20話 好敵手たち
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「もう一つ謝っときたかったことがある」
「・・・え、何?」
「前にこうやって二人で調理室で話したとき、ひでえ事言った。お前の夢のこと、馬鹿にした。本当は急にマジで話しだしてびびったんだよ。真面目に返すのがなんか恥ずかしかった」
「・・・そんなしょうもないことで馬鹿にされたの?」
「だから悪かったって」
「まあいいけど。あの時の私は今よりもちょっと人としてかけてるものが多かった気がするし。無理ないわ」
「・・・自覚あったのかよ」
「おいコラ」
樹が手近にあったボウルを振りかぶると樫野はまた笑った。
「最初に喧嘩したとき、それ投げてきたんだよな」
「そうね、樫野が正論並べ立てるのがウザくて」
「とんだ逆ギレだよな」
「放っときなさいよ」
最初に会った頃を思い出すとなかなか愉快だった。
あの時は必死だったけれど、今から考えると馬鹿みたいな気がしてくる。
「思えば、樫野をそこまで嫌いになる要素ってなかったのよね。でも何かしらね、対抗心だけは自然と最初から燃え立っていた気がする」
「奇遇だな、俺もだ。まあ、女に張り合ってるってのもなんだと思ってたけど、やばい奴が来たなとは思った」
「そうそう、私もやばい奴がいるなと思った」
二人の口が同時に動く。
「こいつには、負けたくないって」
二人は一瞬きょとんとすると、勢い良く吹き出した。
「はははははは!なに同時に言ってんだよ!」
「あはははは!そっちこそ、いい加減私の真似するのやめなさいよ!何回似てるって言われればいいのよ!」
樹はこれまでにないほど大笑いした。
今までも、樫野はライバルだった。
でも、これからはそれ以前に友達だ。
最高の好敵手だ!
「こうして話せたことを考えると、案外今回は負けてよかったかもしれないわね」
「おい、なに縁起でもないこと言ってんだ」
「三位決定戦、待ってるから。ちゃんと本戦まで行きなさいよね」
「言われなくてもそのつもりだ」
樫野と樹はどちらからともなく拳を突き合わせる。
男女の間ではありがちな、ロマンチックな触れ合い方など、自分たちには似合わない。
もう一度、ニヤリと笑い合った。
樫野は、結局次の日の夕方にすんなり帰って来た。いちごがぱっと明るい表情になったのを見て樹は微笑む。
「樫野!」
いちごは、調理台から歩み寄り声をあげた。すぐに振り返って、樹と花房、安堂と声を合わせる。
「おかえり!」
樹が樫野に紛れもなく心からの笑みを向けたのを、花房は初めて目のあたりにしたのだった。
「・・・え、何?」
「前にこうやって二人で調理室で話したとき、ひでえ事言った。お前の夢のこと、馬鹿にした。本当は急にマジで話しだしてびびったんだよ。真面目に返すのがなんか恥ずかしかった」
「・・・そんなしょうもないことで馬鹿にされたの?」
「だから悪かったって」
「まあいいけど。あの時の私は今よりもちょっと人としてかけてるものが多かった気がするし。無理ないわ」
「・・・自覚あったのかよ」
「おいコラ」
樹が手近にあったボウルを振りかぶると樫野はまた笑った。
「最初に喧嘩したとき、それ投げてきたんだよな」
「そうね、樫野が正論並べ立てるのがウザくて」
「とんだ逆ギレだよな」
「放っときなさいよ」
最初に会った頃を思い出すとなかなか愉快だった。
あの時は必死だったけれど、今から考えると馬鹿みたいな気がしてくる。
「思えば、樫野をそこまで嫌いになる要素ってなかったのよね。でも何かしらね、対抗心だけは自然と最初から燃え立っていた気がする」
「奇遇だな、俺もだ。まあ、女に張り合ってるってのもなんだと思ってたけど、やばい奴が来たなとは思った」
「そうそう、私もやばい奴がいるなと思った」
二人の口が同時に動く。
「こいつには、負けたくないって」
二人は一瞬きょとんとすると、勢い良く吹き出した。
「はははははは!なに同時に言ってんだよ!」
「あはははは!そっちこそ、いい加減私の真似するのやめなさいよ!何回似てるって言われればいいのよ!」
樹はこれまでにないほど大笑いした。
今までも、樫野はライバルだった。
でも、これからはそれ以前に友達だ。
最高の好敵手だ!
「こうして話せたことを考えると、案外今回は負けてよかったかもしれないわね」
「おい、なに縁起でもないこと言ってんだ」
「三位決定戦、待ってるから。ちゃんと本戦まで行きなさいよね」
「言われなくてもそのつもりだ」
樫野と樹はどちらからともなく拳を突き合わせる。
男女の間ではありがちな、ロマンチックな触れ合い方など、自分たちには似合わない。
もう一度、ニヤリと笑い合った。
樫野は、結局次の日の夕方にすんなり帰って来た。いちごがぱっと明るい表情になったのを見て樹は微笑む。
「樫野!」
いちごは、調理台から歩み寄り声をあげた。すぐに振り返って、樹と花房、安堂と声を合わせる。
「おかえり!」
樹が樫野に紛れもなく心からの笑みを向けたのを、花房は初めて目のあたりにしたのだった。