34話 心に浮かぶのは
夢小説設定
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気を取り直して、いちごは安堂の助言に従って調理を再開する。樫野は居ても立っても居られずオーブンに取り組みだした。
「どっかに懐中電灯なかったか?」
「専門的な工具も無いのに、修復は無理だよ」
「直すしかねえんだよ!俺達三日後にはグランプリの対戦があるんだぜ!オーブンが壊れてちゃ話になんねえし!」
「どうしようもないのは仕方が無いでしょ。バンバン叩いてみる?」
「それだよ!」
樹の投げやりな発言を真に受けて、いちごが嬉々としてやって来た。
「冗談なんだけれど」
「ううん、いける気がする!あたし、昔ママがこれでテレビ直してたの見たことあるもん!」
いちごは素人には見えないフォームで腕をふりかぶると、強烈な手刀をオーブンの上部に一発かました。
オーブンが、じわじわとあたたまりはじめる。
「おおーっ!」
「動きだした!」
「天野!よくやった!」
「えへへ・・・」
みんなが喜んだのもつかの間、オーブンはパチパチと嫌な音を立てはじめた。
「・・・なんか、ちょっとヤバくないか?」
「いちご、早くオーブンから離れなさい!」
「えっ?」
そして次の瞬間、オーブンが煤をまき散らして轟音をあげた。爆発の衝撃に少し巻き込まれた樹は花房の上に折り重なるように突っ伏した。その生温かい感触に、爆発よりも別の「やばい」という感情が樹を襲った。
「フレンチトーストはなんとか守りきったよ!」
爆発箇所から一番離れていた安堂は、煤一つついていない様子で、平和きわまりない声をあげた。
樹の心中は穏やかでない。
昨日の今日でこの距離感。
樹はこの状況で恥ずかしがることを根性で抑えて、短く息を吐くと花房を引きずり起こしてやった。
「花房君、だいじょ・・・ふっ」
目が合った途端、予想もしていなかった事態に樹は唇を震わせて噴き出した。
「あはははは、あなた鏡見てみなさいよ鏡!傑作だわ!」
「カフェ君!」
花房は悪い予感がしてカフェに愛用のハンドミラーを持ってこさせたが、その鏡面に映った自分の姿に悲鳴を上げた。
「うわーっ!煤で泥棒ヒゲになってる!こんなの僕じゃなーいっ!」
「あははははは!」
樹が不謹慎としか思えない程爆笑している中、いちごの方では樫野と一緒に倒れていたらしく、どこかしおらしい様子で立ち上がった。辺りにはガラスの破片が散っている。
すっかり室内がカオスに成り果てたそのとき、誰かが玄関の戸を叩いた。魚眼レンズで確認したところ大家さんのようだ。みんなはこの惨状を見られると追い出されるかもと不安になって躊躇したが、ノックが荒々しくなったので安堂が慌てて戸を開いた。
「今の爆発音はいったいなんなんだい!?」
大家さんの目に、もくもくと煙を上げているオーブンが映る。言い逃れが出来ない状況に、安堂が声を上げる。
「すみません!オーブンを使おうと思ったらこんなことに・・・」
「・・・」
「もっ、もちろんオーブンは弁償いたします!」
「それに、きれいに掃除もします!ですから・・・」
「アパートを追い出さないでください!!」
五人は一斉に頭を深く下げた。大家さんは一呼吸おいて、静かに告げた。
「朝食を済ませたら、ちょっとあたしのところへ来てちょうだい」
まるで説教の前触れのような口ぶりだ。五人はこわごわと顔を見合わせるのだった。
「どっかに懐中電灯なかったか?」
「専門的な工具も無いのに、修復は無理だよ」
「直すしかねえんだよ!俺達三日後にはグランプリの対戦があるんだぜ!オーブンが壊れてちゃ話になんねえし!」
「どうしようもないのは仕方が無いでしょ。バンバン叩いてみる?」
「それだよ!」
樹の投げやりな発言を真に受けて、いちごが嬉々としてやって来た。
「冗談なんだけれど」
「ううん、いける気がする!あたし、昔ママがこれでテレビ直してたの見たことあるもん!」
いちごは素人には見えないフォームで腕をふりかぶると、強烈な手刀をオーブンの上部に一発かました。
オーブンが、じわじわとあたたまりはじめる。
「おおーっ!」
「動きだした!」
「天野!よくやった!」
「えへへ・・・」
みんなが喜んだのもつかの間、オーブンはパチパチと嫌な音を立てはじめた。
「・・・なんか、ちょっとヤバくないか?」
「いちご、早くオーブンから離れなさい!」
「えっ?」
そして次の瞬間、オーブンが煤をまき散らして轟音をあげた。爆発の衝撃に少し巻き込まれた樹は花房の上に折り重なるように突っ伏した。その生温かい感触に、爆発よりも別の「やばい」という感情が樹を襲った。
「フレンチトーストはなんとか守りきったよ!」
爆発箇所から一番離れていた安堂は、煤一つついていない様子で、平和きわまりない声をあげた。
樹の心中は穏やかでない。
昨日の今日でこの距離感。
樹はこの状況で恥ずかしがることを根性で抑えて、短く息を吐くと花房を引きずり起こしてやった。
「花房君、だいじょ・・・ふっ」
目が合った途端、予想もしていなかった事態に樹は唇を震わせて噴き出した。
「あはははは、あなた鏡見てみなさいよ鏡!傑作だわ!」
「カフェ君!」
花房は悪い予感がしてカフェに愛用のハンドミラーを持ってこさせたが、その鏡面に映った自分の姿に悲鳴を上げた。
「うわーっ!煤で泥棒ヒゲになってる!こんなの僕じゃなーいっ!」
「あははははは!」
樹が不謹慎としか思えない程爆笑している中、いちごの方では樫野と一緒に倒れていたらしく、どこかしおらしい様子で立ち上がった。辺りにはガラスの破片が散っている。
すっかり室内がカオスに成り果てたそのとき、誰かが玄関の戸を叩いた。魚眼レンズで確認したところ大家さんのようだ。みんなはこの惨状を見られると追い出されるかもと不安になって躊躇したが、ノックが荒々しくなったので安堂が慌てて戸を開いた。
「今の爆発音はいったいなんなんだい!?」
大家さんの目に、もくもくと煙を上げているオーブンが映る。言い逃れが出来ない状況に、安堂が声を上げる。
「すみません!オーブンを使おうと思ったらこんなことに・・・」
「・・・」
「もっ、もちろんオーブンは弁償いたします!」
「それに、きれいに掃除もします!ですから・・・」
「アパートを追い出さないでください!!」
五人は一斉に頭を深く下げた。大家さんは一呼吸おいて、静かに告げた。
「朝食を済ませたら、ちょっとあたしのところへ来てちょうだい」
まるで説教の前触れのような口ぶりだ。五人はこわごわと顔を見合わせるのだった。