プレイヤーに縁談の話が来たようです(中編)
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いつものように、リビングでだらだらしていた時だ。急にプレイヤーのスマホが鳴った。
「誰からー?」
プレイヤーの横でスマホを弄っていたマルコスが問うた。
「父さん」
ふぅん、とマルコスはそこまでで興味を失ったようにスマホに目線を戻す。
はい、とプレイヤーは電話をとった。
「……どう言う意味? ……だから、それはなんの意味があって、紹介したいって言ってるの?
……は? わたしその日仕事なんだけど」
なんとなく不穏な空気を感じて、リビングにいたヒーローたちの意識もプレイヤーの方へ向く。
「…………、……わたし、行くとは言ってないんだけど。
それはいつまでに返事しないといけないの? 今日?」
「……? なんだプレイヤーのやつ、モメてんのか……?」
「さあ……?」
「…………、ただご飯食べるだけならいいけど。
……あんまり行きたくはない。……わかった」
プレイヤーは電話を切ると手を下ろした。
「……なんの電話だったんですか?」
ソーンが問う。
「……ちょっとね」
プレイヤーはめったな事で言葉を濁したりしないのだが。
プレイヤーはスマホを持った手を下ろしたまま、何か考えるようにテレビの方を見るが、
やがて立ち上がると自分の部屋に引っ込んだ。
……それを見て、アタリがソファに座ったマルコスに詰める。
「超、気にならねぇ?」
「……たしかに、プレイヤーさんいつもあんな反応しないもんねぇ。ソーンに対して言葉濁すとか」
「……何か、考え込んでもいるようでしたね」
アダムも顎に手を持っていって考える仕草をした。
「……聞きに行くか?」
アタリが首を傾げながら言う。
「うーん、微妙……」
「イレギュラーな話だったのでしょうね、いつもと様子が全然違いましたから」
結局、少し様子を見るか、と言う話になったのだった。
次の日の同じくらいの時間だった。プレイヤーのスマホが鳴ったのでプレイヤーは誰からか確認する。
彼女はそれを見て、部屋を出て行った。
「昨日と同じ電話か……?」
「そうっぽいねぇ」
何分か経って電話が終わったのか、プレイヤーはリビングに戻ってくると、
水だけ飲んでまた部屋を出て行く。
「行っちゃいました……」
「……俺、少し聞いてきてみます」
「よっ、勇者!」
「さっすが、アダム」
アタリとマルコスを見てアダムは苦笑する。
「顔色を見てからですよ、あまり聞かれたくない内容かもしれないので……」
「も、もし聞き出せたら。僕にも教えてください、兄様!」
「それは内容によるな」
「プレイヤー殿」
「うわっ……」
自室に戻る途中のプレイヤーにアダムが声をかけるとプレイヤーが驚いた声を上げた。
「あ、すいません。驚かせてしまったようで」
「ううん、大丈夫。なんですか?」
「……あぁ、昨日の電話からプレイヤー殿の様子が変だったので。……なにかあったのですか?」
あー、とプレイヤーは目線をやや泳がせる。
「……大したことじゃないよ」
(……大したことだから、そうなっているんでしょう……)
プレイヤーがこんなふうに言葉を濁すなんて、今まで無かったのに。
プレイヤーはアダムの顔を少し見たが、直ぐに目を逸らす。
(だめか……)
これ以上は聞き出すのをやめよう、そう思った時だ。
「……ただ、ちょっと。親の知り合いの息子さんから縁談の話しが来てるだけ」
(縁談……)
つまり、お見合いの話と言うことだ。
「……というか、まあ。そこまでじゃなくても、ご飯だけでも食べに行かないかって」
その話しをするだけでプレイヤーの顔色がはっきり曇る。それを考えると、
自分の手元からプレイヤーがいなくなるかもしれない事に複雑な気分になりながら、プレイヤーを見た。
「……行くんですか?」
「……」
プレイヤーは一瞬アダムの方を向いて、目を逸らした。
そんな仕草をされてしまうと。行かせたくなくなる。
「行きたくないなら行かなくてもいいとは思いますが」
「……そう、なんだけどね。考え中……、正直あんまり行きたく無いけど、
行ったらもしかしたら楽しいかもしれない、とか思う」
それでも、行く、と答えられない理由があるようだ。プレイヤーはまたアダムを見た。
「……アダムと一緒なら……いいんだけどね」
とプレイヤーが苦笑した。
「私などが一緒にいっては、縁談ではなくなるのでは?」
「そうなんすよね……。……わたし、そんなに様子変だった?」
「いつもとはあきらかに様子が違いましたから……」
「そっか」
いつもの元気がない事も、明白だ。
「プレイヤー殿……、なにか行きたくない理由があるのなら、相談に乗りますよ。
解決策が見つかるかもしれないですし」
「……ううん、いいよ。ありがとう」
「プレイヤー殿……」
「……で、なんだったんだよ。聞き出せたのか?」
部屋に戻るとアタリが早速聞いてきた。
「えぇ、はい……まあ」
「兄様?」
「なんだよー、お前もプレイヤーみたいに微妙な反応しやがって。聞かせろよ!」
「プレイヤーさんにだめって言われた?」
マルコスが問うとアダムは首を振った。
「いえ……、そんなことは無いのですが」
アダムはプレイヤーにとくに口止めされた訳でも無いし、
場合によっては言っておかないといけない内容と考え、口を開いた。
「……プレイヤー殿に縁談の話が来ているそうです」
「ぇっ……」
「縁談?」
マルコスは口を閉じたが、ソーンとアタリは首を傾げた。
「……要するに、お見合いの話ですよ」
「お見合いって……、プレイヤーお嫁に行っちゃうのか⁉︎」
「そんな……」
ソーンとアタリがその気になってしまっているので、アダムが訂正しようとした時だ。
「いーやいや、よっぽど俺らとつるんでるより健全だと思うけどな」
13が言った。その事をなんとなく理解しているヒーローたちは、口を閉じる。
「プレイヤーが普通の女としての幸せを手に入れるかもしれない。
それを止める権利は……まぁ、俺たちにゃ皆無に等しいだろ」
「…………」
「……そうか、そうだよな」
アタリが寂しそうに呟いた。
「プレイヤーさんはなんて?」
「本人は決めあぐねているようです」
「行くか行かないか?」
「はい」
自分たちが介入できる話ではないようだ。
「俺と一緒なら行くと言っていましたよ」
「それ意味ないやつだよ」
そうなんですけどね、とアダムは苦笑したのだった。
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