33話 Bonjour, Paris!
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日本に比べてパリの初夏は日射しが強いが、その代わりに涼しい風が吹いてくる。樹は窓を開けてその風に髪を泳がせながら、朝日に照らされた異国の町並みを夢見心地で眺めていた。
あれから約12時間のフライトを経て、パリに到着したのが昨日の午後のことだ。アンリ先生や天王寺たちとはシャルル・ド・ゴール空港で別れ、樹たち五人はパリ市内に用意されたアパルトマンの一室での生活が始まったのだった。
昨日は飛行機で興奮してよく眠れなかったせいで時差ぼけにやられてしまい、アパルトマンの周辺がよく観察できなかったのだが、こうして見るとなかなか古き良き建物が多く、樹はすっかり気に入ってしまった。
下の階に住む大家の女性になにやら尋ねに行った花房が帰って来た。その手にアンティーク風のどっしりした花瓶とスーパーマーケットの袋を持っている。樹は窓の外から視線を外して彼の手から袋を受け取った。安堂もふらりと現れてその中を見る。
「食べ物を貰えたの?」
「初日だからって。とりあえず今日の朝食はこれで何か作ろうよ」
「ナイス、花房!で、それは?」
「大家さんに使ってない花瓶を貸してもらったんだ。日本からバラの切り花を持って来たからね。生けてテーブルの上に置いたら景観が良くなるかと思って」
「おまえ、ここまで来て花かよ・・・」
樫野は呆れた顔をする。花房はひとり空港で検疫を受けてまで日本からバラを持ち込んで来たのだ。その執念をもっと別のことにと嫌味ったらしく呟く樫野の言葉を華麗に無視して、花房は花瓶に水と延命剤を入れはじめた。
「で、誰が料理する?」
「おい東堂、一応言っとくけどな。今起きてる中で背の順とかいってもお前のが先だからな」
「たかだか1,2cmで偉そうね。早くキッチン使ってみたいし今日は私がやるわよ。明日から交代制にしましょう」
樹はそういうと、戸棚を開けて調理器具を漁りはじめる。器具が気になるのか結局樫野もその隣にやってきて棚の中を観察しはじめた。
「朝から女の子の手料理が食べられるなんて、気分がいいね」
花房は手早くエプロンを身につけた樹の後ろ姿を満足そうに見守りながら言った。
「でもローテーションの半分は男だよ、花房」
安堂はありがたみの無いことを言う。程なくして卵とベーコンが香ばしく焼ける香りに引きつけられたように、いちごが寝室から登場した。5人が生活するこの一室に、リビング・ダイニング、キッチン、バス、男用寝室と女用寝室まで揃っている。寮よりも全く手狭ではない贅沢な空間だ。
「おはよーっ!わあ、おいしそう!」
皿の上を見て歓声をあげたいちごに、樫野はわざとらしくため息をつく。
「あれほど爆睡してたやつが一番最後に起きてくるとはな・・・」
「えっ・・・?」
飛行機の中でのことだ。みんなが興奮で寝付けない中、どうも神経の太いらしいいちごは毛布を被った途端にぐっすり眠りこけており、入国後に空港から乗り込んだタクシーの中でも眠り、アパルトマンに着いてからもいち早くベッドに転がり込んだのだ。どうも本人はそのことを覚えていないらしい。
「それより冷めないうちに食べようよ」
「さんせーい!」
いちごはその言葉に大喜びで着席する。樫野はこれ以上何か言うのを諦めた。
「いちご、明日から食事は当番制よ。ちゃんと起きるのよ」
「Oui, mademoiselle!」
樹の言葉に、いちごは調子良く応えた。
あれから約12時間のフライトを経て、パリに到着したのが昨日の午後のことだ。アンリ先生や天王寺たちとはシャルル・ド・ゴール空港で別れ、樹たち五人はパリ市内に用意されたアパルトマンの一室での生活が始まったのだった。
昨日は飛行機で興奮してよく眠れなかったせいで時差ぼけにやられてしまい、アパルトマンの周辺がよく観察できなかったのだが、こうして見るとなかなか古き良き建物が多く、樹はすっかり気に入ってしまった。
下の階に住む大家の女性になにやら尋ねに行った花房が帰って来た。その手にアンティーク風のどっしりした花瓶とスーパーマーケットの袋を持っている。樹は窓の外から視線を外して彼の手から袋を受け取った。安堂もふらりと現れてその中を見る。
「食べ物を貰えたの?」
「初日だからって。とりあえず今日の朝食はこれで何か作ろうよ」
「ナイス、花房!で、それは?」
「大家さんに使ってない花瓶を貸してもらったんだ。日本からバラの切り花を持って来たからね。生けてテーブルの上に置いたら景観が良くなるかと思って」
「おまえ、ここまで来て花かよ・・・」
樫野は呆れた顔をする。花房はひとり空港で検疫を受けてまで日本からバラを持ち込んで来たのだ。その執念をもっと別のことにと嫌味ったらしく呟く樫野の言葉を華麗に無視して、花房は花瓶に水と延命剤を入れはじめた。
「で、誰が料理する?」
「おい東堂、一応言っとくけどな。今起きてる中で背の順とかいってもお前のが先だからな」
「たかだか1,2cmで偉そうね。早くキッチン使ってみたいし今日は私がやるわよ。明日から交代制にしましょう」
樹はそういうと、戸棚を開けて調理器具を漁りはじめる。器具が気になるのか結局樫野もその隣にやってきて棚の中を観察しはじめた。
「朝から女の子の手料理が食べられるなんて、気分がいいね」
花房は手早くエプロンを身につけた樹の後ろ姿を満足そうに見守りながら言った。
「でもローテーションの半分は男だよ、花房」
安堂はありがたみの無いことを言う。程なくして卵とベーコンが香ばしく焼ける香りに引きつけられたように、いちごが寝室から登場した。5人が生活するこの一室に、リビング・ダイニング、キッチン、バス、男用寝室と女用寝室まで揃っている。寮よりも全く手狭ではない贅沢な空間だ。
「おはよーっ!わあ、おいしそう!」
皿の上を見て歓声をあげたいちごに、樫野はわざとらしくため息をつく。
「あれほど爆睡してたやつが一番最後に起きてくるとはな・・・」
「えっ・・・?」
飛行機の中でのことだ。みんなが興奮で寝付けない中、どうも神経の太いらしいいちごは毛布を被った途端にぐっすり眠りこけており、入国後に空港から乗り込んだタクシーの中でも眠り、アパルトマンに着いてからもいち早くベッドに転がり込んだのだ。どうも本人はそのことを覚えていないらしい。
「それより冷めないうちに食べようよ」
「さんせーい!」
いちごはその言葉に大喜びで着席する。樫野はこれ以上何か言うのを諦めた。
「いちご、明日から食事は当番制よ。ちゃんと起きるのよ」
「Oui, mademoiselle!」
樹の言葉に、いちごは調子良く応えた。