26話 ストロベリー・パニック!
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「プチ王子の方も行き詰まり?」
「黙れ」
「素晴らしいあだ名だと思う」
「お前は美人王子だとか言われてたな。花房が『僕にバラが似合うのは確かだけど、美人の称号をもらうにしても僕だと思う』とか言ってたぞ」
「そんな称号くれてやるわよ」
あほらしい話をしている中、いちごが早足にこちらへ向かって来た。これは奇遇と声を掛けると、いちごは焦った調子でしゃべりだした。
「さっき、夏希さんたちに新作食べさせてもらったの!すっごくきれいでおいしくって・・・」
「えらくオープンね」
「ほんと、余裕だな。俺ら、なめられてたりして・・・」
「ぼやぼやしてる場合じゃないのよ!あれに対抗できるフルーツ、探さなきゃ!」
いちごは二人の手を引いて駆け出す。入り慣れない温室などにやってきてドラゴンフルーツの使用などを考えたり、夕張メロンの取り寄せなどを考えたりと、いちごの思考は限界状態のようだった。
「そんなに無理して作っても、ろくなもんできないと思うぜ」
明らかに迷走しようとしているいちごに、樫野は言い放った。
「なんでそんなこと言うの!もう時間がないのに!早く何か見つけなきゃダメなのに!」
「天野!」
「なによ!」
「お前の取り柄は人を笑顔にすることだろ。なのに、今はお前自身が笑顔を忘れてる」
「・・・っ!」
いちごはその言葉にはっとして地面にへたりこんだ。
「・・・自分が笑顔じゃないのに、ステキなスイーツなんて作れるわけないよね・・・」
「なら、今度は自分が笑顔になるためのスイーツを作ったらどうだ」
樫野が続けた言葉に、樹はきょとんといちごとお揃いの表情になった。
(・・・なんか、急に優しいわね)
どぎまぎと樫野の発言を反芻しているいちごと、彼女から少し目線を逸らしながら曖昧に頬を掻いている樫野の様子を見比べながら、樹は小首をかしげる。
この二人の間の空気って正直よく分からない。
「いちご———」
思わず声をかけた樹だが、きょとんとしたいちごと目が合うと、何を言いたかったのか忘れてしまった。
そもそも、何か言いたかったんだっけ。
「あー・・・あっちのビニールハウスは行ったことある?この前イチゴが育てられてるって聞いたことあるわ」
「イチゴ・・・」
にわかに明るい声をあげたいちごは、樹が指差すビニールハウスへ急いだ。赤色が散りばめられたハウス内の畑に、いちごは歓声をあげる。
「あたし、イチゴがフルーツで一番好き!ハートみたいでかわいいと思わない?」
「ハート・・・?」
樹はいちごに並んで大粒の宝石のようなイチゴをつまんだ。
「赤いのは恋してる女の子、薄いピンクは一目惚れしちゃった子で、青いのは失恋してショック?」
そうやってすぐ物語を作るんだから、と思わず樹は小さく吹き出した。
「お前らしいな、天野。イチゴがハートか」
その横で樫野も笑ってそんなことを言う。素直に笑うことが少ない樫野の笑顔にいちごはまたきょとんと固まっている。
また、分からない空気が流れたような気がして樹は頬を掻く。
「じゃあ白いイチゴはどういう女の子?」
「えっ、白?」
樹は以前アリスに聞いたことのある情報を口にして、二人を誘導した。そこにあったのは言葉通りに白いイチゴだ。最近品種改良されたものなのだが、聖マリー学園でも早くも取り入れているらしかった。
「ニュースで見たことあるぞ。これがそうか・・・白いまま熟して甘いっていう」
「かわいい・・・こんなイチゴがあったなんて・・・!」
いちごはその姿を見て、唐突に頭の中で赤と白のイチゴが弾けたような気がした。
「・・・ねえ、赤いイチゴと白いイチゴで皿盛りデザート作ったらどうかな?」
「えっ?」
「赤と白のハートで統一するの!ハートのマカロン、ハートのアイス、ハートのパイ・・・。テーマは『恋する女の子』!甘くて酸っぱいストロベリー・ハート!・・・なんちゃって、少女趣味かな?」
早口になりながら興奮気味にアイデアを語るいちごの様子に、樹と樫野は思わず顔を見合わせた。
互いに目に映した色は同じだ。
「・・・いや、それ行けるかも!」
「ねえ、それ作ってみましょうよ!」
いちごが見つけた対抗馬は、自分と同じ名前の乙女だった。
「黙れ」
「素晴らしいあだ名だと思う」
「お前は美人王子だとか言われてたな。花房が『僕にバラが似合うのは確かだけど、美人の称号をもらうにしても僕だと思う』とか言ってたぞ」
「そんな称号くれてやるわよ」
あほらしい話をしている中、いちごが早足にこちらへ向かって来た。これは奇遇と声を掛けると、いちごは焦った調子でしゃべりだした。
「さっき、夏希さんたちに新作食べさせてもらったの!すっごくきれいでおいしくって・・・」
「えらくオープンね」
「ほんと、余裕だな。俺ら、なめられてたりして・・・」
「ぼやぼやしてる場合じゃないのよ!あれに対抗できるフルーツ、探さなきゃ!」
いちごは二人の手を引いて駆け出す。入り慣れない温室などにやってきてドラゴンフルーツの使用などを考えたり、夕張メロンの取り寄せなどを考えたりと、いちごの思考は限界状態のようだった。
「そんなに無理して作っても、ろくなもんできないと思うぜ」
明らかに迷走しようとしているいちごに、樫野は言い放った。
「なんでそんなこと言うの!もう時間がないのに!早く何か見つけなきゃダメなのに!」
「天野!」
「なによ!」
「お前の取り柄は人を笑顔にすることだろ。なのに、今はお前自身が笑顔を忘れてる」
「・・・っ!」
いちごはその言葉にはっとして地面にへたりこんだ。
「・・・自分が笑顔じゃないのに、ステキなスイーツなんて作れるわけないよね・・・」
「なら、今度は自分が笑顔になるためのスイーツを作ったらどうだ」
樫野が続けた言葉に、樹はきょとんといちごとお揃いの表情になった。
(・・・なんか、急に優しいわね)
どぎまぎと樫野の発言を反芻しているいちごと、彼女から少し目線を逸らしながら曖昧に頬を掻いている樫野の様子を見比べながら、樹は小首をかしげる。
この二人の間の空気って正直よく分からない。
「いちご———」
思わず声をかけた樹だが、きょとんとしたいちごと目が合うと、何を言いたかったのか忘れてしまった。
そもそも、何か言いたかったんだっけ。
「あー・・・あっちのビニールハウスは行ったことある?この前イチゴが育てられてるって聞いたことあるわ」
「イチゴ・・・」
にわかに明るい声をあげたいちごは、樹が指差すビニールハウスへ急いだ。赤色が散りばめられたハウス内の畑に、いちごは歓声をあげる。
「あたし、イチゴがフルーツで一番好き!ハートみたいでかわいいと思わない?」
「ハート・・・?」
樹はいちごに並んで大粒の宝石のようなイチゴをつまんだ。
「赤いのは恋してる女の子、薄いピンクは一目惚れしちゃった子で、青いのは失恋してショック?」
そうやってすぐ物語を作るんだから、と思わず樹は小さく吹き出した。
「お前らしいな、天野。イチゴがハートか」
その横で樫野も笑ってそんなことを言う。素直に笑うことが少ない樫野の笑顔にいちごはまたきょとんと固まっている。
また、分からない空気が流れたような気がして樹は頬を掻く。
「じゃあ白いイチゴはどういう女の子?」
「えっ、白?」
樹は以前アリスに聞いたことのある情報を口にして、二人を誘導した。そこにあったのは言葉通りに白いイチゴだ。最近品種改良されたものなのだが、聖マリー学園でも早くも取り入れているらしかった。
「ニュースで見たことあるぞ。これがそうか・・・白いまま熟して甘いっていう」
「かわいい・・・こんなイチゴがあったなんて・・・!」
いちごはその姿を見て、唐突に頭の中で赤と白のイチゴが弾けたような気がした。
「・・・ねえ、赤いイチゴと白いイチゴで皿盛りデザート作ったらどうかな?」
「えっ?」
「赤と白のハートで統一するの!ハートのマカロン、ハートのアイス、ハートのパイ・・・。テーマは『恋する女の子』!甘くて酸っぱいストロベリー・ハート!・・・なんちゃって、少女趣味かな?」
早口になりながら興奮気味にアイデアを語るいちごの様子に、樹と樫野は思わず顔を見合わせた。
互いに目に映した色は同じだ。
「・・・いや、それ行けるかも!」
「ねえ、それ作ってみましょうよ!」
いちごが見つけた対抗馬は、自分と同じ名前の乙女だった。