28話 アンリ・リュカスの来訪
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色々考えたが、自分が焦ってアリスを探したところで、彼女の方にこちらと向き合う意志がないならば意味がないのだと樹は思った。
アリスが自分から会いに来てくれる、そう信じて待つことに決めた。
大丈夫、今の自分なら待っていられる。
花房と話した樹は落ち着いた心地だった。
(そうと決まったら勉強か練習か・・・あ、そういえばこの前買った参考書をまだ読んでないんだったわ)
空は暗くなりはじめている。女子寮の玄関があたたかな光を灯して樹を出迎えていた。
階段をのぼる樹に上から慌ただしい足音が近づいて来た。
「あっ、樹ちゃん!」
スケッチブックを小脇に抱えたいちごはせわしなく急ブレーキをかけた。
「いちご、アンリ先生には会えたの?」
「あー、会えなかったんだよね・・・先生、もうタクシーに乗って行っちゃった・・・。練習サボっといてごめんね?」
「まあ、ほどほどにしときなさいよ」
「うん、明日で絶対どうにかするから!」
いちごは樹を拝むように手を合わせた。
「本当にアンリ先生のことになると熱心ね、いちごは」
「えへへ・・・実は、先生に食べてもらおうと思って今からケーキを作りにいくんだ!」
いちごの様子が微笑ましくて笑みを漏らした樹に、いちごは興奮した様子でひそひそと告げると、抱えていたスケッチブックを開いてみせた。
淡い桃色の山形のムースのてっぺんには苺。繊細な金色の羽根がそっと添えられて全体を可憐な雰囲気に仕上げている。
「これ、アンリ先生が初めて会ったときに作ってくれたケーキなんだ!思い出しながら描いてみたんだけど、これに挑戦して先生に見てもらいたいなって思って・・・」
「そういえばアンリ先生とはデパートのスイーツフェスタで会ったって言ってたわね」
「そうだよ。パティシエールになるっていう夢を思い出させてくれた味なんだ。これはあたしにとっての思い出のケーキ・・・ううん、運命のケーキなんだ」
恍惚と語るいちごの様子を見て、彼女のアンリ先生に対する崇拝ぶりは筋金入りなのだと樹は改めて思った。
樫野は随分といちごの行動を非難していたけれど、やっぱり自分には止めようと思えない。
「頑張ってアンリ先生に褒めてもらってくるのよ」
「うん、ありがとう樹ちゃん!」
いちごは嬉しそうに笑顔を向けると、軽快に階段を駆け下りて行った。
アリスが自分から会いに来てくれる、そう信じて待つことに決めた。
大丈夫、今の自分なら待っていられる。
花房と話した樹は落ち着いた心地だった。
(そうと決まったら勉強か練習か・・・あ、そういえばこの前買った参考書をまだ読んでないんだったわ)
空は暗くなりはじめている。女子寮の玄関があたたかな光を灯して樹を出迎えていた。
階段をのぼる樹に上から慌ただしい足音が近づいて来た。
「あっ、樹ちゃん!」
スケッチブックを小脇に抱えたいちごはせわしなく急ブレーキをかけた。
「いちご、アンリ先生には会えたの?」
「あー、会えなかったんだよね・・・先生、もうタクシーに乗って行っちゃった・・・。練習サボっといてごめんね?」
「まあ、ほどほどにしときなさいよ」
「うん、明日で絶対どうにかするから!」
いちごは樹を拝むように手を合わせた。
「本当にアンリ先生のことになると熱心ね、いちごは」
「えへへ・・・実は、先生に食べてもらおうと思って今からケーキを作りにいくんだ!」
いちごの様子が微笑ましくて笑みを漏らした樹に、いちごは興奮した様子でひそひそと告げると、抱えていたスケッチブックを開いてみせた。
淡い桃色の山形のムースのてっぺんには苺。繊細な金色の羽根がそっと添えられて全体を可憐な雰囲気に仕上げている。
「これ、アンリ先生が初めて会ったときに作ってくれたケーキなんだ!思い出しながら描いてみたんだけど、これに挑戦して先生に見てもらいたいなって思って・・・」
「そういえばアンリ先生とはデパートのスイーツフェスタで会ったって言ってたわね」
「そうだよ。パティシエールになるっていう夢を思い出させてくれた味なんだ。これはあたしにとっての思い出のケーキ・・・ううん、運命のケーキなんだ」
恍惚と語るいちごの様子を見て、彼女のアンリ先生に対する崇拝ぶりは筋金入りなのだと樹は改めて思った。
樫野は随分といちごの行動を非難していたけれど、やっぱり自分には止めようと思えない。
「頑張ってアンリ先生に褒めてもらってくるのよ」
「うん、ありがとう樹ちゃん!」
いちごは嬉しそうに笑顔を向けると、軽快に階段を駆け下りて行った。