33話 Bonjour, Paris!
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「世界中の聖マリー学園からケーキグランプリを勝ち抜いてやってきた皆さん。ようこそ、聖マリー学園パリ本校へ!」
彼の後ろには日本校を含む四校の理事長たちが従えられている。どう見てもアンリ先生がラスボスという陣形だ。いちごは先生の顔を見て嬉しそうにする。
「今日は、世界ケーキグランプリ前夜祭!チーム全員で楽しんでください!」
アンリ先生の手の上に、二人のスピリッツが姿を現した。バニラ達と違って制服のようなものに身を包んでいる。
「スイーツ王国からこの日のために来てくれた、宮廷パティシエたちと一緒に!」
「さあ、みんなも隠れてないで出ていらっしゃい!」
その言葉に誘われるように、各選手の元からスピリッツが頭上に飛び出す。全参加者にパートナーがついているようだった。
「みんないるのね・・・」
単純に感心した樹の言葉に、花房が少し気遣うような視線を向ける。樹は微笑んで首を振った。
「私のパートナーもね、きっとその辺りにいるわ。パリまで着いてくるって言ってたもの」
「仲直りしたんだ」
「留学が決まった日にね」
ふと窓の外を見てみると、鮮やかな金髪が揺れた気がした。
花房とひそひそ話しているうちに、スピリッツの魔法でまだほとんど白紙のトーナメント表が宙に浮かんでいる。
「これから、前夜祭を兼ねてトーナメントの抽選会を始めます」
アンリ先生と宮廷パティシエが用意した余興は、これまであまり表立った活躍が許されなかったスピリッツ達をメインにしたものだ。魔法で作った空間で障害物レースを行い、ゴール順から抽選権を獲得するという形らしい。
「がんばれーっ!」
一斉にリンクから飛び立って異次元に向かうスピリッツ達に、選手達も声援を送った。その様子も中継してくれるようなので、一同はパートナーが急流やら歯車やらを超えて行く様子を楽しんで見守った。樹は妙なところでツボに入ったのか、スピリッツがごく真剣に新たなステージに差し掛かって行く度に吹き出すのをこらえていた。
程なくしてチームいちごのスピリッツ達はほぼ一着でこちらに帰って来たが、レースはまだ続く。疲れたからだに鞭打たせ、スピリッツ達は各チーム代表選手たちにひたすらスイーツをサーブする。最後の種目はスイーツ早食い競争だ。
言うまでもなくこの競技に歓喜したのはいちごだ。周りの選手が思わず手を止める程とてつもないスピードで、かつ天国にでもいるかのような表情でいちごは胃が悲鳴をあげそうなメニューを平らげた。いちごがパリに来た目的のひとつはこれで果たせたのではないかと、樹は思った。
「一番だもん、絶対いい枠に入れるよね!」
得意分野でまず一勝したいちごは、誇らしげに抽選列の先頭に立ちながら景気の良いことを言った。そのとき、広間の扉が豪快に開く。
「ちょっと待ったーっ!」
一瞬で空気を変える女が踏み込んで来た。
「・・・小城さん」
樹は目を丸くしてその姿を見つめる。いつもの男二人の他に、後ろに外国人を三人連れている。通りすがりに投げキスを受けた樫野は不意打ちで昏倒した。
小城は堂々とアンリ先生に向かって口を開く。
「遅れて申し訳ありません。チャーターした飛行機が遅れてしまって・・・」
「チーム小城、アンドラ校の代表ですか」
「はい!」
「抽選の順番は既に決まっています。あなた方は最後になりますが、よろしいですね?」
「はぁい!もちろんですぅ!」
小城は元気よく返事して、胸を張って最後尾に並んだ。全く話が読めない。みんなの疑問をいちごが代弁した。
「小城さん、どうやって・・・」
「私を誰だと思ってるの?世界のシャトー製菓の社長令嬢よ!パパのコネを使えばできないことは何もないわ!おーっほっほっほっほ!」
「・・・」
まさかパリに来てまでこの高笑いを聞くことになるとは。樹は日本校のみんなと同じく苦笑する。
抽選方法は一般的なガラガラくじのため、すぐに結果が発表された。
「チームいちごと当たるのは・・・チームリカルド・・・?」
その巡り合わせに樹達が眉を寄せ、いちごが早々のれもんとの対立を惜しんでいると、リカルドがまた樹に抱きつきにやって来た。
「ああ!一回戦の相手が君たちだなんて光栄だよ!」
「君たちっていうなら全員に抱きつきなさいよ!」
樹は咄嗟に安堂を引っ張りだして壁にする。勢い余って彼に抱きついたリカルドと、抱きつかれた安堂は真顔になり、樫野がすごい勢いで噴き出して壁に顔を押し当てた。
初日からこんなことで、まともにグランプリが出来るのだろうかと樹は不安に思ったが、それでも自分が初めて経験することになる試合というものに、仄かな期待を胸に灯していた。
彼の後ろには日本校を含む四校の理事長たちが従えられている。どう見てもアンリ先生がラスボスという陣形だ。いちごは先生の顔を見て嬉しそうにする。
「今日は、世界ケーキグランプリ前夜祭!チーム全員で楽しんでください!」
アンリ先生の手の上に、二人のスピリッツが姿を現した。バニラ達と違って制服のようなものに身を包んでいる。
「スイーツ王国からこの日のために来てくれた、宮廷パティシエたちと一緒に!」
「さあ、みんなも隠れてないで出ていらっしゃい!」
その言葉に誘われるように、各選手の元からスピリッツが頭上に飛び出す。全参加者にパートナーがついているようだった。
「みんないるのね・・・」
単純に感心した樹の言葉に、花房が少し気遣うような視線を向ける。樹は微笑んで首を振った。
「私のパートナーもね、きっとその辺りにいるわ。パリまで着いてくるって言ってたもの」
「仲直りしたんだ」
「留学が決まった日にね」
ふと窓の外を見てみると、鮮やかな金髪が揺れた気がした。
花房とひそひそ話しているうちに、スピリッツの魔法でまだほとんど白紙のトーナメント表が宙に浮かんでいる。
「これから、前夜祭を兼ねてトーナメントの抽選会を始めます」
アンリ先生と宮廷パティシエが用意した余興は、これまであまり表立った活躍が許されなかったスピリッツ達をメインにしたものだ。魔法で作った空間で障害物レースを行い、ゴール順から抽選権を獲得するという形らしい。
「がんばれーっ!」
一斉にリンクから飛び立って異次元に向かうスピリッツ達に、選手達も声援を送った。その様子も中継してくれるようなので、一同はパートナーが急流やら歯車やらを超えて行く様子を楽しんで見守った。樹は妙なところでツボに入ったのか、スピリッツがごく真剣に新たなステージに差し掛かって行く度に吹き出すのをこらえていた。
程なくしてチームいちごのスピリッツ達はほぼ一着でこちらに帰って来たが、レースはまだ続く。疲れたからだに鞭打たせ、スピリッツ達は各チーム代表選手たちにひたすらスイーツをサーブする。最後の種目はスイーツ早食い競争だ。
言うまでもなくこの競技に歓喜したのはいちごだ。周りの選手が思わず手を止める程とてつもないスピードで、かつ天国にでもいるかのような表情でいちごは胃が悲鳴をあげそうなメニューを平らげた。いちごがパリに来た目的のひとつはこれで果たせたのではないかと、樹は思った。
「一番だもん、絶対いい枠に入れるよね!」
得意分野でまず一勝したいちごは、誇らしげに抽選列の先頭に立ちながら景気の良いことを言った。そのとき、広間の扉が豪快に開く。
「ちょっと待ったーっ!」
一瞬で空気を変える女が踏み込んで来た。
「・・・小城さん」
樹は目を丸くしてその姿を見つめる。いつもの男二人の他に、後ろに外国人を三人連れている。通りすがりに投げキスを受けた樫野は不意打ちで昏倒した。
小城は堂々とアンリ先生に向かって口を開く。
「遅れて申し訳ありません。チャーターした飛行機が遅れてしまって・・・」
「チーム小城、アンドラ校の代表ですか」
「はい!」
「抽選の順番は既に決まっています。あなた方は最後になりますが、よろしいですね?」
「はぁい!もちろんですぅ!」
小城は元気よく返事して、胸を張って最後尾に並んだ。全く話が読めない。みんなの疑問をいちごが代弁した。
「小城さん、どうやって・・・」
「私を誰だと思ってるの?世界のシャトー製菓の社長令嬢よ!パパのコネを使えばできないことは何もないわ!おーっほっほっほっほ!」
「・・・」
まさかパリに来てまでこの高笑いを聞くことになるとは。樹は日本校のみんなと同じく苦笑する。
抽選方法は一般的なガラガラくじのため、すぐに結果が発表された。
「チームいちごと当たるのは・・・チームリカルド・・・?」
その巡り合わせに樹達が眉を寄せ、いちごが早々のれもんとの対立を惜しんでいると、リカルドがまた樹に抱きつきにやって来た。
「ああ!一回戦の相手が君たちだなんて光栄だよ!」
「君たちっていうなら全員に抱きつきなさいよ!」
樹は咄嗟に安堂を引っ張りだして壁にする。勢い余って彼に抱きついたリカルドと、抱きつかれた安堂は真顔になり、樫野がすごい勢いで噴き出して壁に顔を押し当てた。
初日からこんなことで、まともにグランプリが出来るのだろうかと樹は不安に思ったが、それでも自分が初めて経験することになる試合というものに、仄かな期待を胸に灯していた。