頑固な主人公
白い鳥(短編)
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「プレイヤー……っ」
零夜は白い鳥に手を伸ばしたまま目を覚ます。
動悸と眩暈が襲っていて、零夜はすぐにベッドに横になると腕で顔を覆った。
(夢……)
荒い息を付きながら、零夜は落ち着くまでベッドで横になっていたのだった。
もう一度目を覚ますと、最初目を覚ました時から随分時間が経っていて、
また寝てしまっていたようだった。
(気持ち、悪い……)
体調は最悪だ。
その時部屋にノックの音が響いた。
「零夜……いる?」
プレイヤーの声だった。「いるよ」と答えると部屋の扉が開き、続いて足音が近づいてきた。
「なんだい?」
「いつまでも起きてこなかったから、気になって……顔色悪いけど、大丈夫?」
「……大丈夫」
なら、いいけど。とプレイヤーは言った。
「……嘘、大丈夫じゃない。……悪いけど今日は休ませてもらうよ」
「了解。何か欲しいものある?」
「欲しくない」
彼女は、一人で大丈夫か、とか病院どうする、とか色々聞いて来てくれた。
零夜にとって体調不良は良くある事なので、
おそらくいつものだ、と伝えると、プレイヤーは分かってくれたようだった。
「じゃあ、わたし戻るね。なんかあったら言って
……ってわたしに何かできるかと言えばそんな事は無いと思うけど」
そういって、彼女は部屋を出ようとする。
「プレイヤー」
と零夜はプレイヤーを呼び止めていた。
「……できればもう少し、ここに居てくれないかい?」
「え? うん、いいけど。何をしたらいい?」
「僕が、もう一度眠るまで居てくれればそれでいい」
プレイヤーは不思議そうな顔で、ひとまず頷いたようだった。
本当は目覚めた時にそこに居てくれるのが一番良いが、そこまで彼女に臨むわけにも行かない。
あの白い鳥の結末は、もう記憶は殆ど擦り切れていて途中までしか知らない。
自分が最後に見たのは、土砂降りの雨の中をたった一羽で飛びつづける白い鳥の姿だ、
その先でその鳥がどうなったかまで。
(ああ、君は……最期には美しい場所にたどり着けたのかい?)
雨の中で落ちて息絶えた白い鳥の姿が事実か幻想か、目の奥に浮かんだ。
――雪に星に記憶に、きみのあしあとさがす
どうかとわのやすらぎ、ここは夢のとちゅうで――……
歌うのが好きで、飛ぶのが苦手な小さな白い鳥の歌が、夢の向こうの方で聞えた気がした。
「……!」
深い微睡から意識が浮上すると、大分楽になったが重い頭痛が続いていた。
(参ったな……今日は一日ベッドの上か)
カーテンが閉まったままの薄暗い部屋に、
誰かの寝息が聞こえた気がしてまさかと思った零夜は部屋を見まわす。
「……君は、全く……」
プレイヤーは零夜のベッドの下で寝てしまっていた。
ちゃんと生きているようで、ゆっくり胸が上下している。
「白い鳥は食べられやすいんだよ……?」
零夜は俯くたびに感じる頭痛とわずかな吐き気を感じながら、プレイヤーの体を揺すった。
「……ん」
「プレイヤー、なにもそこで寝なくても良いじゃないか」
「わっ……ごめん。昨日晩遅かったから、寝落ちしてたっぽい……」
体調が整わないので、ため息をつくと零夜はまたベッドに寝転がる。
それを見た時のプレイヤーの心配そうな顔。
「動くのが辛いなら、ペットボトルに飲み物入れて持ってきておこうか」
「……あぁ」
じゃあ、持ってくるね。とプレイヤーは部屋を出て行くと、程なくしてプレイヤーは戻って来る。
「お茶しかなかったけど、大丈夫だった?」
「ありがとう」
プレイヤーはベッドの横にある台にペットボトルを置いたので、零夜はその手を取る。
「……君、僕のものにならないかい?」
「ならないよ」
とプレイヤーは仕方なさそうな顔で少し笑った。
しかし抵抗を見せなかったため、そのまま手を頬の所まで持ってくる。
「どうしても?」
「そんなに欲しい?」
「もちろん」
「そんな顔しても、あげないよ」
それを聞いて零夜は苦笑する。
「連れないな」
「残念だね」
「いいよ、今日はこれくらいにしておく」
続いて、一応彼女は大丈夫か、と重ねて聞いて来たが。
随分ましになっていたので、大丈夫だ、と伝えると彼女は部屋を出て行ったのだった。
(君が、僕のものになるまでに。食べられなければいいけど)
白い鳥は食べられやすい、その美しさをまわりに隠すことが難しいためだ。
「プレイヤー、君は奇妙な人だね」
end.
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