プレイヤーに縁談の話が来たようです(中編)
お名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「めっちゃ怒ってたね、味方ルチ……」
アリーナの帰り、プレイヤーとマルコスに先ほどの試合について話していた。
特別クソプレイを晒したわけではないが、味方零夜がルチアーノに2陣を譲らなかったために、
ルチアーノが開幕Cに向かう事になって、それから空気が悪い試合になったのだ。
結果ルチアーノのデキレが物凄く高かった為に、勝利したのだが。
「マルコスで1陣触っちゃったからかな……」
「それもあるかもだけど」
「ごめんルチアーノ……」
「C行きたくなければ1陣で一緒に溜めればいいと思うけどね。零夜くん一人でC防衛は厳しいと思うし。
そもそもあれだけデキレあればCとられたって取り返す余裕あったと思うけど」
隣のプレイヤーを見下ろす、プレイヤーはいつもより少し距離をとって歩いていた。
いつもなら本当に腕を動かせばすぐ触れられるくらいの距離だったのだが。
(もうちょっと近づいてくれないかなぁ)
何故か妙に距離を感じて、なんとも言えない気分になる。プレイヤーはやや目線を落として歩いていた。
「あれ、プレイヤーさん前」
「……まえ? ぁうっ……!」
ばんっ、とプレイヤーが柱にぶつかる。
(え、嘘でしょ……)
「なんでぶつかったの、今……」
「痛い……」
心配というか、むしろ衝撃を受ける。まさかぶつかると思わなかった。顔面からいったようなので、
鼻をぶつけ涙目になっているプレイヤーを助け起こそうとしたところだった。
「っ……」
プレイヤーがその手を見て身を引いた。
「……?」
「だ、大丈夫です」
「そぉ? ならいいけど」
プレイヤーは自分で立ち上がると、少し離れて歩き始める。
(プレイヤーさん……?)
その後もいつもなら大体アタリやマルコスとぴったりくっついて、リビングでソファに座っているのに、
今はソファの肘掛けに凭れスマホを弄っていた。それくらいなら、
そこまで気にする事もなかったのだが。プレイヤーが立ち上がって冷蔵庫の方へ向かう。
「よぉ、大将! フルークはでたのかよ?」
13が、プレイヤーの後ろからいつものように肩を組んだ時だった。
「ッ……!」
プレイヤーは瞬間的に拳を握ると、13の腹に肘を打ち付ける。
「ぐはっ!」
(え……)
腰の入った見事な肘打ちだった。
「た、大将……、きっついぜ今の……。ソーンとか零夜だったら溶けてるわ……」
プレイヤーは13から距離を取った。
「……」
「そんなに怒るなって、カワイイ顔台無しだぜ?」
13が近寄るとプレイヤーは同じだけ後ろに下がってしまう。
「大将?」
「来ないで……!」
プレイヤーの大きな声に、流石の13も黙った。
「……プレイヤー? どうしたんだよ、おまえ最近変だぜ?」
アタリもプレイヤーの様子が最近おかしい事に気づいていたようだった。
「なんか、あったか?」
アタリがプレイヤーに問うが、彼女は答えなかった。
「……なんかゴメン、空気悪くなっちゃった」
プレイヤーは自分の腕をさすりながら、やや俯いて言った。
「いや、いいけど……。俺に解決できるかは分かんねぇけど、
なんかあったなら相談乗るぜ? マルコスもいるし」
「僕なんだ……」
「うん……」
プレイヤーは曖昧に答えるが結局部屋を出て行ってしまう。
それを見送ってアタリが言った。
「プレイヤー……どうしたのかなぁ。なんか様子おかしいのは明白なのに、何も言ってくれない」
「アダムとかソーンにも聞いてみたけど誰にも、何も言ってないみたいだねぇ」
「零夜は?」
「あーいつマルコスよりさらに引きこもりだからなぁ」
がちゃとドアが開く音、入ってきたのは。
「零夜! おまえ、いいところに!」
「アタリ……、プレイヤーをみていないかい?」
「え、あぁ。さっき部屋に戻っちまったよ、零夜に聞きたいことあんだけど……」
「……あぁ、その事」
「何か知ってるの?」
プレイヤーの様子がおかしい、という事について何か知っていないか問うたのだが。
「僕も、気になっていたんだ。最近プレイヤーの接続領域が乱れていて、
チャネリングが上手くいかないし、この間強い拒絶を受けてね、
プレイヤーの領域で変なものが見えたんだ」
「変なもの……?」
零夜はその時受け取ったものの事を話してくれた、
ぼんやりしていて、感覚的にしか伝えられないようだったが。
「なんでもいいから、教えてくれよ」
零夜はゆっくり思い出すように言った。
「個室、困惑、恐怖、悪寒、男性の声に生暖かい手……君たちはこれで何を見る?」
アタリは首を傾げ、マルコスはやや察して零夜を見ると、13が言った。
「いや、そんなのセクハラとかだろ」
「13、未成年いるからね」
「アタリ君はわかんねぇって!」
13は適当に言ったようだが、アタリはそれなりにショックを受けたような表情をしていて、
全く分からない様子ではなかった。
しかし、それならプレイヤーがヒーローたちに何も言わなかった理由も納得が行った。
今プレイヤーの周りにいるのは、男性ヒーローのみだ。
「それで、よく僕たちと一緒にいてくれるよね」
「マルコスー、お前いらんところで鈍いな。アダムは陛下がいるし、マルコスにはリリカがいるし、
アタリくんはアタリくんだし。ソーンはまだ子供だし……で、俺はこれだ」
彼女からの一番の拒絶を毎回受けているのは13のみだ。
「零夜は知らねぇけどな」
「……僕もそれくらいの常識はあるよ」
零夜がややむっとした様子で答えた。
「何を基準にした常識だよwwいい顔してる奴ほど何考えてるかわかんねぇってな」
13がにやにやしながら言うと、零夜は13を睨む。
「僕は、プレイヤーにそんな事はしない」
「どーだか、男の理性なんて脆いもんだぜ?」
「もういいよ、やめろよ……。今はそんな話してるんじゃない」
アタリが沈んだ声で言った。その様子がかなしそうで、零夜は話を改める。
「今までその情報が接続領域にあがって来ることは今まで無かったんだけど。何かあったのかい?」
「……多分、縁談の話があるからだろうねぇ」
「縁談……? プレイヤーに?」
マルコスはようやくプレイヤーの様子の変化に合点が行く。
「仮に、プレイヤーさんがようやくその事を考えなくなってきていたとしても、縁談の話が来て。
見ず知らずの男の人と二人で食事とか、そりゃあ思い出しもするだろうし、
アダムとなら行っても良いって言ったのは、プレイヤーさんの護衛任務を受けているアダムに
守って貰おうとしたんじゃないの?
プレイヤーさんもこのままだとだめな事何となく分かってるだろうし」
「けどまぁ、仮に信頼してた男に急にそんな事されたっていうなら、
そう簡単に男性不信が治るわけ無いだろうけどな」
自分たちではプレイヤーの相手になれない事はその場にいるヒーローたちは百も承知の事だった。
「まったく、かわいそうな女だよ。大将は」
「じゃあ、俺たちにできる事なんて……」
アタリが不安そうに言った。
「……いつも通りにする事くらいかなぁ」
「プレイヤー、行くのかな、お見合い……」
アタリは行って欲しく無さそうだった。
(そうだよねぇ……)
マルコスだって行って欲しくはない、零夜の話を聞く限り尚更。
(プレイヤーさん……)