22話 世界を繋ぐ絆
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三位決定戦当日、樹は憮然とした表情で、ルミと飴屋先生の間に座っていた。先生は今回は審査に参加しないらしい。
「何を作るか、樹ちゃんも聞いてへんの?」
「ええ、追い出されたもの。吐かせる気にもなれなかったし」
「樹ちゃんが問いつめたら、何でも言っちゃうよね・・・」
「どういう意味」
そんなことを話しながら作業をはじめたいちごの方を見ると、クレープを焼いているらしい。安堂は生クリームを作っているし、樫野はマジパン、花房はチョコプレートと三位決定戦の割に行動がシンプルすぎる。
「隣はごっついの作っとるのに・・・いちごちゃん達、何やっとるんや?」
「あ、なんかみんなでマジパンやってる・・・」
不安そうに見守る中、作業は終了した。対戦相手のチーム小早川は、豪華な作品を披露する。
「土台になるケーキは四人で協力して、あとの部分にはマカロン、サヴァラン、シュー、トリュフと四人が一番得意なスイーツを組み合わせました!」
オリジナル作品らしく、ケーキの範囲にとどまらない迫力を誇っている。まさに集大成のようだ。
「四人の力を合わせなければ完成しない、チームの絆で作ったデコレーションケーキです!」
「なるほど!ここまで来れたのは、チーム四人の絆の賜物、というわけですね」
理事長先生は満足そうに微笑む。続いていちご達のケーキの評価に移り、一目見てかわいらしいとまた頬を緩めた。
「あのミルクレープの上のマジパン、どんな形してるんや?」
遠くからはよく見えず、ルミ達は必死に目を凝らす。
「このケーキは、みんなの絆なんです!」
「ほほう、絆ですか・・・」
「樹さん」
「・・・美和?」
樹は後ろから肩を叩かれて振り向いた。美和が双眼鏡を手渡してくれる。樹はこれ幸いとそれを使っていちごたちのケーキを確認した。
「・・・っ!」
樹は思わず目を大きく見開いた。
ミルクレープの上のマジパン人形。
バニラとショコラとキャラメルとカフェ、それにもう一人、自分らしき女の子がいたのだ。
「な、何やってんのよあいつら・・・」
「ミルクレープはあたし、生クリームは安堂くん、チョコプレートは花房くん、そしてマジパンは樫野くん!どれも飴屋先生に一度叱られて作り方を覚えました」
樹が先生に双眼鏡を手渡すと、先生はのぞいてから嬉しそうに声をあげた。
「うん・・・みんな合格だわ」
「ここまで勝ち進めたのは、俺たち四人だけの力じゃありません」
「僕たちを取り巻くいろんな人たちの絆・・・」
「特に、僕たちを指導してくれた担任の飴屋先生の力に助けられました」
「そのお礼の気持ちを込めて・・・チームいちご、みんな絆で作ったミルクレープです!」
いちご達が観客席の方を向くので、飴屋先生は思わず涙を溢れさせた。
「みんな・・・」
「おおーーーーっ!」
ミルクレープに込められた思いに、観客がどっと沸く。理事長先生もよく分かりましたとにこやかに頷いた。
「ところで、このマジパンは女の子が五人・・・みなさんとは違うみたいですな」
「これは、あたし達をいつも励ましてくれる大切な友達です!」
そういって、いちご達は一度スピリッツ達の方に振り返ってから、観客席の樹の方に目を向けた。
花房がこちらを遠慮なく指差した。
「一人だけ、あっちにいます!」
「馬鹿、指差さないでよ!」
一身に注目を浴びた樹は照れているのか真っ赤になりながら、うっすらと涙をにじませていた。それに気づいて四人は笑う。
「おやおや、東堂さんでしたか・・・なるほどそっくりですね。・・・どうです?たまにはこっちに来て得点を見るのは」
理事長が観客席の樹にそういうので樹は焦った。
「・・・はっ?えっ、私・・・」
「東堂!折角だから降りてこい」
「そうだよ!」
周りもはやし立てはじめるので樹は戸惑いながらも目を拭って立ち上がる。
「東堂さん、あなたもみんなと同じようにとても成長したわ」
飴屋先生が、言った。樹は目を瞬かせる。
「私、何も・・・」
「あなたは編入してしばらくの間は誰ともうまくやっていけなくてずっと一人で怒ったような顔をしていたけれど、いつの間にかこんなに素敵な仲間を作って、楽しい学校生活がおくれるようになったのね」
優しい声に、樹は思わず息を飲む。
技術だけならトップクラスで編入してきた自分のことなんて、先生は大して気にも留めていないと思っていた。
見ていたのだ、先生は。
「・・・合格ですか?」
樹は胸を詰まらせながら小さく尋ねた。
先生は少し驚いたような顔をしたが可笑しそうに笑って頷いた。
樹はこんな先生になりたい、と唐突に感じた。
「行って来なさい」
先生に背中を押されて階段を下りていく。
四方八方から視線が刺さる。
不思議と暖かい空間だった。
こんな風に注目されるのなんて初めてだ。
「・・・なんかもう、本当に馬鹿なんじゃないかって思うわ」
樹は四人の横に並ぶと呆れたように言う。
四人は悪戯が成功した小さな子どものように笑った。
チーム小早川はその様子に肩をすくめる。もう負けは確実だが、なんだか気分がいい。
みんなの目の前で、電光掲示板はチームいちごの勝利を宣言した。会場は拍手に包まれる。
「けっこう、ここっていい気分ね」
「緊張しないの?」
「みんながいるから」
その言葉に、いちごは思わず樹に抱きつく。
「『私たちの勝ち』ってことね!」
樹は会場の熱気を身体中に感じながら、満面の笑みでそう言った。
「何を作るか、樹ちゃんも聞いてへんの?」
「ええ、追い出されたもの。吐かせる気にもなれなかったし」
「樹ちゃんが問いつめたら、何でも言っちゃうよね・・・」
「どういう意味」
そんなことを話しながら作業をはじめたいちごの方を見ると、クレープを焼いているらしい。安堂は生クリームを作っているし、樫野はマジパン、花房はチョコプレートと三位決定戦の割に行動がシンプルすぎる。
「隣はごっついの作っとるのに・・・いちごちゃん達、何やっとるんや?」
「あ、なんかみんなでマジパンやってる・・・」
不安そうに見守る中、作業は終了した。対戦相手のチーム小早川は、豪華な作品を披露する。
「土台になるケーキは四人で協力して、あとの部分にはマカロン、サヴァラン、シュー、トリュフと四人が一番得意なスイーツを組み合わせました!」
オリジナル作品らしく、ケーキの範囲にとどまらない迫力を誇っている。まさに集大成のようだ。
「四人の力を合わせなければ完成しない、チームの絆で作ったデコレーションケーキです!」
「なるほど!ここまで来れたのは、チーム四人の絆の賜物、というわけですね」
理事長先生は満足そうに微笑む。続いていちご達のケーキの評価に移り、一目見てかわいらしいとまた頬を緩めた。
「あのミルクレープの上のマジパン、どんな形してるんや?」
遠くからはよく見えず、ルミ達は必死に目を凝らす。
「このケーキは、みんなの絆なんです!」
「ほほう、絆ですか・・・」
「樹さん」
「・・・美和?」
樹は後ろから肩を叩かれて振り向いた。美和が双眼鏡を手渡してくれる。樹はこれ幸いとそれを使っていちごたちのケーキを確認した。
「・・・っ!」
樹は思わず目を大きく見開いた。
ミルクレープの上のマジパン人形。
バニラとショコラとキャラメルとカフェ、それにもう一人、自分らしき女の子がいたのだ。
「な、何やってんのよあいつら・・・」
「ミルクレープはあたし、生クリームは安堂くん、チョコプレートは花房くん、そしてマジパンは樫野くん!どれも飴屋先生に一度叱られて作り方を覚えました」
樹が先生に双眼鏡を手渡すと、先生はのぞいてから嬉しそうに声をあげた。
「うん・・・みんな合格だわ」
「ここまで勝ち進めたのは、俺たち四人だけの力じゃありません」
「僕たちを取り巻くいろんな人たちの絆・・・」
「特に、僕たちを指導してくれた担任の飴屋先生の力に助けられました」
「そのお礼の気持ちを込めて・・・チームいちご、みんな絆で作ったミルクレープです!」
いちご達が観客席の方を向くので、飴屋先生は思わず涙を溢れさせた。
「みんな・・・」
「おおーーーーっ!」
ミルクレープに込められた思いに、観客がどっと沸く。理事長先生もよく分かりましたとにこやかに頷いた。
「ところで、このマジパンは女の子が五人・・・みなさんとは違うみたいですな」
「これは、あたし達をいつも励ましてくれる大切な友達です!」
そういって、いちご達は一度スピリッツ達の方に振り返ってから、観客席の樹の方に目を向けた。
花房がこちらを遠慮なく指差した。
「一人だけ、あっちにいます!」
「馬鹿、指差さないでよ!」
一身に注目を浴びた樹は照れているのか真っ赤になりながら、うっすらと涙をにじませていた。それに気づいて四人は笑う。
「おやおや、東堂さんでしたか・・・なるほどそっくりですね。・・・どうです?たまにはこっちに来て得点を見るのは」
理事長が観客席の樹にそういうので樹は焦った。
「・・・はっ?えっ、私・・・」
「東堂!折角だから降りてこい」
「そうだよ!」
周りもはやし立てはじめるので樹は戸惑いながらも目を拭って立ち上がる。
「東堂さん、あなたもみんなと同じようにとても成長したわ」
飴屋先生が、言った。樹は目を瞬かせる。
「私、何も・・・」
「あなたは編入してしばらくの間は誰ともうまくやっていけなくてずっと一人で怒ったような顔をしていたけれど、いつの間にかこんなに素敵な仲間を作って、楽しい学校生活がおくれるようになったのね」
優しい声に、樹は思わず息を飲む。
技術だけならトップクラスで編入してきた自分のことなんて、先生は大して気にも留めていないと思っていた。
見ていたのだ、先生は。
「・・・合格ですか?」
樹は胸を詰まらせながら小さく尋ねた。
先生は少し驚いたような顔をしたが可笑しそうに笑って頷いた。
樹はこんな先生になりたい、と唐突に感じた。
「行って来なさい」
先生に背中を押されて階段を下りていく。
四方八方から視線が刺さる。
不思議と暖かい空間だった。
こんな風に注目されるのなんて初めてだ。
「・・・なんかもう、本当に馬鹿なんじゃないかって思うわ」
樹は四人の横に並ぶと呆れたように言う。
四人は悪戯が成功した小さな子どものように笑った。
チーム小早川はその様子に肩をすくめる。もう負けは確実だが、なんだか気分がいい。
みんなの目の前で、電光掲示板はチームいちごの勝利を宣言した。会場は拍手に包まれる。
「けっこう、ここっていい気分ね」
「緊張しないの?」
「みんながいるから」
その言葉に、いちごは思わず樹に抱きつく。
「『私たちの勝ち』ってことね!」
樹は会場の熱気を身体中に感じながら、満面の笑みでそう言った。