28話 アンリ・リュカスの来訪
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「アリスは転入してきた日に調理室に現れたの。金髪碧眼の作り物みたいなきれいな女の子で、絶対本当の名前では無いと思うんだけどね」
夕暮れが湖面を幻想的な色に染めていく。
静かにそよぐ風に揺れる髪を押さえながら、自分の知らない誰かのことを語る樹の口元を、花房は見ていた。
「その子が、ハニー様から聞いたっていうスピリッツの異端児みたいな子なの?」
「そう・・・一応、本人がそうと言っていないから言い切りたくはないんだけど、ハニー様が言ってた情報と似すぎてる」
「最近樹ちゃんがふらふらしてるのは、その子を探してるからだったんだ」
「ふらふらって、人を間抜けみたいに・・・。いつもはそんな感じで一人でいたら適当に出て来るんだけど、あの子が普段どこに居るかってことは教えてくれたことがないのね。だから今手詰まっているところ」
本当に自分のことは何も教えてくれないのよ、と樹は呆れたように言う。「ましてスピリッツだったなんて考えられない」と吐き捨てる。
しかし、その口元はほんの少しだけ可笑しそうに上がっている。
「アリスの方では私のことはほとんどなんでも知ってるぐらいなのに不公平だと思わない?それに、私ばかりがアリスに相談してばかりでアリスはこっちに相談してこないのよ。何か気に障るわよね」
「あっ、けっこう頼られたいんだ?」
「・・・まあ、人並みには?」
樹は微妙に花房から目線を逸らすと小声になりながら言った。
「困ってそうなのがなんとなく分かるのに全然教えてくれないの」
「怖いんじゃないの?」
花房が間もおかずにそんなことを言うので、樹は目を瞬かせた。
「え?何よそれ」
「話したら樹ちゃんがもう今みたいに付き合ってくれないと思ったんじゃない?」
「バカ、そんな・・・」
樹は考える。
アリスに、スピリッツのことでぼやいたことがあった。
劣等感を口に出したことがあった。
彼女は責任を感じているのだろうか。
でも、私は・・・。
「樹ちゃんは、その子のことが好きなんだね」
花房が、樹の顔を覗き込むように言った。
少し、びっくりした。
それに何でそんなことを聞く、と思わないでもなかったが。
樹はなんだか久しぶりに淀みの無い答を告げられる気がした。
「当たり前じゃない」
夕暮れが湖面を幻想的な色に染めていく。
静かにそよぐ風に揺れる髪を押さえながら、自分の知らない誰かのことを語る樹の口元を、花房は見ていた。
「その子が、ハニー様から聞いたっていうスピリッツの異端児みたいな子なの?」
「そう・・・一応、本人がそうと言っていないから言い切りたくはないんだけど、ハニー様が言ってた情報と似すぎてる」
「最近樹ちゃんがふらふらしてるのは、その子を探してるからだったんだ」
「ふらふらって、人を間抜けみたいに・・・。いつもはそんな感じで一人でいたら適当に出て来るんだけど、あの子が普段どこに居るかってことは教えてくれたことがないのね。だから今手詰まっているところ」
本当に自分のことは何も教えてくれないのよ、と樹は呆れたように言う。「ましてスピリッツだったなんて考えられない」と吐き捨てる。
しかし、その口元はほんの少しだけ可笑しそうに上がっている。
「アリスの方では私のことはほとんどなんでも知ってるぐらいなのに不公平だと思わない?それに、私ばかりがアリスに相談してばかりでアリスはこっちに相談してこないのよ。何か気に障るわよね」
「あっ、けっこう頼られたいんだ?」
「・・・まあ、人並みには?」
樹は微妙に花房から目線を逸らすと小声になりながら言った。
「困ってそうなのがなんとなく分かるのに全然教えてくれないの」
「怖いんじゃないの?」
花房が間もおかずにそんなことを言うので、樹は目を瞬かせた。
「え?何よそれ」
「話したら樹ちゃんがもう今みたいに付き合ってくれないと思ったんじゃない?」
「バカ、そんな・・・」
樹は考える。
アリスに、スピリッツのことでぼやいたことがあった。
劣等感を口に出したことがあった。
彼女は責任を感じているのだろうか。
でも、私は・・・。
「樹ちゃんは、その子のことが好きなんだね」
花房が、樹の顔を覗き込むように言った。
少し、びっくりした。
それに何でそんなことを聞く、と思わないでもなかったが。
樹はなんだか久しぶりに淀みの無い答を告げられる気がした。
「当たり前じゃない」