27話 パートナー
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樹の思いは届かないまま中等部の調理室にたどり着いてしまった。
「マロンにちなんで、栗がたっぷりのモンブランを作ろうと思うんだけど・・・生地はなんにする?」
「フィナンシェがいいんじゃない?」
「フィナンシェか・・・オッケーよ!」
「マロングラッセは私に任せて!大得意なの!」
「それじゃあ、始めましょ!」
樹は椅子に座ったまま作業を眺めていた。マロンのおかげなのか、小城の手さばきはグランプリで見たときよりも洗練されている。
暇つぶしだと思って、樹はふと尋ねてみた。
「・・・そういえば小城先輩はどうして樫野が好きなんですか」
「やだー!それ、聞いちゃうー!?」
名前を口にした途端に声を上擦らせた小城だが、「うーんと」と語りはじめた声は思いのほか静かだった。
「私って、シャトー製菓の社長令嬢じゃない?だから、そのコネでこの学園に入学したの。入学試験なんてほとんど意味がなくって、正直めちゃくちゃヘタクソだったと思うわ。でも、パパの力が強い私の作ったスイーツにケチをつける人なんていなかったの」
「・・・はあ」
「先生も、私がごねたらあまり強くは言えなかったし。みんなおいしいって言ってくれるから、私もそれで納得してたのよね。・・・そんな時、新入生の歓迎会で初めて私のスイーツにまともに取り合ってくれたのが真くんだったわ」
「・・・そうでしたか」
樹は少し納得した。小城の恋がここまで盲目的なのは、本人の個性もあるが、彼女が狭かった世界で樫野という新しい扉を見つけたからなのかもしれない。
「私、あんたがおばあさんのコネで入ったって聞いたから、てっきりあんたも似たようなもんだと思ってたのよね」
「失礼な」
樹は思わず失礼なことを言った。
「ほんっと性格悪い子ね・・・。でもなんかそのせいで憎めないのよねえ、あんた。あっ、天野いちごは憎たらしいけど!」
小城は作業に戻る。小城には腹が立つことも多いが、なんだかんだで樹にしても憎めない。
モンブランが完成すると、小城はエプロンを片付けに行った。その時、ドアが開いていちご達が入って来た。今から練習を始めるのだろうか。
「あっ!モンブランだ!おいしそう!」
「樹ちゃんが作ったの?すごくいい出来だけど」
花房が、大人しく座っている樹に言う。
「いや、それは私じゃなくて」
「真くーん!!」
樫野の気配を察知した小城が俊足で戻ってきて彼を押し倒した。
「ナイスタイミングよ!たった今モンブランが完成したところなの!」
「オジョーが作った!?」
「食べてみてっ!あんっ」
結局試食は五人ですることになり、彼らは一斉にフォークを入れた。それは、確かにおいしかった。フィナンシェの焼き具合、マロンクリーム共に完璧。樫野も目を見張った。
スピリッツ達もその評判にひょこひょこ出て来て一口つまみ、口々においしいと頷く。小城がそれに気がついた。
「あなた達、スイーツスピリッツがついてたの!?」
「小城さん、見えるんですか!?」
いちごは、小城の反応に仰天する。
「おーっほっほっほ!実は私にもスイーツスピリッツのパートナーがついたのよ!」
「えーっ!?」
「出てらっしゃい」
小城の髪の陰から現れたマロンに、バニラ達もあぜんとする。マロンは四人に向かって小城の夢を叶えてみせるからと再度宣言してみせた。
「そういうわけだから、真くんに見合うパティシエールになるのも時間の問題よ!その暁には、結婚しましょ!あんっ」
小城は凄い力で樫野に抱きつく。いつも通りのアグレッシブな求愛に樫野は虫の息だ。
「・・・ところで東堂さん、なんでオジョーと一緒にいたの?」
「仲良かったっけ?」
「話せば長いから、秘密ってことで」
樹は息を吐いてそう答えた。
どうもこの午後だけで密度の濃い日になった気がする。
とりあえず、考えなければならないことがあったので、またも夜は長くなりそうだった。
明日、アリスに会ったらどんな顔をすればいいだろうか。
「マロンにちなんで、栗がたっぷりのモンブランを作ろうと思うんだけど・・・生地はなんにする?」
「フィナンシェがいいんじゃない?」
「フィナンシェか・・・オッケーよ!」
「マロングラッセは私に任せて!大得意なの!」
「それじゃあ、始めましょ!」
樹は椅子に座ったまま作業を眺めていた。マロンのおかげなのか、小城の手さばきはグランプリで見たときよりも洗練されている。
暇つぶしだと思って、樹はふと尋ねてみた。
「・・・そういえば小城先輩はどうして樫野が好きなんですか」
「やだー!それ、聞いちゃうー!?」
名前を口にした途端に声を上擦らせた小城だが、「うーんと」と語りはじめた声は思いのほか静かだった。
「私って、シャトー製菓の社長令嬢じゃない?だから、そのコネでこの学園に入学したの。入学試験なんてほとんど意味がなくって、正直めちゃくちゃヘタクソだったと思うわ。でも、パパの力が強い私の作ったスイーツにケチをつける人なんていなかったの」
「・・・はあ」
「先生も、私がごねたらあまり強くは言えなかったし。みんなおいしいって言ってくれるから、私もそれで納得してたのよね。・・・そんな時、新入生の歓迎会で初めて私のスイーツにまともに取り合ってくれたのが真くんだったわ」
「・・・そうでしたか」
樹は少し納得した。小城の恋がここまで盲目的なのは、本人の個性もあるが、彼女が狭かった世界で樫野という新しい扉を見つけたからなのかもしれない。
「私、あんたがおばあさんのコネで入ったって聞いたから、てっきりあんたも似たようなもんだと思ってたのよね」
「失礼な」
樹は思わず失礼なことを言った。
「ほんっと性格悪い子ね・・・。でもなんかそのせいで憎めないのよねえ、あんた。あっ、天野いちごは憎たらしいけど!」
小城は作業に戻る。小城には腹が立つことも多いが、なんだかんだで樹にしても憎めない。
モンブランが完成すると、小城はエプロンを片付けに行った。その時、ドアが開いていちご達が入って来た。今から練習を始めるのだろうか。
「あっ!モンブランだ!おいしそう!」
「樹ちゃんが作ったの?すごくいい出来だけど」
花房が、大人しく座っている樹に言う。
「いや、それは私じゃなくて」
「真くーん!!」
樫野の気配を察知した小城が俊足で戻ってきて彼を押し倒した。
「ナイスタイミングよ!たった今モンブランが完成したところなの!」
「オジョーが作った!?」
「食べてみてっ!あんっ」
結局試食は五人ですることになり、彼らは一斉にフォークを入れた。それは、確かにおいしかった。フィナンシェの焼き具合、マロンクリーム共に完璧。樫野も目を見張った。
スピリッツ達もその評判にひょこひょこ出て来て一口つまみ、口々においしいと頷く。小城がそれに気がついた。
「あなた達、スイーツスピリッツがついてたの!?」
「小城さん、見えるんですか!?」
いちごは、小城の反応に仰天する。
「おーっほっほっほ!実は私にもスイーツスピリッツのパートナーがついたのよ!」
「えーっ!?」
「出てらっしゃい」
小城の髪の陰から現れたマロンに、バニラ達もあぜんとする。マロンは四人に向かって小城の夢を叶えてみせるからと再度宣言してみせた。
「そういうわけだから、真くんに見合うパティシエールになるのも時間の問題よ!その暁には、結婚しましょ!あんっ」
小城は凄い力で樫野に抱きつく。いつも通りのアグレッシブな求愛に樫野は虫の息だ。
「・・・ところで東堂さん、なんでオジョーと一緒にいたの?」
「仲良かったっけ?」
「話せば長いから、秘密ってことで」
樹は息を吐いてそう答えた。
どうもこの午後だけで密度の濃い日になった気がする。
とりあえず、考えなければならないことがあったので、またも夜は長くなりそうだった。
明日、アリスに会ったらどんな顔をすればいいだろうか。