付き合ってあげても」
リックは満足げにその視線を受け止めた。
「それは燃えるな。強気な女の子は大好きさ」
「まあ、言ってなさい。泣き寝入りさせてやるわ」
「今日のところは帰るよ。対決の準備をもっと念入りにして、必ず勝ってみせるから」
リックがバイクで颯爽と去って行くと、糸が切れたようにみんなは席に着いた。
「樹ちゃん!なんであんなこと言ったの!?」
「お前、留学で浮かれてんのか!?」
「落ち着いて、東堂さん!」
「今のはちょっと、思わせぶりだったよ?」
「え、そうなの?」
自分よりも赤い顔でまくしたてる三人をスルーして、樹は少々ジト目で指摘した花房の言葉にだけ反応した。
「私だったら、こんな高飛車なこと言う女絶対嫌なんだけれど・・・ちょっと見誤ったわね」
「・・・今までの自分、全否定だな」
樫野は呆れた顔をして呟いた。樹は何食わぬ顔をしながらも、肘鉄を食らわせる。
「まあ、付き合うって言うのも微妙な条件だもの。有り得ないとは思うけれど、万が一そんなことになっても、さっさと振って日本に帰れば済むことでしょう」
「潔いのかどうなのか・・・とにかく、ジェラートを頑張ろう。大変なことになってきちゃったな」
安堂は疲れた顔で息を吐く。
「よーし、頑張るぞー!」
意気込みも新たにいちごは腕を突き上げる。樹達もそれに倣ったが、それぞれに少々複雑な思いを抱えていた。
(彼氏はいない・・・けど、本当に受けていい勝負だったかしら)
さっき、心に浮かんだのは誰だっただろうか。
そんなこと、とっくに分かっているはずだった。