28話 アンリ・リュカスの来訪
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アリスが見つからない。
ハニーに話を聞いてから何となく2、3日はなるべく会わないように動いていたものの、やはり話をしなくてはいけない気がして探すことにしたのだが、全く会えないのだ。
以前は人気さえ無くなるとすぐに湧いて出て来たのに、不審だ。
樹は確信した。
アリスも感づいたのだ。
彼女は妙に情報が早いところがあるから、自分の正体が知られたことが分かって避けているのだ。
(あっちに避けられるとどうしようもないわね・・・)
思えばいつも樹を見つけて近づいてくるのはアリスの方だから、こちらから近づこうと思ってもどこをどう探せば良いのか分からない。
この湖畔に来たのも何度目だろうか。
「出て来なさいよー・・・」
力なく水面に向かって呟くと、不意に物音がした。
「アリ———」
遂に現れたかと樹は緊張した面持ちで鋭く振り返ったが、そこに居たのは別の人間だった。
「こんなところで何してるの?樹ちゃん」
「えっ?あっ、花房く・・・」
樹は思い切り動揺してきょろきょろと視線を彷徨わせた。
「・・・誰か待ってたの?」
「えーっと、まあ・・・」
「ふうん、僕には言えない人なの?」
「・・・」
からかうように口角を持ち上げた花房だが、樹が思いのほか言い淀んだので、自分でも驚くほど表情が無に近くなった。
「え・・・本当に?」
花房から笑みが消えたので、樹は思わず目を伏せた。
今まで、アリス以外誰もこの湖畔に踏み込ませたことはなかった。
どうすればいいんだろう。
彼の問いに、どう答えればよいのだろう。
「えっと・・・」
樹は、かつてない緊張を覚えながらも、考えた。
そういえば、花房もふだん自分を見つけてくる方だ。アリスと同じように。
悩みがあるなら相談しろと言われたこともあった気がするが、結局自分からは何も相談したことはない。
相談事を引き受けてくれたのは、いつもアリスで。
・・・彼に、話してみようか。
自分は、彼に話したいのだろうか。
「ごめんね、人を待ってるなら僕がいたら迷惑だよね」
花房は、笑みを作って帰ろうとする。樹は咄嗟に彼の袖口を掴んでいた。
「・・・私、ずっと探してるの。探してるのに会えなくて困ってるのよ」
樹は花房の顔をまっすぐ見上げて言った。
「悩みを聞きに来てくれたんじゃなかったの?」
花房は暫し驚いたように固まっていたが、照れくさそうに笑った。
いつもの、花が綻ぶような。
他の男の子とは違う笑い方だ。
「・・・少しは僕のこと分かってくれたのかな」
その言葉に樹は少し恥ずかしくなって、口元を隠してそっぽを向いた。
ハニーに話を聞いてから何となく2、3日はなるべく会わないように動いていたものの、やはり話をしなくてはいけない気がして探すことにしたのだが、全く会えないのだ。
以前は人気さえ無くなるとすぐに湧いて出て来たのに、不審だ。
樹は確信した。
アリスも感づいたのだ。
彼女は妙に情報が早いところがあるから、自分の正体が知られたことが分かって避けているのだ。
(あっちに避けられるとどうしようもないわね・・・)
思えばいつも樹を見つけて近づいてくるのはアリスの方だから、こちらから近づこうと思ってもどこをどう探せば良いのか分からない。
この湖畔に来たのも何度目だろうか。
「出て来なさいよー・・・」
力なく水面に向かって呟くと、不意に物音がした。
「アリ———」
遂に現れたかと樹は緊張した面持ちで鋭く振り返ったが、そこに居たのは別の人間だった。
「こんなところで何してるの?樹ちゃん」
「えっ?あっ、花房く・・・」
樹は思い切り動揺してきょろきょろと視線を彷徨わせた。
「・・・誰か待ってたの?」
「えーっと、まあ・・・」
「ふうん、僕には言えない人なの?」
「・・・」
からかうように口角を持ち上げた花房だが、樹が思いのほか言い淀んだので、自分でも驚くほど表情が無に近くなった。
「え・・・本当に?」
花房から笑みが消えたので、樹は思わず目を伏せた。
今まで、アリス以外誰もこの湖畔に踏み込ませたことはなかった。
どうすればいいんだろう。
彼の問いに、どう答えればよいのだろう。
「えっと・・・」
樹は、かつてない緊張を覚えながらも、考えた。
そういえば、花房もふだん自分を見つけてくる方だ。アリスと同じように。
悩みがあるなら相談しろと言われたこともあった気がするが、結局自分からは何も相談したことはない。
相談事を引き受けてくれたのは、いつもアリスで。
・・・彼に、話してみようか。
自分は、彼に話したいのだろうか。
「ごめんね、人を待ってるなら僕がいたら迷惑だよね」
花房は、笑みを作って帰ろうとする。樹は咄嗟に彼の袖口を掴んでいた。
「・・・私、ずっと探してるの。探してるのに会えなくて困ってるのよ」
樹は花房の顔をまっすぐ見上げて言った。
「悩みを聞きに来てくれたんじゃなかったの?」
花房は暫し驚いたように固まっていたが、照れくさそうに笑った。
いつもの、花が綻ぶような。
他の男の子とは違う笑い方だ。
「・・・少しは僕のこと分かってくれたのかな」
その言葉に樹は少し恥ずかしくなって、口元を隠してそっぽを向いた。