プレイヤーに縁談の話が来たようです(中編)
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結局、ヒーロー達が監視している中での今回の食事会は事件が起こることもなく終了する。
その間もプレイヤーは常に男性から一定の距離を保ったまま歩いていたが。
気を許していないのがすぐに分かる距離だ。
『今日、どうだった?』
零夜がつけてくれた発信器にはマイクも着いていて、
遮るものや、距離が遠すぎなければ会話も聞こえる。
『……え、えぇと』
「プレイヤー嫌そうだぜ……」
「……だねぇ」
「これって、他のメンバーにも聞こえてんのか?」
「多分ね。この感じだと、むしろアダムが暴走しないか気になってくるよ」
「短気だもんなぁ、戦場では」
プレイヤーは僅かに近寄る男性から、少し逃げるように距離をとる。
(あの距離でも嫌なんだ……)
『会った時から、かわいいと思っていたんだ』
『……』
プレイヤーは礼も言わない。
「もう少し近づくよ、アタリ君」
「え、ちょ……」
『僕は今日楽しかったな、もし君に、その気があるなら……』
プレイヤーはもう、腰が引けている様子だった。
(嫌なら無理するなって、言ったのに……)
『だめかな?』
『っ……、ご、ごめんなさいっ……』
『僕には君も楽しそうに見えたんだけど、気のせいだった?』
『き、気のせいじゃ、なかったかもしれないですけど……』
『なら、どうして? 少しでもそう思ってくれたなら、僕と……』
『ごめんなさいっ……』
『僕は真剣なんだ、僕と結婚を前提に……』
『っ……』
男性がつめた分だけ、プレイヤーは下がる。
「しつけーな、嫌って言ってるのに……」
『なにが嫌なのか、教えて欲しい』
『ッ……』
プレイヤーが後ろに下がると、同じだけ男性も距離を詰める。
「プレイヤーさんそろそろ限界だよ、多分」
「行くのか?」
「準備はしておく」
昨晩のプレイヤーのパニック症状を思い出してマルコスは身を乗り出す。
『なら、最後に一度だけ』
と、男性はプレイヤーに向かって腕を広げた。
『嫌です、来ないでください……!』
プレイヤーが声をあげると同時に、マルコスはプレイヤーの方へ向かう。すると、
向こうから見覚えのある影、アダムのようだ。プレイヤーは後ろに下がって身を縮める。
男性はやや前に進むが。プレイヤーは男性に背中を向けて逃げようとすると、男性が追いかけた。
「マルコスさん……!」
「わかってるよ……!」
マルコスがプレイヤーの方へ、アダムが男性の方へ向かう。プレイヤーの進行方向にマルコスが向かうと
、周りを見ていなかったプレイヤーは正面からマルコスにぶつかる。
「すいませっ……」
「プレイヤーさん、大丈夫?」
その声で、すぐにプレイヤーはマルコスを認識したようだった。プレイヤーは大人しくなる。
プレイヤーがそのままマルコスの服を掴むが、はっきり震えていた。
パニックを起こしかけているようで、プレイヤーは長い息を何度もつく。
「ふーっ……、ふーっ……」
プレイヤーにこれだけ縋られたのは初めてだが、マルコスは何も言わずにそのままにしておいた。
「誰ですか? 嫌がる女性に詰め寄るような方は」
「プレイヤーさんじゃーん、こんなところで何してたのぉ? もう遅いよ?」
「…………」
「誰だ、あなたたちは」
「学生の時のトモダチだけどぉ?」
「今僕は、彼女と話をしているんだ」
「プレイヤーさんが嫌そうでしたが? 一体なんの話しをされていたのですか?」
「大事な話しだ」
「プレイヤーさん嫌そうだし、もうやめたらぁ?」
マルコスが言うと、その男性はプレイヤーをやや助けを求めるように見た。
「あなたは、付き合っている人はいないっていっていたじゃないですか」
男性が言うと、マルコスの服を握ったプレイヤーの手に力が入りさらに身を縮める。
そいつらは誰なんだ、と男性は言った。
「トモダチって言ったの聞こえなかった?」
「それ以前に、俺たちには、それぞれ心に決めた女性がいますしね、
それでも嫌がる女性に詰め寄るような方はどうかと思います」
結局、プレイヤーの方が話せる状態ではなかったため、男性には引き取ってもらったが。
「ごめん、ふたりとも……。結局はこうなっちゃって……。また逃げちゃって、ごめんなさい……」
「大丈夫ですよ、落ち着いてください」
アダムがプレイヤーの涙を拭う。
「本当、情けなくって……」
「プレイヤー!」
「プレイヤーさん……!」
アタリとソーンが駆け寄ってきて、その後ろから13が歩いてくる。13がまるで保護者だ。
「嫌なことされませんでしたか?」
ソーンがプレイヤーの手をとる。
「え……? うん、大丈夫だよ」
「でも、プレイヤーさんは泣いています」
「プレイヤー、無理すんなよ」
アタリはプレイヤーの顔を覗き込む。
「うん、ありがとう……」
元気のないプレイヤーの声。
「プレイヤー、今日はもう帰ろうぜ」
アタリは務めていつも通りに言う。
「外は冷えますし、戻ったらホットココアを入れますね」
「……うん」
プレイヤーはようやく笑ったのだった。
「なーんかさ、結局子供2人にいいとこ取られた感じあるね……」
向こうで、年少組とプレイヤーが会話しているのが聞こえる。
「1番我慢出来なかったのが大人2人ってなw」
「マルコスさんはともかく、俺はプレイヤー殿の護衛が任務なので、
相手がプレイヤー殿に手を出そうとした時点で、
止めに入ることは何もおかしい話しではないはすですが」
「僕はともかく、っていうのはいらないとおもうなぁ。……でもあの様子をみるなら、
時間をかける必要がありそうだよぉ。プレイヤーさんすごくいやがってたしぃ」
「大将、無理すんな、って言っても聞かねぇだろうがな……」
13の話しを聞いてマルコスは笑う。
「意外とやさしーんだねぇ、さすが元天使様」
「我々は、プレイヤーさんが手を出して来ないだろうと判断したメンバーだったのですね」
「でも13思いっきり肘打ち入れられてたよ」
「プレイヤーさんは、13の事を一度も使った事ないでしょう」
「気にしてんだから言うなよお……、僕ちゃん悲しいから。
でもさぁ、団長さんよ。さっきからプレイヤーって呼んでるの気付いてっか?」
アダムははっとしたように、口に手を持っていく。
「せいぜい気を付けろよ?」
「……そうですね、そうします」
「…………」
プレイヤーさんは、誰にも守ってもらえないのですか?
本当に1人で立ち向かわないといけないんですか?
……なら、僕たちは何のために、ここにいるのですか……?
ソーンの言葉が蘇る。
(なんの、ために……)
気付いたら、この空間に居て、プレイヤーと一緒に戦っている。そんな世界なのだ。
13や零夜は少し特殊なパターンだが、それ以外のヒーロー達は居心地が良いという理由で、
ボイドールに何か言うこともない。
戦うのはヒーローであってプレイヤーが戦うわけではない。ここに連れて来られた理由は、
自分たちを戦わせ、人間の思考データを取るためだ。
それ以外はない。しかしソーンはそれ以外の理由を見出そうとしているのかもしれない。
end.
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