34話 心に浮かぶのは
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日の朝は早かった。食糧が尽きたこともあり、大家さんに教えられて市場を散策することになったのだ。前日を掃除に費やして眠たそうにしていたいちごも食べ物を見てすっかり覚醒し、しばらく見て回ったあと五人はオープンカフェでサンドイッチの朝食をとった。
「あれだけ試食しまくってたくせに、よく食べられるな・・・」
「あんなんじゃお腹にガツンとたまらないもん!」
呆れ気味の樫野に、いちごは勇ましいことを言う。
「ところで、みんなはフードワゴンのメニューを考えたのかしら」
昨日は結局お流れになったグランプリの話題。樹は二人のやり取りを横目で見ながら言った。
メニュー作成、材料・機材の調達、接客までを自分たちで手がけるフードワゴンの課題では、売上数が競われる。材料費に合わない格安のメニューを作るのは不正にあたり、適度に儲けが出るような適切な価格設定が求められている。樹は、今回の課題についてはいちご達と参加して良いことになっていた。
「あっ、あたし、実はやってみたいなーと思ってるものがあるの・・・ただ、今まで作ったことが無いものだから、おいしく作れるのか自身なくて・・・」
いちごが口火を切ると、四人は思わずはっとした顔になった。
「それって、もしかして———」
「ジェラート!」
四人の声がきれいにハモる。いちごは目を丸くした。
「当たり!どうして分かったの!?」
「なんだ、みんな同じこと考えてたんだな」
「昨日、大家さんと話してた時からずっと気になってたの!大家さんに、おいしいジェラートを作ってあげられたらって・・・」
「僕も!」
「俺も!」
「私もよ。全員一致で決定ね」
「そうと決まれば・・・」
「樹ー!」
皆が盛り上がって来たところで、水を差すかのように樹の耳に甘ったるい声が聞こえて来た。
「おーい!」
そこに居たのはバイクに跨がったリックだ。にこやかに自分の席にバイクを寄せる様子に、樹はげんなりした。つい横目で花房の様子を窺うと、この前のことは本気なのかどうなのか、微笑みが険しいものになっている気がする。
とにかく、樹は分かりやすい態度を心がけることにした。
「どうも、挨拶に止まってくださるとはご丁寧なことね。もう行って良いわよ」
「行かないさ。こんなところで会えるなんて、正しく運命!」
「・・・物好きな奴」
樫野は舌打ちをしてそう吐き捨てる。樹は若干イラッとしたが、否定できない。
「樹も買い物に来たの?」
「だったら何なの」
「僕もなんだよ!ちょうど今買い終えたところなんだ。そうだ、天気も良いしさ、今からデートしようよ。さあ、後ろに乗って!」
「乗りません。私忙しいのよ。あなたと違って」
樹は突飛な誘いにも眉一つ動かさない。いちごは「ちょっとくらいうろたえたら可愛いのになあ」と暢気なことを思った。
「そうだ、樹ちゃんはこの後僕たちと買い出しがあるんだ。だから、デートする時間はないかな」
花房が冷たい視線を向けて口を挟む。リカルドは不満げな顔をすると、嫌味たっぷりにやれやれと首を振った。
「納得いかないな。ナイトが三人もいるんだし、わざわざ女の子に買い物を手伝わせる必要なんかないんじゃない?それとも、日本の男の子はそんなに軟弱なの?」
「言わせておけば!」
「東堂さんは世界ケーキグランプリに参加するためにパリに来たんだ!」
「君と恋愛なんかしてるヒマはない」
三人はリックの物言いに腹を立てて立ち上がり、抗戦体制に入った。いよいよ面倒だ。
「リック、それは違うよ。樹ちゃんもナイトだよ?日本校ではスイーツ王子って言われてるのよ!」
いちごもつられて立ち上がったが、少々的が外れた意見に四人は固まる。
「王子?日本校の男の子は見る目がないなあ。こんなに可愛らしいお姫様をそんな風に言うなんて、考えられないね」
リックは大げさに驚いて、樹の髪を掬って唇を寄せた。樹は思わず鳥肌を立てて固まる。
「あれだけ試食しまくってたくせに、よく食べられるな・・・」
「あんなんじゃお腹にガツンとたまらないもん!」
呆れ気味の樫野に、いちごは勇ましいことを言う。
「ところで、みんなはフードワゴンのメニューを考えたのかしら」
昨日は結局お流れになったグランプリの話題。樹は二人のやり取りを横目で見ながら言った。
メニュー作成、材料・機材の調達、接客までを自分たちで手がけるフードワゴンの課題では、売上数が競われる。材料費に合わない格安のメニューを作るのは不正にあたり、適度に儲けが出るような適切な価格設定が求められている。樹は、今回の課題についてはいちご達と参加して良いことになっていた。
「あっ、あたし、実はやってみたいなーと思ってるものがあるの・・・ただ、今まで作ったことが無いものだから、おいしく作れるのか自身なくて・・・」
いちごが口火を切ると、四人は思わずはっとした顔になった。
「それって、もしかして———」
「ジェラート!」
四人の声がきれいにハモる。いちごは目を丸くした。
「当たり!どうして分かったの!?」
「なんだ、みんな同じこと考えてたんだな」
「昨日、大家さんと話してた時からずっと気になってたの!大家さんに、おいしいジェラートを作ってあげられたらって・・・」
「僕も!」
「俺も!」
「私もよ。全員一致で決定ね」
「そうと決まれば・・・」
「樹ー!」
皆が盛り上がって来たところで、水を差すかのように樹の耳に甘ったるい声が聞こえて来た。
「おーい!」
そこに居たのはバイクに跨がったリックだ。にこやかに自分の席にバイクを寄せる様子に、樹はげんなりした。つい横目で花房の様子を窺うと、この前のことは本気なのかどうなのか、微笑みが険しいものになっている気がする。
とにかく、樹は分かりやすい態度を心がけることにした。
「どうも、挨拶に止まってくださるとはご丁寧なことね。もう行って良いわよ」
「行かないさ。こんなところで会えるなんて、正しく運命!」
「・・・物好きな奴」
樫野は舌打ちをしてそう吐き捨てる。樹は若干イラッとしたが、否定できない。
「樹も買い物に来たの?」
「だったら何なの」
「僕もなんだよ!ちょうど今買い終えたところなんだ。そうだ、天気も良いしさ、今からデートしようよ。さあ、後ろに乗って!」
「乗りません。私忙しいのよ。あなたと違って」
樹は突飛な誘いにも眉一つ動かさない。いちごは「ちょっとくらいうろたえたら可愛いのになあ」と暢気なことを思った。
「そうだ、樹ちゃんはこの後僕たちと買い出しがあるんだ。だから、デートする時間はないかな」
花房が冷たい視線を向けて口を挟む。リカルドは不満げな顔をすると、嫌味たっぷりにやれやれと首を振った。
「納得いかないな。ナイトが三人もいるんだし、わざわざ女の子に買い物を手伝わせる必要なんかないんじゃない?それとも、日本の男の子はそんなに軟弱なの?」
「言わせておけば!」
「東堂さんは世界ケーキグランプリに参加するためにパリに来たんだ!」
「君と恋愛なんかしてるヒマはない」
三人はリックの物言いに腹を立てて立ち上がり、抗戦体制に入った。いよいよ面倒だ。
「リック、それは違うよ。樹ちゃんもナイトだよ?日本校ではスイーツ王子って言われてるのよ!」
いちごもつられて立ち上がったが、少々的が外れた意見に四人は固まる。
「王子?日本校の男の子は見る目がないなあ。こんなに可愛らしいお姫様をそんな風に言うなんて、考えられないね」
リックは大げさに驚いて、樹の髪を掬って唇を寄せた。樹は思わず鳥肌を立てて固まる。