Afterimage d'automne(中編)
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「うっそ雨じゃん……ついてねぇな、マジで……!」
買い物を済ませて外に出ると雨が降っていた。
「雨に文句言っても仕方ないぜ? 大将」
「そうですけど……」
徒歩で駅まで行ったため、雨の中を傘なしで帰らないといけない。
「それなりに降ってるんですけど?」
「傘買うか?」
「いやそのまま帰るわ、お金ないし……」
結局傘を購入せずに店の外に出る。
「冷てぇ……っ」
「これは……べしょべしょになるなァ」
プレイヤーはパーカーを被って、小走りで帰り道を急ぐ。まあまあ振っているので服に染みてきて冷たい。
夏だったらいいのだが、もう最近は夜になると肌寒いくらいだ。
「ちょっと、信号……! 冷たいんだけどっ」
完全に赤だし、ここは時差式信号なので長い。プレイヤーが信号に文句を言う。
「おら、着てろ」
「なっ……」
13は自分の着ていた上着をプレイヤーに被せる。
「ちょっと……! サティずぶぬれになるよ」
「お前が風邪引いたら俺がニートとか騎士とか首脳とかに殺される、それに俺風邪引かねぇし(←嘘)」
「そうなの? 天使ってすごいね!」
(馬鹿でよかった……)
建物に着くころにはプレイヤーは多少13の上着で多少大丈夫だったようだが、
13は見事にずぶぬれだった。
(冷てぇ……)
服は体に張り付いて、髪から雨がしたたり落ちる。
「サティ、ずぶぬれ……! 大丈夫?」
「いいから、さっさとお前はシャワー浴びてこい。風邪引くぞ」
「サティの方がべしょべしょだよ……!」
「いいって、言って……」
プレイヤーはいそいそ部屋に上がると、まもなくして戻って来てタオルを13の頭から被せる。
「おいおい……、俺は風邪ひかないって言ったろ。
俺の事はいいから、シャワー浴びてバイトの準備でもしやがれ」
「うん……」
「サティ、なんで着替えてないの?」
「おう、なんで俺が怒られてんだ?」
プレイヤーがシャワーを浴びて風呂から出てくると、開口一番そのような事を言われた。
「どうせ風呂入るし……」
「そういう問題じゃないです、寒いでしょ?」
「大した事ねぇ」
なぜかよく分からないが、プレイヤーは怒っているらしい。
「早く風呂行ってこい……!」
ぐいぐいプレイヤーに背中を押されて、13は重い体を動かし、風呂場に向かうのだった。
(寝てやがる……)
風呂から出ると、プレイヤーはソファの上で寝ていた。どれくらい寝れば気が済むのだろう。
13は仕方なくプレイヤーに声をかける。
「おい、プレイヤー。バイト行くんだろ。起きろ」
プレイヤーは呻いて目を開ける。
「……今何時?」
「4時40分」
「やだぁー」
とプレイヤーは近くにあったクッションを抱いて丸くなる。
「めんどくせぇな! お前」
「うう……」
とか言いながらプレイヤーは諦めて13の方に寝返りをうつと、何故か手を伸ばしてくる。
「起こして?」
「はぁ? 甘えんなガキ」
言うとプレイヤーが少しむすっ、とした様子で見た。
「かわいくねぇ」
「かわいくなくて結構。てかわたしガキじゃないよ? サティのその言い方は人を馬鹿にする時の言い方」
プレイヤーは確かにもう成人しているが、行動がいちいち他の同世代の人間に比べると幼稚だ。
「馬鹿にしてっからな」
「っかー、ムカつくわぁ」
「ムカつく奴で結構だ」
「…………」
「ちっ……、おら起きろ」
13は仕方なくプレイヤーの腕を掴んで無理矢理体を引きずり起こす。
その細い腕を折ってしまわないように手加減をして。
「満足かよ?」
「うん」
言葉通りプレイヤーはどこか満足気な顔をして頷いた。
まもなく立ち上がると、バイトの準備に向かうのだった。
13は無意識にプレイヤーの姿を目で追っているのに気づき、視線を外す。
「……ふぅ」
なんか今日は疲れた気がして13は息を付いた。
「じゃあ行ってくるね」
「おー」
プレイヤーが部屋を出て行くと、部屋の中は静かになり。少し暗くなった気すらする。
(……やめてくれよ)
その嬉しそうな顔、怒った顔、心配そうな顔、満足そうな顔。
その全ての表情をプレイヤーに向けて欲しくない。
(俺、なんかに。そんなもの見せなくていい)
落ちて汚れた自分には、素直で、明るくて、無邪気で優しいプレイヤーは美しすぎる。