少し気が小さく、リリカちゃんが苦手なプレイヤーです
きみのいちばん(中編)
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「羽乃、さん……っ」
「……!」
とっさに呼んだプレイヤーの名前。彼女は足を止めると、
少し間があったがプレイヤーはゆっくり振り向いた。
「なあに?」
「ええと……」
返事をしたプレイヤーの声は思いのほか優しかった。
「僕、だって……。君の事、別に嫌いじゃないし、一人で暴走しないでよ」
マルコスは言葉に詰まりながら言った。
「そ、そう、なんだ……」
プレイヤーは目を泳がせながら言った。
「もしかして嫌われてるって思ってた?」
「……、……うん」
プレイヤーは自分の腕を握る仕草をしながら頷いた。でも確かに、今までの自分の態度を思い出せば、
そう思われて仕方ないところもある。
「……本当に嫌いなら、初めから一緒にいないよ。それに、
君はこの僕のプレイヤーでしょ、もっと僕を楽しませてよ」
「が、頑張ります」
「あの、だから……」
マルコスはプレイヤーと同じ普通の人の目線の高さで物事を見たいだけで、
頑張るとかそういう問題でもないのだが。ふう、と息を付いてマルコスは前髪をかきあげた。
(……まぁ、いっか)
プレイヤーの言葉も聞けたし、嫌っていない事も伝えらえたし、
今はこれで充分か。プレイヤーがマルコスを見上げてくる、言葉の続きを待っているようだ。
「なんでもない。じゃー今日はおしまい、もう遅いしまた明日ね」
「……」
プレイヤーはきょとんとした後、笑った。
「うん……っ」
(ぁ……、笑った)
初めてマルコスに見せてくれた表情、周りがふわ、と暖かくなるような笑顔だった。
表情には出さないようにしたものの、ちょっと嬉しかった。
「羽乃さんってさぁ」
「はい?」
次の日のフリーバトルの帰り、お茶のカイと入っていたマルコスと羽乃は、4人一緒に歩いていたのだが。
「……なんでオリジナルマルコスより、僕なの?」
「え?」
お茶がそーだよな、と言った。羽乃は二人の話を聞きながらモニターを宙に表示すると、
ヒーローの一覧ページを見せた。マルコスの欄にはオリジナルはおらず、シーズンの甚平マルコスと黒パーカーのマルコスしかいない。
「姉貴、行き成り黒コスだったのか」
「そうそう! いきなり黒だったから。超嬉しかった」
言葉通り羽乃は嬉しそうに笑う。
「ちなみに最初に見たのもお茶の黒コスだったから。てっきりオリジナルが黒かと思ってた」
「あぁ! そういやそうだったな、なつかしー」
これも初耳だったので、納得の思いだった。むしろ彼女にとってのマルコスは最初から自分だったのだ。
ただの自分の思い込みだったことに、恥ずかしい気分になる。
「オリジナルも可愛いけど、やっぱり黒コスがかっこいいから、
わたしは黒コスの方が好きだな」
と羽乃はマルコスを見て言った。
「あれ、マルコスさん。照れてますか?」
カイがこちらを見て言った。ぎく、と肩を震わせる。
「……ちょっと、だけ……」
「え、……ごめん正直意外だった。まさかあの塩対応がこうなると思わんかった。
そういや呼び方も変わってんの今気づいたわ」
(あ……)
そういえば「羽乃さん」と言う呼び方が無意識だったことにもマルコスは慌てる。
「何かあったんですか?」
とカイが笑う。
「えぇと……この間喧嘩してたというか、何と言うか」
「喧嘩? 喧嘩とかするのな、マルコスも。姉貴は元からすぐ頭に血がのぼるけど」
「うるせぇよ……!」
「そうだよねぇ、超我儘だし?」
「どうせ超我儘です!」
そんなプレイヤーを見ながらお茶とカイが笑う、それにつられてマルコスもようやく笑ったのだった。
end.
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