25話 南国の風
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そこはまさに夢のような場所だった。
建物の全てに全国の有名なスイーツの店が入っていて、若い女性やカップルが手に何かしら美味しそうなものを持ってぞろぞろと歩いている。
地図を見ながら計画を練ろうとしていると、突然いちごの悲鳴が聞こえた。
「どうした、天野!」
事件の発生かなにかかと思って四人は振り返ったが、いちごはショーウインドウに釘付けになっているだけだった。
「エクレアで有名な『リュパン』が入ってるー!東京に一店しかないのよー
!」
四人は思わず肩の力を抜きかけたが、いちごの暴走は止まらない。思いのままに足を進めてはにっこりしている店員の前でも構わずに嬌声をあげはじめる。
「きゃー!チョコレートの『ジョン・ポール・エルレ』!わーっ、こっちは『マロニエ』よ!絶品モンブラン食べなくちゃ!」
いちごの描く軌道はきわめて不規則で、追跡には困難を要した。おまけに謎のエネルギーが働いているせいで、いちごのスピードは同年代男子のそれを軽く凌駕している。
「さあ、みんな早く!」
「待ってー!」
いちごはようやく入手したものをテーブルに並べて賞味しはじめる。
フランスのマシュマロのギモーヴ、スプーンで取り分けるボックスケーキ、はやりのグラススイーツのヴェリーヌなどをぺろりと平らげる。
「・・あれ、どうしたのみんな?」
四人は肩で息をしていた。
「・・・天野さんはほんと、スイーツのお店に関しては詳しいね」
「だって、小遣いのほとんどスイーツにつぎ込んでたから!そういや、計画性がないってママに怒られたっけ・・・」
「あはは・・・」
「・・・あっ!あれ、好きー!」
いちごはまた駆けて行く。四人はまた追跡を続行するのだったが、体力も集中力ももう限界だ。
気がつけば、樹はクレープ屋の側で肩で息をして立ち止まっていた。
「は、早すぎ・・・」
「ほんと、あのエネルギーはいったいどこから・・・」
花房と安堂もその近くで辛そうに立ち止まっている。樫野の姿はない。
「あら、樫野は?」
「ほんとだ、ひとりで天野さん追いかけていったみたい」
「なかなかやるじゃない?」
何となくいちごを樫野に任せた気になった三人は、ワゴンでカフェオレを入手して一服してからそれとなく辺りを窺って歩くことにした。
「あの二人って仲良かったかしら」
樹はふとドーナツのワゴンを横目に口を開いた。
そういえば、ある人と自分の関係について考えたことはあっても、ある人とある人との関係を気にしたことはあまり無かった気がする。どちらも身近な人なのに。
花房と安堂は、なぜか目配せしあうと交互に喋った。
「うん、樫野は天野さんのこと放っておけない感じはあるよね」
「いちごちゃんも、樫野に文句いいながらも一番頼りにしてる感じするよね」
「そう・・・」
樹は首を傾げながら息を漏らす。
相変わらず、なんだかんだで自分は人間関係的には遅れている気がする。
「あ、樫野から電話」
ふと安堂が携帯を耳に当てた。うんうんと相づちを打っている。
「天野さん見つけたって。適当に店見とけばって」
「そうね、そうする?」
「僕はさっき見かけたローズティーの店に行きたいな」
「あ、じゃあ僕も和菓子屋探していいかな」
「じゃ、そういうことで」
樹は安堂から携帯を奪って、通話を切った。
建物の全てに全国の有名なスイーツの店が入っていて、若い女性やカップルが手に何かしら美味しそうなものを持ってぞろぞろと歩いている。
地図を見ながら計画を練ろうとしていると、突然いちごの悲鳴が聞こえた。
「どうした、天野!」
事件の発生かなにかかと思って四人は振り返ったが、いちごはショーウインドウに釘付けになっているだけだった。
「エクレアで有名な『リュパン』が入ってるー!東京に一店しかないのよー
!」
四人は思わず肩の力を抜きかけたが、いちごの暴走は止まらない。思いのままに足を進めてはにっこりしている店員の前でも構わずに嬌声をあげはじめる。
「きゃー!チョコレートの『ジョン・ポール・エルレ』!わーっ、こっちは『マロニエ』よ!絶品モンブラン食べなくちゃ!」
いちごの描く軌道はきわめて不規則で、追跡には困難を要した。おまけに謎のエネルギーが働いているせいで、いちごのスピードは同年代男子のそれを軽く凌駕している。
「さあ、みんな早く!」
「待ってー!」
いちごはようやく入手したものをテーブルに並べて賞味しはじめる。
フランスのマシュマロのギモーヴ、スプーンで取り分けるボックスケーキ、はやりのグラススイーツのヴェリーヌなどをぺろりと平らげる。
「・・あれ、どうしたのみんな?」
四人は肩で息をしていた。
「・・・天野さんはほんと、スイーツのお店に関しては詳しいね」
「だって、小遣いのほとんどスイーツにつぎ込んでたから!そういや、計画性がないってママに怒られたっけ・・・」
「あはは・・・」
「・・・あっ!あれ、好きー!」
いちごはまた駆けて行く。四人はまた追跡を続行するのだったが、体力も集中力ももう限界だ。
気がつけば、樹はクレープ屋の側で肩で息をして立ち止まっていた。
「は、早すぎ・・・」
「ほんと、あのエネルギーはいったいどこから・・・」
花房と安堂もその近くで辛そうに立ち止まっている。樫野の姿はない。
「あら、樫野は?」
「ほんとだ、ひとりで天野さん追いかけていったみたい」
「なかなかやるじゃない?」
何となくいちごを樫野に任せた気になった三人は、ワゴンでカフェオレを入手して一服してからそれとなく辺りを窺って歩くことにした。
「あの二人って仲良かったかしら」
樹はふとドーナツのワゴンを横目に口を開いた。
そういえば、ある人と自分の関係について考えたことはあっても、ある人とある人との関係を気にしたことはあまり無かった気がする。どちらも身近な人なのに。
花房と安堂は、なぜか目配せしあうと交互に喋った。
「うん、樫野は天野さんのこと放っておけない感じはあるよね」
「いちごちゃんも、樫野に文句いいながらも一番頼りにしてる感じするよね」
「そう・・・」
樹は首を傾げながら息を漏らす。
相変わらず、なんだかんだで自分は人間関係的には遅れている気がする。
「あ、樫野から電話」
ふと安堂が携帯を耳に当てた。うんうんと相づちを打っている。
「天野さん見つけたって。適当に店見とけばって」
「そうね、そうする?」
「僕はさっき見かけたローズティーの店に行きたいな」
「あ、じゃあ僕も和菓子屋探していいかな」
「じゃ、そういうことで」
樹は安堂から携帯を奪って、通話を切った。