その優しさに(前編、後編)
夢小説設定
「……ん」
プレイヤーはぼんやりと目を開けた、体は完全にベッドに沈んでいて、あまり動く気にならない。
「プレイヤー……?」
アタリの見た目以上に優しい声だ、声の聞こえたほうを見ると。
彼は青い目でこちらを心配そうに見ていた。
(アタリくんだ……)
小さい声で彼の名前を呟くと、すぐに寄ってきてくれた。本当に優しい子だなと思う。
殆どの人が本来なら忘れていく優しさだ。
その存在に、こちらがどれだけ救われているか彼は知っているのだろうか。
「……おう、まだ辛いか?」
「……あんまり、動きたくない」
心配してくれているのが痛いくらい分かる。
「なんか、いる……?」
「ううん」
ゆっくり答えると彼は「そか」と言った。
「俺ここでいるから、なんか欲しいものとかあったら行ってくれよ」
「うん……」
「プレイヤー……」
「うん……?」
「元気ない……」
すぐそばでアタリが心配そうな声で言う。
「……ちょっと休んだら、大丈夫」
声を出すというのは意外と体力のいるものだ。一緒に元気をなくしてしまうのが、申し訳ない。
その少しの会話でも疲れてしまって、プレイヤーはため息をついた。
(アタリくん……そんな顔しないで……)
彼は一緒に辛そうな顔をする。
「俺、なんかできる事あるかな……?」
「……」
声を出すのが大儀だが、プレイヤーは体の力を抜いて言った。
「……頭撫でてよ、アタリくん」
彼は「ん」と手を伸ばしてくると、不器用にプレイヤーの頭を撫でてくれる。
「こう……か?」
「……うん、ありがとう」
プレイヤーはそのあと、もう一度眠ったのだった。
次に目を覚ますと、僅かに喉の渇きを感じる。
すぐ横に寝息を感じてそちらを見ると、アタリがベッドに伏せって寝てしまっていた。
(アタリくん……)
そこまでしなくていいのにな、と思いながらアタリの寝顔を眺めていたのだが。
ふいに目が合った、どうやら彼の方も起きたらしい。
「……!」
彼はがばっ、と起き上がって時計を見る。
(4時半……)
プレイヤーも時計を見て今の時間を確認する。まだ眠気が取れず、すぐに目を閉じかけたのだが。
「大丈夫か……?」
「……」
強い眠気で呂律が回らない。
「……タリくん、みず……」
「飲み物か? ちょっと待てよ」
薄暗い部屋にアタリの背中が見える。彼はあらかじめ持ってきておいてくれた水を出してくれたが。
体を動かす気にならない、またすぐに眠ってしまいそうだった。
「プレイヤー……、体起こしてやるよ」
(申し訳ない……)
思いながら体を預けるとアタリはプレイヤーの体を助け起こしてくれる。
むせないようにゆっくり水を飲む。
(あったかい……)
支えてくれているアタリの体は暖かくて、安心する。彼の肩に顎を置くとそのまま凭れた。
「おいちょっと……そのまま寝るなよ」
「うん……」
アタリは自分を無理やりはがすような事はしなかった。
「アタリくん……」
「おう、次はなんだ」
「一緒に、寝よ」
「ぇっ…………。……しゃあねぇな、もう……」
アタリが仕方なさそうな声で言った。
「……今回だけだかんな。その代わり、治ったら俺のゲームの相手しろよ」
「うん……」
「…………」
ぼんやりした声で答えるとアタリがため息をつく。
「……だから、早く元気になってくれよな。俺だって心配するし……」
僅かにアタリがプレイヤーを支える腕に力を入れてくれる。プレイヤーはもう一度返事する。
プレイヤーがゆっくり横になると続いてアタリが布団に入ってくる。
(甘えちゃってごめんね……)
「アタリくん、だいすき……」
「知ってる。いいからさっさと寝ろよ」
プレイヤーはそのまま、アタリのそばで丸くなったのだった。