ただの、何でもない一日(短編)
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平日だったが、丁度昼時だったためフードコート近くは人が多い。フィギュアも無事手に入れて、
もうここで昼ご飯を食べてしまおうと言う事になった。
マックにしよう、と思って並ぶとマルコスも同じように並ぶ。
「マックにするの?」
「うん」
プレイヤーはマルコスを見上げてくる。
「なになに? いつもと違う僕にドキッとした?」
「あ、いや。なんか新鮮だなーと思って」
「なんだぁ」
「なんだぁってなんだよ」
プレイヤーが苦笑する。やがて順番が近づいてマルコスは横から声をかける。
「なににするのぉ?」
「ハッピーセット」
「おもちゃ?」
「イーブイが可愛いの……」
今のハッピーセットのオマケはポケモンのおもちゃだ、
普通のセットにくらべると量も少し少なくなるし安いと言う事で
たまにプレイヤーはハッピーセットで頼むのだ。
「ただ、くじっていうね……」
「最近はハッピーセットもガチャなんだ……」
注文して横にずれて待つ。
「はい、この箱に手を入れてくださいね」
プレイヤーは箱に手をいれて、適当に一つ選び出す。袋を開けると茶色い耳が見えた。
「イーブイじゃん……!」
「やったぁ、かわいいー」
一発で引き当てたプレイヤーの表情は明るく、嬉しそうだ。そのままそこで待っていると、
家族連れがプレイヤーと同じハッピーセットで頼むのが見え、女の子も箱に手を入れた。
袋から出てきたのは黄色い耳。
(ピカチュウか……)
その女の子はピカチュウを引いたようだ。近くに居たお母さんが笑う。
「ピカチュウ、かわいいね」
「やだ! イーブイがいい!!」
「くじだから仕方ないよ」
「やだあー……! イーブイ!」
(あぁ……ドンマイ)
袋を開けてしまっては交換が効かない。
「イーブイぃぃ!」
「また今度こよう?」
「やだぁ! さっきのお姉さんと同じイーブイがいいの!!」
ついに泣き出した女の子にお母さんが困り果てている様子が見えた。
「くじだもんねぇ……」
「うん……」
仕方がない。
「イーブイがいいの!! イーブイ!」
「くじだからどうしようもないんだ、泣くな!」
お父さんが叱るとさらに女の子は泣きだしてしまう。
マルコスがスタッフから受け取った盆を受け取り、プレイヤーに声を掛けようとした時だ。
「プレイヤーさ……」
「あの、すいません……」
プレイヤーがその家族に声を掛ける。
「わたしのイーブイと交換します?」
「えっ? いいんですか……??」
お母さんが驚いた顔で言った。
(渡しちゃうんだ……)
マルコスも驚きの気持ちでプレイヤーを見る。
イーブイが欲しかったって言っていたんじゃないのか。
「本当!?」
女の子がプレイヤーを見上げて言った。その子の両親はどうしようか、と顔を見合わせるが。
「……じゃあ、交換してもらってもいいですか?」
「はい。……じゃあピカチュウと交換しよっか。イーブイ可愛がってあげてね」
「うん!」
「ありがとうは?」
お母さんが女の子に言う。
「ありがとう」
「はい、どういたしまして」
プレイヤーは笑ったのだった。
「イーブイ可愛がってあげてねって……未練たらたらじゃん……」
席について昼食を食べながらマルコスが言う。
「どうせ、2,3日後に忘れられて、ほったらかしにされるの目に見えてると思うけどな……」
「そういう事言わない」
「イーブイ欲しかったんじゃないの?」
「そうだけど、いいの! あのままギャン泣きされると親はブチ切れるかもしれないし、
それで上からさらに叱られたらかわいそうじゃん」
「ふぅん」
もぐもぐチーズバーガーを頬張るプレイヤーを見てマルコスは笑う。
「……? 何で笑った? 今」
「プレイヤーさんは優しいねぇ。えらいえらい」
マルコスはプレイヤーの頭を撫でる。
「……」
あれ、黙っちゃったな。と思いながらさらに頭をぐしゃぐしゃにする。
「…………」
「プレイヤーさん?」
「ごめん、反応の仕方が分からなくって……」
「ふつうでいいんだよぉ?」
「普通ってなんやねん」
(あー……でも、そうだなぁ)
零夜の言うとおり“プレイヤーは近づくと逃げる”と言っていたが、
確かにこちらから行くと困惑する事が多いようだ。
むぅ、と思いながらプレイヤーの頭に手は乗せたままで。
「ちょ、ちょっと。はなして……」
「え? そう?」
すんなり離すとプレイヤーはどこか物足りなさそうな顔。
「もう一回?」
「いりません」
(分かりやすいなぁ)
ややつん、としてプレイヤーは言う。もっと撫でて欲しいならそう言えばいいのに、マルコスは苦笑したのだった。
end.
ただの、何でもない普通の日。
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