32話 開かれる扉
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「私が他のスピリッツと違うところはいっぱいあるんだけど、とにかく人間界に来たのは、修行でパートナーを探すためじゃないの」
結局いつもの湖畔までたどり着くと、アリスは芝に腰掛けて話しだした。
「一応私も宮廷パティシエ目指してあっちで修行やってたんだけどね、スイーツ作りがもう本当に、てんでだめだったんだ。魔法が暴発したりしたのも原因だったんだけど、ちょっと他にも色々上手く行かなくて、結局修行はやめてきちゃった。ここには逃げて来ただけ」
「アリスが他のスピリッツよりかなり魔法使えるっていうのは本当だったのね」
「うん。体質みたいなんだけど、詳しいことは私も分からない。スプーンが無かったら変わるかなと思ったけど、やっぱり私のはスイーツマジックじゃないみたいで何も起こらなかった。余計にあっちに居づらくなっただけ」
アリスは軽い口調の割に辛気くさい顔をする。そういえば女王にスプーンを没収されたのだと聞いたことがあるので樹は口にしたが、アリスはそれを否定した。
「ただの噂だよ。スプーンは私が自分で折ったの」
「あれ、折れるの?」
「なかなか難しかったけどね。折っちゃってからやっとやばいなと思って、つい逃げて来ちゃった。スイーツ王国にも人間に似た型の種族がいるのは知ってる?女王像なんか見てたら分かると思うけれど、王族はああなんだ。何度も見たことあるからけっこう上手く真似できたし、このままどうにか人間になっちゃおうかと思ってここまで来たんだ」
すごい発想をするものだと思いながら樹は聞いていた。アリスはここにたどり着くまでだけでも、1人でどれだけ色々なことを考えながらもがいてきたのだろうか。
「まあ、結局種族の壁は超えられないっていうか、ご存知のとおり普通の人には全く認知されなくて上手くいかなかったんだけど。でも、行く当ても無いから今は他のスピリッツに見つからないようにこそこそ中途半端に生きてるってわけ」
「寂しかったから、適当にパートナーを見繕ったのね」
樹は単刀直入に推測を述べる。単純すぎて思わずアリスは面食らってしまったが、あながち的外れでもないので少し首をひねった。
「まあ、私が寂しかったって言うのは間違いじゃないけど・・・なんかね、樹は他人とは思えなかったから。最初に会った日に私が言ったこと、覚えてる?」
樹は目を瞬かせる。
「私の修行が続かなかったのは、さっきも言った技術のこともあるんだけど、周りのスピリッツとの間で孤立してたからだと思うんだ。魔法のことでちょっとビビられてたし、私も無愛想だったから。参ってる時とか、不安な時とかに誰かが居てくれないって結構辛いよ。心が不安定になるとスイーツ作りにもモロに影響するし、そしたらもう取り返しなんてつかない。樹はここに来た初日から騒動になって一人だったから、なんだか心配で」
友達いない子って、あまり向いてないよ。
確かそんなことを言われた気がする。
「結果的には、なんかすごく邪魔になっちゃったけど・・・そのことは本当に謝りたいと思ってたんだ。私がパートナーになっちゃったせいで他の皆についてるようなスピリッツが樹には全然現れなくて。樹はそのことで悩んでたのに」
「何言ってるのよ、ちっとも邪魔なんかじゃないわ」
樹はアリスの方にぐっと手を伸ばすと、その白い手に指を絡ませた。
「あの時私の前に現れてくれて、本当に感謝してる。確かにアリスはいつでもポケットの中にいてくれるわけでもないし、練習をサポートしてくれるわけでもないけれど、一緒に居て欲しいときに手を握れるスイーツスピリッツなんて他の皆にはついてないわよ。自慢のパートナーなんだからね」
「・・・ありがとう、樹」
アリスはしりすぼみにそう言うと、顔を背けてしまった。泣いているような気がしたが、樹はそちらを見ずにしばらくそのまま隣に座っていた。
結局いつもの湖畔までたどり着くと、アリスは芝に腰掛けて話しだした。
「一応私も宮廷パティシエ目指してあっちで修行やってたんだけどね、スイーツ作りがもう本当に、てんでだめだったんだ。魔法が暴発したりしたのも原因だったんだけど、ちょっと他にも色々上手く行かなくて、結局修行はやめてきちゃった。ここには逃げて来ただけ」
「アリスが他のスピリッツよりかなり魔法使えるっていうのは本当だったのね」
「うん。体質みたいなんだけど、詳しいことは私も分からない。スプーンが無かったら変わるかなと思ったけど、やっぱり私のはスイーツマジックじゃないみたいで何も起こらなかった。余計にあっちに居づらくなっただけ」
アリスは軽い口調の割に辛気くさい顔をする。そういえば女王にスプーンを没収されたのだと聞いたことがあるので樹は口にしたが、アリスはそれを否定した。
「ただの噂だよ。スプーンは私が自分で折ったの」
「あれ、折れるの?」
「なかなか難しかったけどね。折っちゃってからやっとやばいなと思って、つい逃げて来ちゃった。スイーツ王国にも人間に似た型の種族がいるのは知ってる?女王像なんか見てたら分かると思うけれど、王族はああなんだ。何度も見たことあるからけっこう上手く真似できたし、このままどうにか人間になっちゃおうかと思ってここまで来たんだ」
すごい発想をするものだと思いながら樹は聞いていた。アリスはここにたどり着くまでだけでも、1人でどれだけ色々なことを考えながらもがいてきたのだろうか。
「まあ、結局種族の壁は超えられないっていうか、ご存知のとおり普通の人には全く認知されなくて上手くいかなかったんだけど。でも、行く当ても無いから今は他のスピリッツに見つからないようにこそこそ中途半端に生きてるってわけ」
「寂しかったから、適当にパートナーを見繕ったのね」
樹は単刀直入に推測を述べる。単純すぎて思わずアリスは面食らってしまったが、あながち的外れでもないので少し首をひねった。
「まあ、私が寂しかったって言うのは間違いじゃないけど・・・なんかね、樹は他人とは思えなかったから。最初に会った日に私が言ったこと、覚えてる?」
樹は目を瞬かせる。
「私の修行が続かなかったのは、さっきも言った技術のこともあるんだけど、周りのスピリッツとの間で孤立してたからだと思うんだ。魔法のことでちょっとビビられてたし、私も無愛想だったから。参ってる時とか、不安な時とかに誰かが居てくれないって結構辛いよ。心が不安定になるとスイーツ作りにもモロに影響するし、そしたらもう取り返しなんてつかない。樹はここに来た初日から騒動になって一人だったから、なんだか心配で」
友達いない子って、あまり向いてないよ。
確かそんなことを言われた気がする。
「結果的には、なんかすごく邪魔になっちゃったけど・・・そのことは本当に謝りたいと思ってたんだ。私がパートナーになっちゃったせいで他の皆についてるようなスピリッツが樹には全然現れなくて。樹はそのことで悩んでたのに」
「何言ってるのよ、ちっとも邪魔なんかじゃないわ」
樹はアリスの方にぐっと手を伸ばすと、その白い手に指を絡ませた。
「あの時私の前に現れてくれて、本当に感謝してる。確かにアリスはいつでもポケットの中にいてくれるわけでもないし、練習をサポートしてくれるわけでもないけれど、一緒に居て欲しいときに手を握れるスイーツスピリッツなんて他の皆にはついてないわよ。自慢のパートナーなんだからね」
「・・・ありがとう、樹」
アリスはしりすぼみにそう言うと、顔を背けてしまった。泣いているような気がしたが、樹はそちらを見ずにしばらくそのまま隣に座っていた。