31話 夢への飛翔
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後半戦が始まり、気を取り直した樫野は再び塔と対峙したが、その勢いを殺すような嬌声が会場中に響き渡った。
「フレーッ、フレーッ、真くん!」
いつのまにか観客席の一部をスポットライトがこうこうと照らしあげている。
「頑張れ!頑張れ!真くん!ワーオ!」
「ワー・・・」
「ようこ!声が小さいわ!もっと声を張り上げて!」
「は、はい!」
もちろん小城の仕業だった。鮎川にまでチアリーダーの格好をさせている。樹は先日こそこそと寮を出て練習とやらに行っていた彼女の真実を察した。つづいて、佐藤と塩谷もチンドン屋じみたハッピを着用して太鼓とラッパを盛大にかき鳴らした。
「フレー!フレー!真くん!」
「M・A・K・O・T・O・ゴーゴー!真くん!イエーイ!」
照れ気味の鮎川までポンポンを振り回す様子に、観客席からは失笑が漏れる。樫野は盛大な音と羞恥で目眩がしたようだった。
「やめなさい!選手が集中できなくなる!」
度を超したパフォーマンスに、辛島先生も注意を向ける。
「でーもー!」
「小城先輩!樫野に障るのでやめてやってください!」
「応援するなら心の中で叫んで!」
樹といちごもかわるがわるに口を挟み、会場中が笑いに包まれる。小城は気まずそうに小さくなった。
それからの四時間はあっという間だった。観客全員が固唾をのんで見守る中、樫野達は健闘したが、惜しくもエッフェル塔の完成まであと一歩のところで作業時間の終了が告げられ、クラスメイト達は嘆いた。そのときになって、樹は樫野が悔し涙を流すのを初めて見た。
両者の作品の出来具合は、エッフェル塔をのぞけばおおむね互角だった。夢のパリの街が広がるチームいちごの作品に対して、チーム天王寺の方では二羽の白鳥が波間で堂々たる羽を伸ばしている。
採点の時間になり、アンリ先生はクリップボード片手にチームいちごの作品のもとにやってきた。ここで二つのピエスモンテの芸術性、独創性、完成度の点を見られる。先生はこの作品がメンバーそれぞれの夢を表しているものだと理解したはいいものの、やはり塔の頂に目を留める。
「上部がないのは、まだ夢半ばの僕らの今の姿を表現しているのです」
「そんな言い訳は通用しませんよ。時間内に完成できなかったのは減点させてもらいます」
花房がさらりと苦し紛れの解釈を述べたが、やはり無駄だった。
審査員は5人の教師で、一人100点満点でひとつの作品を審査し、その合算が得点になる。さっそく天王寺が手がけた飴細工に合計485点の高得点がついた。最低点数でも辛口といわれるアンリ先生が出した95点だという。
「いきなりとんでもない点がついてもうた・・・」
「しかたないよ、あの出来じゃあ・・・」
観客席もざわめくが、驚くよりもただただ圧倒されており、反応は薄い。対する花房は、同じく平均90点以上の高得点とはいえ頭ひとつ及ばず475点。この時点で10点の差がついた。
「つづいて、チョコレートピエスモンテの審査結果を発表します」
チーム天王寺の海堂が手がけたチョコレートの白鳥は475点、樫野は完成度がたたって427点だ。それでもおおむね80点は確保しているところが彼のチョコレートの底力といったところか。
「みんな、すまねえ・・・」
「ドンマイ!」
「そうよ!まだ負けたわけじゃないよ!」
落ち込む樫野をみんなは笑顔で励ます。ここまででチーム天王寺は961点、チームいちごは902点と59点差だ。
「あっちゃー・・・結構差があるでー・・・」
「まだよ。きっと詰められるわ」
「そうよ!だって天野さん頑張ったもの!」
樹の言葉に中島も熱っぽく同意して二人は頷き合った。
「フレーッ、フレーッ、真くん!」
いつのまにか観客席の一部をスポットライトがこうこうと照らしあげている。
「頑張れ!頑張れ!真くん!ワーオ!」
「ワー・・・」
「ようこ!声が小さいわ!もっと声を張り上げて!」
「は、はい!」
もちろん小城の仕業だった。鮎川にまでチアリーダーの格好をさせている。樹は先日こそこそと寮を出て練習とやらに行っていた彼女の真実を察した。つづいて、佐藤と塩谷もチンドン屋じみたハッピを着用して太鼓とラッパを盛大にかき鳴らした。
「フレー!フレー!真くん!」
「M・A・K・O・T・O・ゴーゴー!真くん!イエーイ!」
照れ気味の鮎川までポンポンを振り回す様子に、観客席からは失笑が漏れる。樫野は盛大な音と羞恥で目眩がしたようだった。
「やめなさい!選手が集中できなくなる!」
度を超したパフォーマンスに、辛島先生も注意を向ける。
「でーもー!」
「小城先輩!樫野に障るのでやめてやってください!」
「応援するなら心の中で叫んで!」
樹といちごもかわるがわるに口を挟み、会場中が笑いに包まれる。小城は気まずそうに小さくなった。
それからの四時間はあっという間だった。観客全員が固唾をのんで見守る中、樫野達は健闘したが、惜しくもエッフェル塔の完成まであと一歩のところで作業時間の終了が告げられ、クラスメイト達は嘆いた。そのときになって、樹は樫野が悔し涙を流すのを初めて見た。
両者の作品の出来具合は、エッフェル塔をのぞけばおおむね互角だった。夢のパリの街が広がるチームいちごの作品に対して、チーム天王寺の方では二羽の白鳥が波間で堂々たる羽を伸ばしている。
採点の時間になり、アンリ先生はクリップボード片手にチームいちごの作品のもとにやってきた。ここで二つのピエスモンテの芸術性、独創性、完成度の点を見られる。先生はこの作品がメンバーそれぞれの夢を表しているものだと理解したはいいものの、やはり塔の頂に目を留める。
「上部がないのは、まだ夢半ばの僕らの今の姿を表現しているのです」
「そんな言い訳は通用しませんよ。時間内に完成できなかったのは減点させてもらいます」
花房がさらりと苦し紛れの解釈を述べたが、やはり無駄だった。
審査員は5人の教師で、一人100点満点でひとつの作品を審査し、その合算が得点になる。さっそく天王寺が手がけた飴細工に合計485点の高得点がついた。最低点数でも辛口といわれるアンリ先生が出した95点だという。
「いきなりとんでもない点がついてもうた・・・」
「しかたないよ、あの出来じゃあ・・・」
観客席もざわめくが、驚くよりもただただ圧倒されており、反応は薄い。対する花房は、同じく平均90点以上の高得点とはいえ頭ひとつ及ばず475点。この時点で10点の差がついた。
「つづいて、チョコレートピエスモンテの審査結果を発表します」
チーム天王寺の海堂が手がけたチョコレートの白鳥は475点、樫野は完成度がたたって427点だ。それでもおおむね80点は確保しているところが彼のチョコレートの底力といったところか。
「みんな、すまねえ・・・」
「ドンマイ!」
「そうよ!まだ負けたわけじゃないよ!」
落ち込む樫野をみんなは笑顔で励ます。ここまででチーム天王寺は961点、チームいちごは902点と59点差だ。
「あっちゃー・・・結構差があるでー・・・」
「まだよ。きっと詰められるわ」
「そうよ!だって天野さん頑張ったもの!」
樹の言葉に中島も熱っぽく同意して二人は頷き合った。