28話 アンリ・リュカスの来訪
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
次の日もいちごは朝から放課後までアンリ先生を追っていた。樫野達はとりあえず、いちごが満足するまでそっとしておくことにしたのだが、練習を先に始めようとすると早々にいちごが練習室に飛び込んで来た。
「ごめーん、遅くなっちゃって!今日は参加できるからね!さっ、特訓やるぞー!」
どう見ても不自然に明るいいちごの様子に、四人は一瞬顔を見合わせた。
「天野さん・・・」
「それ、アンリ先生に渡す・・・」
「オーブン予熱しておくね・・・」
いちごはそっけなく紙袋を台において、四人に背を向ける。オーブンの調節リングをいじるいちごの手は微かに震えていた。
「会えなかったの?」
樹が言うと、いちごはぴくんと弾かれたように指をオーブンから離し、口を開いた。
「・・・アンリ先生、サロン・ド・マリーで・・・天王寺さんのケーキ食べてて・・・すごく、嬉しそうだったから・・・もういいの」
震える声はしだいに涙まじりになり、掠れていく。
「先生、あたしのこと忘れちゃったのかな・・・?」
いちごはしゃがみこんで泣き出してしまった。
前日のいちごの様子を思い出して樹は胸が痛んだ。
憧れに目を輝かせていた彼女は眩しいくらいだった。
それが、今は。
「泣かないで、いちご」
樹は目頭を押さえて洟をすすっているいちごを抱きしめた。
いちごは一瞬驚いたように硬直したが、涙を溢れさせたまま樹にしがみついた。
いちごが今日思い知ったのは、天王寺と自分との歴然とした差だった。
天王寺は学内ではアンリ先生の立派な片腕としてその位置を確立しており、アンリ先生も日本に来るなり彼女と二人きりの時間を作ることに難ない様子だ。
片や、自分は走り回って飛び回っても先生の目には止まらないし、先生のためだといってケーキを作っていればチームメイトの樫野とは喧嘩になるし、散々だ。
アンリ先生への憧れは誰にも負けない自信があったけれど、一度会っただけの自分に比べて天王寺は格が違うのだ。
そんな彼女とケーキグランプリで戦うことに、今更ながら震えが襲って来るぐらいだ。
「かわいい顔が台無しだよ。いちごちゃんに涙は似合わないよ」
「走り回って疲れたよね。座って」
花房が優しく声をかけ、安堂がいちごに椅子を引いてやる。いちごは樹に手を借りてどうにか立ち上がると、その上に落ち着いた。彼女の目の前で、樫野は紙袋を取り上げた。
「ちょうど腹が減ってたところだ。みんなで食べるぞ」
いちごは何の抵抗も無く、箱から四個のケーキが仲間の元に行き渡るところを見ていた。一斉にフォークを入れるみんなの姿も見慣れたものだ。
「ごめーん、遅くなっちゃって!今日は参加できるからね!さっ、特訓やるぞー!」
どう見ても不自然に明るいいちごの様子に、四人は一瞬顔を見合わせた。
「天野さん・・・」
「それ、アンリ先生に渡す・・・」
「オーブン予熱しておくね・・・」
いちごはそっけなく紙袋を台において、四人に背を向ける。オーブンの調節リングをいじるいちごの手は微かに震えていた。
「会えなかったの?」
樹が言うと、いちごはぴくんと弾かれたように指をオーブンから離し、口を開いた。
「・・・アンリ先生、サロン・ド・マリーで・・・天王寺さんのケーキ食べてて・・・すごく、嬉しそうだったから・・・もういいの」
震える声はしだいに涙まじりになり、掠れていく。
「先生、あたしのこと忘れちゃったのかな・・・?」
いちごはしゃがみこんで泣き出してしまった。
前日のいちごの様子を思い出して樹は胸が痛んだ。
憧れに目を輝かせていた彼女は眩しいくらいだった。
それが、今は。
「泣かないで、いちご」
樹は目頭を押さえて洟をすすっているいちごを抱きしめた。
いちごは一瞬驚いたように硬直したが、涙を溢れさせたまま樹にしがみついた。
いちごが今日思い知ったのは、天王寺と自分との歴然とした差だった。
天王寺は学内ではアンリ先生の立派な片腕としてその位置を確立しており、アンリ先生も日本に来るなり彼女と二人きりの時間を作ることに難ない様子だ。
片や、自分は走り回って飛び回っても先生の目には止まらないし、先生のためだといってケーキを作っていればチームメイトの樫野とは喧嘩になるし、散々だ。
アンリ先生への憧れは誰にも負けない自信があったけれど、一度会っただけの自分に比べて天王寺は格が違うのだ。
そんな彼女とケーキグランプリで戦うことに、今更ながら震えが襲って来るぐらいだ。
「かわいい顔が台無しだよ。いちごちゃんに涙は似合わないよ」
「走り回って疲れたよね。座って」
花房が優しく声をかけ、安堂がいちごに椅子を引いてやる。いちごは樹に手を借りてどうにか立ち上がると、その上に落ち着いた。彼女の目の前で、樫野は紙袋を取り上げた。
「ちょうど腹が減ってたところだ。みんなで食べるぞ」
いちごは何の抵抗も無く、箱から四個のケーキが仲間の元に行き渡るところを見ていた。一斉にフォークを入れるみんなの姿も見慣れたものだ。