33話 Bonjour, Paris!
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日本校をお城みたいだと思っていたのは甘かった。
赤い絨毯の上を歩いて教室に行くことには慣れっこな五人でさえも顔を引きつらせる程、パリ本校の敷地面積の広大さと建造物の豪華絢爛さは異常な域に達しているのだ。一見、ヴェルサイユ宮殿と見間違っても無理はない。
内装はさすがにある程度学校としての実用性を意識していたが、それでもあちらこちらに芸術作品のようなものが展示されている。
五人が通された広間にも、本校の生徒の作品だと思われるいくつものピエスモンテがガラスケースに入れられて出展されていた。世界各地からグランプリのために集まって来た生徒のほとんどはそれを眺めることに夢中になっていたが、そうでない生徒も見受けられる。おそらくそれがパリ本校の生徒だろう。
樹が横目で面構えを値踏みしていると、ふと見覚えのある男子生徒が目に入った。面白いほどまっすぐに目が合った瞬間、思わず眉を寄せる。
「樹じゃないかー!」
「最悪だわ!」
つい先ほど別れたはずだったリカルドは迷わずにこちらに駆け寄って来た。そして、そのまま樹に思い切り抱きつく。男に抱きつかれたことなど無いが警戒はしていたので、樹は俊敏な動きで拘束を逃れて鋭く三歩下がった。
「まさか、そこまで世間が狭いとは思わなかったわ・・・」
「運命的だね!僕は本校の代表の一人なのさ。そして、こっちが僕のチームメイト」
リカルドは振り返って並んでいる三人の女子生徒を示した。
「エリー、クララ、そして・・・」
「れもんちゃん!」
いちごがクララの陰から姿を現した小柄な少女を見て声を上げた。
「やっぱりパリに来たんですね、いちご先輩!」
「うん、決勝で天王寺さんには負けたけど、特別に来ることを許してもらえたの!」
中等部予選大会以来の顔だった。あの頃はちょうど四人と離れていた時だったので樹の記憶は薄いが、彼女はもっと違う雰囲気の少女だった気がする。
「もしかして、いちごなのかい?日本校でれもんに大切なことを教えてくれた先輩って・・・」
「え、なにそれ!?」
「私、あのトーナメントでいちご先輩に負けて、初めて自分を見つめ直すことができたんです。先輩みたいに謙虚で素直にならなきゃって・・・」
従順で律儀そうな後輩の姿に変貌を遂げたれもんの様子に、いちごはつい恐縮する。
「け、謙虚だなんて・・・!ドジなだけだし・・・」
「こうして世界ケーキグランプリに参加することができたのは、いちご先輩のおかげです!」
「そんな!大げさだよ・・・」
「やっぱり日本人は奥ゆかしい!」
リカルドはいちごの態度に満足げに口元を緩める。
「本校の代表だって・・・」
「チャラ男のくせに・・・!」
「彼には絶対負けたくないな・・・」
ぎりぎり聞こえそうな声量で敵意を示すスイーツ王子達だが、リカルドの方は意に介していない様子だ。れもんが意気揚々と近況を語りはじめたところで、大きな扉が開き、アンリ先生の声が広間に響いた。
赤い絨毯の上を歩いて教室に行くことには慣れっこな五人でさえも顔を引きつらせる程、パリ本校の敷地面積の広大さと建造物の豪華絢爛さは異常な域に達しているのだ。一見、ヴェルサイユ宮殿と見間違っても無理はない。
内装はさすがにある程度学校としての実用性を意識していたが、それでもあちらこちらに芸術作品のようなものが展示されている。
五人が通された広間にも、本校の生徒の作品だと思われるいくつものピエスモンテがガラスケースに入れられて出展されていた。世界各地からグランプリのために集まって来た生徒のほとんどはそれを眺めることに夢中になっていたが、そうでない生徒も見受けられる。おそらくそれがパリ本校の生徒だろう。
樹が横目で面構えを値踏みしていると、ふと見覚えのある男子生徒が目に入った。面白いほどまっすぐに目が合った瞬間、思わず眉を寄せる。
「樹じゃないかー!」
「最悪だわ!」
つい先ほど別れたはずだったリカルドは迷わずにこちらに駆け寄って来た。そして、そのまま樹に思い切り抱きつく。男に抱きつかれたことなど無いが警戒はしていたので、樹は俊敏な動きで拘束を逃れて鋭く三歩下がった。
「まさか、そこまで世間が狭いとは思わなかったわ・・・」
「運命的だね!僕は本校の代表の一人なのさ。そして、こっちが僕のチームメイト」
リカルドは振り返って並んでいる三人の女子生徒を示した。
「エリー、クララ、そして・・・」
「れもんちゃん!」
いちごがクララの陰から姿を現した小柄な少女を見て声を上げた。
「やっぱりパリに来たんですね、いちご先輩!」
「うん、決勝で天王寺さんには負けたけど、特別に来ることを許してもらえたの!」
中等部予選大会以来の顔だった。あの頃はちょうど四人と離れていた時だったので樹の記憶は薄いが、彼女はもっと違う雰囲気の少女だった気がする。
「もしかして、いちごなのかい?日本校でれもんに大切なことを教えてくれた先輩って・・・」
「え、なにそれ!?」
「私、あのトーナメントでいちご先輩に負けて、初めて自分を見つめ直すことができたんです。先輩みたいに謙虚で素直にならなきゃって・・・」
従順で律儀そうな後輩の姿に変貌を遂げたれもんの様子に、いちごはつい恐縮する。
「け、謙虚だなんて・・・!ドジなだけだし・・・」
「こうして世界ケーキグランプリに参加することができたのは、いちご先輩のおかげです!」
「そんな!大げさだよ・・・」
「やっぱり日本人は奥ゆかしい!」
リカルドはいちごの態度に満足げに口元を緩める。
「本校の代表だって・・・」
「チャラ男のくせに・・・!」
「彼には絶対負けたくないな・・・」
ぎりぎり聞こえそうな声量で敵意を示すスイーツ王子達だが、リカルドの方は意に介していない様子だ。れもんが意気揚々と近況を語りはじめたところで、大きな扉が開き、アンリ先生の声が広間に響いた。