28話 アンリ・リュカスの来訪
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「アンリ先生が作ってくれたケーキを再現したつもりなんだけど・・・でも、やっぱり全然違うな・・・」
いちごは見かけからして少し歪なケーキを見て苦笑する。
樫野はそれを聞いて口を開く。
「お前らしいケーキを作ればいいじゃねえか。曲げることねえよ」
「樫野・・・」
「ムースの滑らかさがいまいちだけどな」
珍しくいいことを言ってくれたと思ったらこれだ。いちごは思わずひっくり返った。
「デコレーションの失敗を苺で隠してごまかしてるよね」
「ひとつひとつの大きさにばらつきが目立つわよ」
「苺のジュレが固い・・・ゼラチンの入れ過ぎだね」
三人が樫野に続き、いちごは参って俯いた。
「みんな・・・容赦ないね」
「だって、天野さんにはもっともっと成長してもらわないと」
「期待してるから言うんだよ」
「油断してちゃ駄目よ、私たちはいつでも見てるんだから」
きょとんと聞いていたいちごの表情に、ふと明るい色が戻った。
そうだ、天王寺さんみたいにアンリ先生に教えてもらったことはないけれど。
編入したときから、ずっとみんながいてくれた。
一歩一歩、ゆっくりと階段をのぼるように。
「天王寺会長にひるんでんじゃねえよ。決勝戦の相手だぞ?ライバルだからな!」
「その通りよ」
樫野の言葉に、凛とした声が相づちを打つ。
天王寺が、そこにいた。
「やっと会えましたね」
しかも彼女はアンリ先生を連れていた。いちごは驚いて立ち上がった。
「アンリ先生・・・どうしてここに?」
「忙しくてなかなかいちごに会えないから、彼女に案内してもらったんですよ」
「私はアンリ先生に頼まれたからご案内しただけよ」
珍しくサロン・ド・マリーの制服を着たままの天王寺が淡々と言う。
「・・・先生、あたしのこと覚えていてくれたんですか?」
いちごは感極まった様子で尋ねた。アンリ先生は優しげな微笑で応じる。
「もちろん、忘れたことなどありませんよ。それに、いちごの活躍はパリにいても聞こえてきましたから」
その言葉にいちごは胸を高鳴らせる。
すっかり輝きを取り戻したいちごの様子に、樹も笑みを漏らした。
「時々日本校から報告書が送られてくるんです。だから、ケーキグランプリでチームいちごが勝ち抜いていることも知っていました。もちろん、いちごから届いたエアメールもちゃんと読んでいますよ。返事を出せずに申し訳ないと思っています」
「いえ、そんなこと・・・読んでもらえてたって分かっただけで、十分です・・・」
いちごは震える声で言った。樹の視界の端に、そっと樫野が箱から残り一個のムースを取り出しているのがうつった。
「いちごの作ったケーキを早く食べてみたいと思っていましたよ」
「あっ!ケーキ、作りました!アンリ先生のために」
いちごは嬉々として箱を覗き込んだが、ムースは消滅している。
「えーっ!無い!たしか一個残ってたはずなのに!・・・んっ、あれ、ちょっと樫野!何食べてるのよ!この食いしん坊!」
もぐもぐと口を動かしている樫野をめざとく見つけたいちごは、憤慨して彼を揺すった。アンリ先生がそれを見てほほえましそうにする。
「すみませんアンリ先生、すぐに新しく作りますから・・・」
「それには及びませんよ。君たちのケーキはグランプリ会場で食べさせてもらいますから」
「それじゃあ・・・」
いちごは状況を理解して目を丸くした。
アンリ先生は決勝の審査員を務めにきたのだ。
「聖マリートップの麻里が相手では優勝は難しいと思いますが・・・」
アンリ先生の口から、天王寺の名前が出された。
でも、もういちごは怯まなかった。
「負けません」
今度こそ、強い眼差しで断言してみせる。
「誰が相手だろうと、あたし、負けません」
「・・・楽しみにしていますよ、天野さん」
樹は天王寺の目つきにはっとする。
小城の宣言を受けたときとは様子が全く違う。
天王寺にとっても、アンリ先生に選ばれた存在であるいちごは本気でぶつかりたいライバルなのだと樹は気づいたのだった。
いちごは見かけからして少し歪なケーキを見て苦笑する。
樫野はそれを聞いて口を開く。
「お前らしいケーキを作ればいいじゃねえか。曲げることねえよ」
「樫野・・・」
「ムースの滑らかさがいまいちだけどな」
珍しくいいことを言ってくれたと思ったらこれだ。いちごは思わずひっくり返った。
「デコレーションの失敗を苺で隠してごまかしてるよね」
「ひとつひとつの大きさにばらつきが目立つわよ」
「苺のジュレが固い・・・ゼラチンの入れ過ぎだね」
三人が樫野に続き、いちごは参って俯いた。
「みんな・・・容赦ないね」
「だって、天野さんにはもっともっと成長してもらわないと」
「期待してるから言うんだよ」
「油断してちゃ駄目よ、私たちはいつでも見てるんだから」
きょとんと聞いていたいちごの表情に、ふと明るい色が戻った。
そうだ、天王寺さんみたいにアンリ先生に教えてもらったことはないけれど。
編入したときから、ずっとみんながいてくれた。
一歩一歩、ゆっくりと階段をのぼるように。
「天王寺会長にひるんでんじゃねえよ。決勝戦の相手だぞ?ライバルだからな!」
「その通りよ」
樫野の言葉に、凛とした声が相づちを打つ。
天王寺が、そこにいた。
「やっと会えましたね」
しかも彼女はアンリ先生を連れていた。いちごは驚いて立ち上がった。
「アンリ先生・・・どうしてここに?」
「忙しくてなかなかいちごに会えないから、彼女に案内してもらったんですよ」
「私はアンリ先生に頼まれたからご案内しただけよ」
珍しくサロン・ド・マリーの制服を着たままの天王寺が淡々と言う。
「・・・先生、あたしのこと覚えていてくれたんですか?」
いちごは感極まった様子で尋ねた。アンリ先生は優しげな微笑で応じる。
「もちろん、忘れたことなどありませんよ。それに、いちごの活躍はパリにいても聞こえてきましたから」
その言葉にいちごは胸を高鳴らせる。
すっかり輝きを取り戻したいちごの様子に、樹も笑みを漏らした。
「時々日本校から報告書が送られてくるんです。だから、ケーキグランプリでチームいちごが勝ち抜いていることも知っていました。もちろん、いちごから届いたエアメールもちゃんと読んでいますよ。返事を出せずに申し訳ないと思っています」
「いえ、そんなこと・・・読んでもらえてたって分かっただけで、十分です・・・」
いちごは震える声で言った。樹の視界の端に、そっと樫野が箱から残り一個のムースを取り出しているのがうつった。
「いちごの作ったケーキを早く食べてみたいと思っていましたよ」
「あっ!ケーキ、作りました!アンリ先生のために」
いちごは嬉々として箱を覗き込んだが、ムースは消滅している。
「えーっ!無い!たしか一個残ってたはずなのに!・・・んっ、あれ、ちょっと樫野!何食べてるのよ!この食いしん坊!」
もぐもぐと口を動かしている樫野をめざとく見つけたいちごは、憤慨して彼を揺すった。アンリ先生がそれを見てほほえましそうにする。
「すみませんアンリ先生、すぐに新しく作りますから・・・」
「それには及びませんよ。君たちのケーキはグランプリ会場で食べさせてもらいますから」
「それじゃあ・・・」
いちごは状況を理解して目を丸くした。
アンリ先生は決勝の審査員を務めにきたのだ。
「聖マリートップの麻里が相手では優勝は難しいと思いますが・・・」
アンリ先生の口から、天王寺の名前が出された。
でも、もういちごは怯まなかった。
「負けません」
今度こそ、強い眼差しで断言してみせる。
「誰が相手だろうと、あたし、負けません」
「・・・楽しみにしていますよ、天野さん」
樹は天王寺の目つきにはっとする。
小城の宣言を受けたときとは様子が全く違う。
天王寺にとっても、アンリ先生に選ばれた存在であるいちごは本気でぶつかりたいライバルなのだと樹は気づいたのだった。