4話 バラのスイーツ王子
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不良の仲間入りをしてしまったようだ、と樹は早くも後悔していた。授業を途中退出した樹は、その後謝りにいった飴屋先生にくどくどと説教をされた。慎みのある行動をしなさいと言う。またか。今回の件で教師陣からは完全マークをくらったようだ。
ふらふらしている内に湖の畔に着いた樹は腰を下ろして水面を眺めた。辺りの木々が映り込んでなかなか幻想的だ。ついに黄昏組にも仲間入りをした樹の元に誰かがやってきた。
「また何かやったみたいだね」
「・・・アリス」
どこからともなく現れた典型的なエプロンドレス姿の少女にも、さして驚きはしなかった。アリスの登場はいつも突然だからだ。いつも放課後、人気のない場所にしか現れない。
「早いとこフォローしといた方がいいよ?」
「でしょうね。私、絶対悪くないのに」
「すねないの。ここらで他の三人とも仲良くしときなよ」
「それって樫野も入ってるわけ」
「当然。ていうか、樹もちょっとは悪いんだから、きっちり謝っちゃいなよ」
「あんた、たまに母親みたいなこと言うわね」
「もう・・・」
アリスは息をつきながら樹の隣に腰を下ろした。
「いい?スイーツは楽しい気持ちで作らなきゃダメだよ。グループ内がギスギスしてたらいいものなんて作れないよ」
「ギスギス、ねえ」
「うわ、分かってない。あんた、ずっと三人に競り合うようにして実習やってるでしょ」
またもやこれは的を射た読みだった。樹は押し黙る。
「初めてスイーツを作った時を思い出してみなよ。その気持ちが一番大事なんだよ」
「初めてって・・・何年前よ」
樹は記憶を辿るも、おばあちゃんのことを思い出すと少し寂しくなった。アリスが言うところによると、スイーツを初めて作る時というのはワクワクに満ちているらしいのだが、ワクワクという感覚があまり理解できない。お菓子作りは習慣として樹に染み付いていた。
「無理」
樹は少し首をひねって考えてみたが一言はっきりそう言った。
「ゆっくり思い出すといいよ。とにかく、今は目先の問題を片付けちゃいなよ」
アリスはその様子に笑みを浮かべると、対岸を指差した。いちごと花房が実習室の方向へ勢いよく駆けていくところだった。
「きっと悪い子じゃないよ。行ってきな」
「それぐらいは分かってるわよ」
樹は立ち上がると、軽くスカートのお尻をはらった。
「まあ、行ってこようかしらね」
「頑張ってね」
「ええ」
樹は実習室めがけて走り出した。途中で思い出したように振り返る。
「ありがとう———って、いないし」
アリスの姿は、現れたときと同様に、突然消えてしまっていたのだった。
ふらふらしている内に湖の畔に着いた樹は腰を下ろして水面を眺めた。辺りの木々が映り込んでなかなか幻想的だ。ついに黄昏組にも仲間入りをした樹の元に誰かがやってきた。
「また何かやったみたいだね」
「・・・アリス」
どこからともなく現れた典型的なエプロンドレス姿の少女にも、さして驚きはしなかった。アリスの登場はいつも突然だからだ。いつも放課後、人気のない場所にしか現れない。
「早いとこフォローしといた方がいいよ?」
「でしょうね。私、絶対悪くないのに」
「すねないの。ここらで他の三人とも仲良くしときなよ」
「それって樫野も入ってるわけ」
「当然。ていうか、樹もちょっとは悪いんだから、きっちり謝っちゃいなよ」
「あんた、たまに母親みたいなこと言うわね」
「もう・・・」
アリスは息をつきながら樹の隣に腰を下ろした。
「いい?スイーツは楽しい気持ちで作らなきゃダメだよ。グループ内がギスギスしてたらいいものなんて作れないよ」
「ギスギス、ねえ」
「うわ、分かってない。あんた、ずっと三人に競り合うようにして実習やってるでしょ」
またもやこれは的を射た読みだった。樹は押し黙る。
「初めてスイーツを作った時を思い出してみなよ。その気持ちが一番大事なんだよ」
「初めてって・・・何年前よ」
樹は記憶を辿るも、おばあちゃんのことを思い出すと少し寂しくなった。アリスが言うところによると、スイーツを初めて作る時というのはワクワクに満ちているらしいのだが、ワクワクという感覚があまり理解できない。お菓子作りは習慣として樹に染み付いていた。
「無理」
樹は少し首をひねって考えてみたが一言はっきりそう言った。
「ゆっくり思い出すといいよ。とにかく、今は目先の問題を片付けちゃいなよ」
アリスはその様子に笑みを浮かべると、対岸を指差した。いちごと花房が実習室の方向へ勢いよく駆けていくところだった。
「きっと悪い子じゃないよ。行ってきな」
「それぐらいは分かってるわよ」
樹は立ち上がると、軽くスカートのお尻をはらった。
「まあ、行ってこようかしらね」
「頑張ってね」
「ええ」
樹は実習室めがけて走り出した。途中で思い出したように振り返る。
「ありがとう———って、いないし」
アリスの姿は、現れたときと同様に、突然消えてしまっていたのだった。