プレイヤーに縁談の話が来たようです(中編)
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(えっと、たしか……)
最寄りの駅の近くで待ち合わせと、プレイヤーにちら、と聞いていたので、
アタリはプレイヤーの姿を探して走っていた。会えれば軽く着けるくらいできる筈だった。
(いた……!)
街路樹の近くプレイヤーらしき人物が時計を見ているのが分かった。
「プレイヤー……! あっ……」
思い切り呼んでしまう。しまった、と思った時には遅かった。
「……!」
プレイヤーはすぐにその声に反応すると振り向いた。その隣で見たことのない男性が振り向いて、
怪訝そうな表情でアタリを見ていた。プレイヤーはじっとこちらを見る。
(しくった……)
どうしよう、思い切り呼んでしまった。その場を離れようかと思ったが
両者立ち止まった時間が長すぎて、引くに引けなくなる。
「……」
諦めてアタリはプレイヤーと男性の方へ向かった。
「アタリ君……?」
「よ、よう、プレイヤー!」
「この子は?」
(やっべぇ……)
なんて、答えればいいんだろう。固まっていた時だ。
「アタリさん!」
聞き覚えのある声で呼ばれて振り向くとソーンだった。
「え、ソーン。なんでここに……」
「それはこっちのセリフですよ。勝手にいなくなるんですから……!」
「え……」
驚きが隠せず固まっていると、ソーンが口パクで何か言う。
(あ、わ、せ、て……ください……?)
目の前の男性は不思議そうな顔をしている。
「今日一緒に本屋に寄ってくれるんでしょう?」
「え? あぁ! そうだった!」
「??」
「あっ、申し遅れました。僕はソーンといいます。
僕たちプレイヤーさんと前同じ習い事してたんですよ、それで久しぶりに見かけて……」
「そうそう、そうなんだよなぁ」
「そうなんですか? プレイヤーさん」
「え、ああはい。そうなんです……、話しが合って、よく話してたんですよ」
プレイヤーも何となしに話しを合わせてくれる。ソーンがアタリの肘をつつくので、
ソーンの方を見るとソーンはどこかに目線を投げ、それを追うと。見覚えのある男性が、
こっちを見ていてすぐに察した。アダムだ。
「ソーン、早く行かないと暗くなるぞ」
なれた様子でアダムが弟を呼ぶ。
「兄が呼んでいるので、戻りますね」
「またなー、プレイヤー」
「うん、じゃあね」
プレイヤーが笑うので、プレイヤーに笑い返すとアタリは手を振ったのだった。
「ソーン、ナイスすぎるだろ!」
「全部兄様とマルコスさんの作戦ですけどね」
えへへ、とソーンが笑う。
「まさか、そのまま思い切り呼んじゃうとは思わなかったなぁ」
「う、ごめん……。マルコスは聞いてたけど、
零夜以外来てたんだな……。プレイヤー、大丈夫かな……」
アダムがくす、と笑った。
「そのために、俺たちが来ているんですよ。
俺はプレイヤー殿の護衛が任務なので。このまま後ろをつけます」
マルコスも、ソーンもそのつもりでいるようだった。
「でもプレイヤーもう見失……」
「13が付けてるよ」
「なんか、悪いことしてる気分だよ……」
「じゃあ無理してこなくていいんだよぉ? アタリ君」
「行くに決まってんだろ」
まもなく13に合流し、その先にはプレイヤーと男性がいる。
怪しまれないようにばらけてプレイヤーを着ける。
「プレイヤー俺たちがつけてんの気付いてっかな」
アタリはマルコスに問う。アタリはなにかやらかしそうだからと、マルコスと一緒に行動する作戦だ。
「あ、おい。誰かプレイヤーにぶつかった」
「そりゃあこれだけ人がいればぶつかりもするでしょー」
黒っぽい制服を着た学生のようだった、ネオングリーンのヘッドフォンとマフラーが目立つ。
かるく謝るそぶりを見せて、その学生はプレイヤーと男性とすれ違うと、
まっすぐマルコスとアタリの方へ歩いて来た。その姿を見た時、誰かに似ていると思ったのだ。
「えっ、零夜!?」
学生の姿をした零夜だった。
「誰だい?」
「いや、誰って。アタリとマルコスだけど」
「あぁ、そういう事か」
は? と首を傾げると零夜はいった。
「この世界線の僕の知り合いだね、どうやらNo.08はよっぽどあのコに肩入れしているらしい」
あぁ、この話し方は……、間違いなく別な世界線の零夜だ。
「多分、あのコこっちを見るよ。No.08があのコの気を引くような服装を選んだからね」
「たしかに、くやしいけど似合ってるぜ……」
「アタリ君、隠れて……!」
マルコスに言われて看板の後ろに隠れると、プレイヤーははっきりマルコスを認識したようだった。
プレイヤーは慌てて視線を外す。
「だ、大丈夫なのかよ?」
「気付いたのがあのコだけなら大丈夫だよ。No.08もそれが目的だろうし、はいこれ」
なにか、小型の機械のようなものを渡されてアタリは反射的に受け取る。
「……今あのコの服に発信器を付けたから、これでまず見失わない。あと、残りの4人の位置だよ」
「全員につけたの?」
「……そうだね、我々は同じ存在でも、得手不得手があるから。
この世界線の僕は君たちやあのコの動きや様子をモニターしているよ」
「すっげぇな、お前ら」
「じゃあ僕はもとの世界線に戻るね。No.08をよろしく」
彼は僅かに笑うと、その場を去って行ったのだった。
「でもマルコスも別にモニターでよかったんじゃないか?」
「ひっどいなぁ。僕だけ置き去りにするつもりだったのぉ?」
「お前より俺の方が足速いぜ」
「僕の枝の方が速いよ。だから常に射程に入れておかないとねー」
常に枝の射程って……、とアタリは呆れて言った。
(怖すぎだろ……)
アタリは覚醒マルコスに数秒でキルされた事を思い出す。捕まったら、本当に5秒経たずにやられる。
アタリだからまだそれくらいで済んだが、これが零夜やらソーンなら運が悪ければ1.5秒だ。
目線の先でプレイヤーが笑う。
「……なんか、大丈夫そうじゃん」
「アタリ君もしかして妬いてる?」
「うっせ、お前はどうなんだよ?」
「僕にはリリカちゃんがいるからねー」
「そうかよ……」