22話 世界を繋ぐ絆
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ほどなくして、三位決定戦のテーマ『絆』が発表された。課題は先日の再戦と同じくフリー。いちごはそれが気がかりなのか、実習中も元気が無さそうだ。
見かねたバニラが「言ってみなさい」と申し出ると、いちごは遠慮がちに囁いた。
「・・・絆って、どういう意味かな?」
「お前!悩みってそんなことかよ!」
敏感にその声を聞きつけた四人は、一斉に崩れ落ちた。
「呆れましたわ!」
「絆の意味も知らなかったの?」
「そんなの、小学生レベルですー!」
スピリッツも口々に非難する。樹たち三人はものも言えず黙った。
「そんな、一斉に言わなくても・・・!知らないもんは知らないんだもん!教えてよお!」
いちごは涙ながらに声をあげた。樹は仕方なく噛み砕いて説明する。
「そうね、人と人との結びつきみたいなものかしら」
「友達の絆、家族の絆、愛の絆とか色々あるよね」
「そっか!じゃあ、そのどれかでチャレンジしてみれば!」
「それ、似たようなのがもう全部出たんじゃない」
樹がこれまでの予選のテーマを思い返して指摘する。では、もっと大きい絆のことなのだろう、とみんなは首をひねる。
これは今までで最大級に漠然としたテーマである。ついに腕を組んで考え込む姿勢に入ったとき、ふと樹は手が止まっていることに気づき、目を開いた。
「Aグループ、何してるの!さっきから全然手が動いてないわよ!」
真正面に、飴屋先生がいた。やばい、と五人はすみやかに持ち場に戻る。
「私語のため、作業に大きな遅れ。Aグループ、マイナス20点」
「えっ!?」
厳しい判断に五人は声をあげ、周りもざわついた。
「あの、先生・・・私語ってわけじゃ・・・グランプリの相談をしてて・・・」
「ちょっと、いちご・・・」
「今は授業中です。グランプリのことを話す時間ではありません。全員、放課後私の部屋に来なさい」
「はい・・・」
五人はうなだれて頷いた。
放課後になり、五人は先生に再び頭を下げに行った。先生は授業ではあまりお目にかからないスーツ姿だ。
「グランプリが気になるのは分かります。でも、それで授業に身が入らないようじゃ本末転倒よ」
「はい・・・」
「それで、いったいグランプリの何を相談してたの?」
先生は、いちごに尋ねる。いちごは正直に答えて何とか本戦に勝ち進みたいのだと訴えた。
「・・・それはどうかしらね。授業にも集中できないで、試合に集中できるのかしら?今のままじゃ勝てる試合にも勝てないかもしれないわよ」
「・・・」
全くその通りなので、五人はばつが悪そうに眉をひそめた。先生は、次にふわりと微笑んだ。
一言、言った。
「・・・一度、忘れてみるといいんじゃないかしら」
「忘れる・・・?」
五人は、教室を出てからもその言葉を反芻していた。
忘れるとはどういうことだろうか。
そんなことをしてなんになるのだろうか。
みんなが悩む中、いちごは早々に決断した。素直にその言葉を受け止めて今日から試合までグランプリのことを忘れるのだという。学校でグランプリのことを話すのも、放課後に実習室で練習するのも禁止だと極端なことを宣言した。
「それじゃ、何も準備できないんじゃないの?」
カフェが心配そうにきいた。
「一応、アイデアはみんなで考えることにしてるから・・・」
「それでも、練習無しでぶっつけ本番ですか?けっこう大変ですー・・・」
たしかにキャラメルの言う通りだと樹は思う。
「そこまで極端にすることはないんじゃないかしら」
「だけど、そういえばあたし達、グランプリが始まってからずっと、試合に勝とうって頑張って来たよね。それで、今日みたいに周りが見えなくなってたのかも」
いちごは、樹に微笑んでつらつらと言う。
「だから、少しは息を抜いてみるのもいいかなって」
「チームリーダーがそういうのなら、従うけどね」
「うん!」
「・・・俺は、今が一番力を入れなきゃいけない時のような気がするんだけどな」
樫野はそう言い捨てて先に歩いて行く。樹は先生の言うこともいちごの言うことも理解しがたく、しばらく首をひねっていた。
見かねたバニラが「言ってみなさい」と申し出ると、いちごは遠慮がちに囁いた。
「・・・絆って、どういう意味かな?」
「お前!悩みってそんなことかよ!」
敏感にその声を聞きつけた四人は、一斉に崩れ落ちた。
「呆れましたわ!」
「絆の意味も知らなかったの?」
「そんなの、小学生レベルですー!」
スピリッツも口々に非難する。樹たち三人はものも言えず黙った。
「そんな、一斉に言わなくても・・・!知らないもんは知らないんだもん!教えてよお!」
いちごは涙ながらに声をあげた。樹は仕方なく噛み砕いて説明する。
「そうね、人と人との結びつきみたいなものかしら」
「友達の絆、家族の絆、愛の絆とか色々あるよね」
「そっか!じゃあ、そのどれかでチャレンジしてみれば!」
「それ、似たようなのがもう全部出たんじゃない」
樹がこれまでの予選のテーマを思い返して指摘する。では、もっと大きい絆のことなのだろう、とみんなは首をひねる。
これは今までで最大級に漠然としたテーマである。ついに腕を組んで考え込む姿勢に入ったとき、ふと樹は手が止まっていることに気づき、目を開いた。
「Aグループ、何してるの!さっきから全然手が動いてないわよ!」
真正面に、飴屋先生がいた。やばい、と五人はすみやかに持ち場に戻る。
「私語のため、作業に大きな遅れ。Aグループ、マイナス20点」
「えっ!?」
厳しい判断に五人は声をあげ、周りもざわついた。
「あの、先生・・・私語ってわけじゃ・・・グランプリの相談をしてて・・・」
「ちょっと、いちご・・・」
「今は授業中です。グランプリのことを話す時間ではありません。全員、放課後私の部屋に来なさい」
「はい・・・」
五人はうなだれて頷いた。
放課後になり、五人は先生に再び頭を下げに行った。先生は授業ではあまりお目にかからないスーツ姿だ。
「グランプリが気になるのは分かります。でも、それで授業に身が入らないようじゃ本末転倒よ」
「はい・・・」
「それで、いったいグランプリの何を相談してたの?」
先生は、いちごに尋ねる。いちごは正直に答えて何とか本戦に勝ち進みたいのだと訴えた。
「・・・それはどうかしらね。授業にも集中できないで、試合に集中できるのかしら?今のままじゃ勝てる試合にも勝てないかもしれないわよ」
「・・・」
全くその通りなので、五人はばつが悪そうに眉をひそめた。先生は、次にふわりと微笑んだ。
一言、言った。
「・・・一度、忘れてみるといいんじゃないかしら」
「忘れる・・・?」
五人は、教室を出てからもその言葉を反芻していた。
忘れるとはどういうことだろうか。
そんなことをしてなんになるのだろうか。
みんなが悩む中、いちごは早々に決断した。素直にその言葉を受け止めて今日から試合までグランプリのことを忘れるのだという。学校でグランプリのことを話すのも、放課後に実習室で練習するのも禁止だと極端なことを宣言した。
「それじゃ、何も準備できないんじゃないの?」
カフェが心配そうにきいた。
「一応、アイデアはみんなで考えることにしてるから・・・」
「それでも、練習無しでぶっつけ本番ですか?けっこう大変ですー・・・」
たしかにキャラメルの言う通りだと樹は思う。
「そこまで極端にすることはないんじゃないかしら」
「だけど、そういえばあたし達、グランプリが始まってからずっと、試合に勝とうって頑張って来たよね。それで、今日みたいに周りが見えなくなってたのかも」
いちごは、樹に微笑んでつらつらと言う。
「だから、少しは息を抜いてみるのもいいかなって」
「チームリーダーがそういうのなら、従うけどね」
「うん!」
「・・・俺は、今が一番力を入れなきゃいけない時のような気がするんだけどな」
樫野はそう言い捨てて先に歩いて行く。樹は先生の言うこともいちごの言うことも理解しがたく、しばらく首をひねっていた。