頑固な主人公
白い鳥(短編)
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零夜は寝る前に、リビングに向かった。水を飲もうと思ったからだ。もう時計は深夜2時を回っていた。
誰も居ない暗い筈の部屋がぼんやり明るくて興味があったのでリビングにそのまま入る。
部屋がぼんやり明るい理由は今日が満月だからだ、ソファの上に誰かが座っていた。
「……プレイヤー?」
その声に反応してプレイヤーは振り向く。
「零夜?」
「こんな夜中に何をしているんだい」
「えぇと、満月だったから……」
カーテンは完全に開かれていて、ベランダに何か置いているのに気が付いた。
「……あぁ、パワーストーンの浄化をやっているんだね」
プレイヤーは一瞬気まずそうな顔をして、諦めたように言った。
「…………うん、そう」
「なに、隠さなくてもいい。今日は牡牛座の満月だ、君に足りないものだね」
「う……、流石によく知ってるね。零夜は」
分かりやすいプレイヤーの行動だった。
彼女の数奇な運命を背負った星々に足りない、所有欲と安堵の力。
「僕はMMMの首脳だからね、君の事はしっかり調べ上げているよ。
けれど君が星の動きまで読んでいるなんて情報は持っていなかったから、
その情報はいただいておこう」
「……どうぞ」
静かな部屋に二人、満月の明るい光が窓の影を作る。
「……君は、どうして僕のところに来てくれないんだい?」
「唐突だな……そんなふうに言われると申し訳なくなってくるよ」
「これだけ僕の話に理解を示してくれたのは君が初めてだよ」
「……うん」
「僕の話聞いてるのかい?」
「うん、うん。聞いてるよ……ごめん」
プレイヤーは曖昧に答える。
「気が向かない?」
「気が向かない、と言うか……」
「何かやらなければ行けない事があるのかい? そうじゃないなら、僕は君に来て欲しい」
「……」
彼女は束の間黙ると、小さい声でごめんと呟いた。
「……まあ、君がとても頑固な事は良く知っているけれど。
少し考えてほしい、僕は何千年かかっても平気だ」
プレイヤーがいくら誘ってもこちらに来ないだろうと言うことは何となく分かっていた事ではあった。
「そのころには流石の零夜も居ないんじゃない?」
「……つれないな、君は。たとえ、この世界線の君がずっと着いて来てくれなくても。
いくつもの世界線を辿って、またプレイヤーを探しに行くから覚悟しておいて」
「それ、ストーカーじゃん」
とプレイヤーがどこか挑戦的に笑うのを見て、零夜も笑った。
「……さて、どちらが先に折れるかな」