34話 心に浮かぶのは
夢小説設定
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「え、なによ。だって雰囲気がちょっと似てるのは本当のことじゃない」
「だからって、警戒心を緩めるなんて樹ちゃんらしくもない。いくら僕みたいでも、彼は僕じゃないよ。これからは気をつけてよね」
「なんで花房君に言われなきゃいけないのよ・・・」
樹は少し目線を逸らしてもごもごと言った。
「そんなの・・・」
花房は、樹の耳元に口を寄せた。
「・・・僕が嫌だからに決まってるでしょ」
「もう、何よその理屈・・・花房君がどうだろうと別に私は彼と必要以上に仲良くしようとは思ってないんだから!」
樹は顔を赤くしながらまくしたてた。
やたらと距離が近いのが気になる。
「ふうん・・・まあそういうことだから、ちゃんと覚えといてよね。樹ちゃん」
花房は言うと、いきなり指先で樹の右頬に触れた。
「ちょ、ちょっと何・・・」
「・・・この辺だったかな」
樹がどぎまぎしていると花房は更に顔を近づけて、そのまま唇で触れた。樹は弾かれたように声を上げる。
「ちょっと!やっぱり似たようなことするじゃない!前にもこんなこと言った気がするけれど・・・私、多分花房君とは違う文化圏で育ったものだからそういうのは・・・」
「同じだと思うよ?・・・僕が、他の日本人より行動力があるだけでね」
「それは・・・」
「どういうことかは、考えてみて欲しいな」
花房がにこりと微笑む。絶対同じはずがないと思いながら、完全に余裕が無くなった樹は「寝る」と言って寝室に消えた。
花房はその後ろ姿を笑いながら見守っていたが、見えなくなると長く息を吐いた。
「・・・余裕無いのかな、それとも浮かれてるのか・・・?」
今更のように頬が熱を帯びるのを感じて、花房は敢えて冷蔵庫に入ったアイスコーヒーで目を覚ました。テーブルの上に飾られたバラは、まだ鮮度を保っている。
パリ留学が決まって実家に戻った時、ふと浮かんだことがあった。
この留学中にどうしても成し遂げたいこと。
グランプリ優勝のほかに一つ、ある。
花房は椅子にかけていた上着を羽織ると、玄関扉を開き、そのまま夜の帳を下ろした戸外に繰り出して行った。
「だからって、警戒心を緩めるなんて樹ちゃんらしくもない。いくら僕みたいでも、彼は僕じゃないよ。これからは気をつけてよね」
「なんで花房君に言われなきゃいけないのよ・・・」
樹は少し目線を逸らしてもごもごと言った。
「そんなの・・・」
花房は、樹の耳元に口を寄せた。
「・・・僕が嫌だからに決まってるでしょ」
「もう、何よその理屈・・・花房君がどうだろうと別に私は彼と必要以上に仲良くしようとは思ってないんだから!」
樹は顔を赤くしながらまくしたてた。
やたらと距離が近いのが気になる。
「ふうん・・・まあそういうことだから、ちゃんと覚えといてよね。樹ちゃん」
花房は言うと、いきなり指先で樹の右頬に触れた。
「ちょ、ちょっと何・・・」
「・・・この辺だったかな」
樹がどぎまぎしていると花房は更に顔を近づけて、そのまま唇で触れた。樹は弾かれたように声を上げる。
「ちょっと!やっぱり似たようなことするじゃない!前にもこんなこと言った気がするけれど・・・私、多分花房君とは違う文化圏で育ったものだからそういうのは・・・」
「同じだと思うよ?・・・僕が、他の日本人より行動力があるだけでね」
「それは・・・」
「どういうことかは、考えてみて欲しいな」
花房がにこりと微笑む。絶対同じはずがないと思いながら、完全に余裕が無くなった樹は「寝る」と言って寝室に消えた。
花房はその後ろ姿を笑いながら見守っていたが、見えなくなると長く息を吐いた。
「・・・余裕無いのかな、それとも浮かれてるのか・・・?」
今更のように頬が熱を帯びるのを感じて、花房は敢えて冷蔵庫に入ったアイスコーヒーで目を覚ました。テーブルの上に飾られたバラは、まだ鮮度を保っている。
パリ留学が決まって実家に戻った時、ふと浮かんだことがあった。
この留学中にどうしても成し遂げたいこと。
グランプリ優勝のほかに一つ、ある。
花房は椅子にかけていた上着を羽織ると、玄関扉を開き、そのまま夜の帳を下ろした戸外に繰り出して行った。