少し気が小さく、リリカちゃんが苦手なプレイヤーです
きみのいちばん(中編)
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「リリカちゃん! 写真とってください!」
プレイヤーとアリーナへ向かう途中の廊下、マルコスはリリカを見つけて。
どきどきしながら写真をお願いするとリリカは笑顔で快く応じてくれた。
リリカがいる場所はオアシスだ、彼女を見ているだけでこんなにも癒される。
写真を撮って戻ると少し離れた場所で立っていたプレイヤーがちょっと笑う。
「よかったね」
「うん!」
さっき撮ってもらった写真を確認しながら、幸せな気分だ。
「リリカちゃんだったらよかったね」
小さい声でふと、プレイヤーが言った。
「……ぇ?」
「マルコスの隣」
(……!)
「なんかごめんね」
プレイヤーはマルコスの方を見ずに苦笑する。
(そうじゃ、ないのにな)
その言われ方をすると複雑な気分になる。言葉で表せと言われると難しいが、
確かに最初の方は隣がリリカならどんなにすばらしいだろうとも思っていたのも事実である。
しかしリリカと居るときとプレイヤーと居るときでは目的が違うため、
どうして彼女がこの言い方をするのかよく分からない。
「……別に、いいよ」
「リリカのこと、嫌いにならないでね」
リリカの重い一撃だ。一瞬で目の前が暗くなって、気づくとリス地に立っていた。
軽く頭を押さえながらフィールドを見下ろす。
(重、すぎ……)
『マルコス大丈夫……!?』
自陣踏みリリバフだ。すぐにプレイヤーの声が聞こえた。
「痛っ……」
『ごめん、リリバフ見えなかった』
「そうだね、僕も見えなかったよ……」
一応リス地から降りるが、カードが上がっていないし。
1凸はできているが2本目は溜まっておらず、厳しい状況だ。
リリカは高台でマルコスの攻撃は届かず、
味方ガンナー二人がアタッカーに狙われていてカバーしに行かなければならない。
ガンナーと共にアタッカーを倒すものの、もうカードも体力もないマルコスは下がるしかない。
高台でリリカがタイオワを切るのが見えた。
(無、理……)
「ごめんねマルコス君……! 痛かった?」
試合終了後、見事に負けたマルコスが戻ると、先に戻っていたリリカが慌てて走ってきてくれた。
「だ、大丈夫だよ! 気にしないで、リリカちゃんは強いね」
やせ我慢な所はあるが、確かに敵リリカは強かったし。何よりマルコスは嬉しい。
リリカはやや心配そうな表情を作っていたが、微笑むと、「ありがとう」ときれいな声で言った。
(尊い……)
リリカに心配されるなんて、こんな嬉しいことがあるだろうか。胸が痛くなるくらい嬉しい。
「ごめんね、この力はみんなを守るものなのに……」
リリカは物憂げに自身の手を胸の前で握る。
マルコスは恐れ多くも今目の前でリリカが心を痛めていることに対して、
リリカのその小さな手をとった。
「いいんだよ。リリカちゃんはやるべきことをやっただけ。それは味方を守る力なんだよ、
BPもとってたし、本当にすごい事だと思う。リリカちゃんに怪我がなくってよかった」
言うとリリカは一瞬きょとんとして嬉しそうに笑ってくれた。
「ありがとう、マルコス君」
「うん」
「リリカ、がんばるね!」
「うん、ずっと応援してるよ」
マルコスが笑うとリリカは笑い返してくれたのだった。
「うおお……やっべぇ、マルコスかっけぇ……。マルリリてぇてぇ」
その試合を観戦していたプレイヤーの弟が合流してきたのだが。変なテンションで彼は言った。
聞くところ、プレイヤーの弟はリリカとマルコスの大ファンらしく、
さっきの様子を見て我慢できなかったようだ。
「俺でもリリカに負けるとムカつくのに……マルコス最高だぜ!」
あはは、とマルコスは乾いた声で笑う、それだけ褒められると少し照れ臭いくらいだ。
「いやでも、あのリリカ強かったな」
「確かに」
鬼である、というのもあったがアタッカーとの距離感も完璧だし、援護も上手だった。
「あの強さに、あの優しさは反則……。尊い!」
「リリカは最高」
流石にリリカ推しの弟だ、話が楽しい。彼との話が落ち着いてきたくらいだ。
「お茶とマルコスはまだいる? わたしそろそろ戻るけど?」
そのまま話し込んでいたらしい、少し離れた場所で試合のリプレイを確認していたプレイヤーが言った。
「んあ? ああ、どうする。マルコス?」
「うん? どっちでもいいよ」
「まだ入るんか?」
プレイヤーは時計を確認する。
「微妙だな……バイトがあるから……。できれば入りたいけど、入りたくない」
よく今の感情を表現した言葉だと思う。「分かる」とプレイヤーの弟が指をさして言う、
プレイヤーもバイトがあるという事で解散になったのだった。
「え! お前ヒロチケ5枚もあるじゃん!」
プレイヤーがバイトから帰ってきた後、彼女がヒーローチケットをため込んでいるのを見て弟が言った。
「新キャラ来たら困るでしょ」
「引け! 引くんだ! 忠臣来るかもだし」
「フルカノないよ……」
えぇ……といいながら結局プレイヤーは引く事にしたようだった。
自分のプレイヤーがヒーローチケットを引くのがあまり好きでないヒーローも多い。
やって来たヒーローが使いやすければ、そこでもう使ってくれなくなる事も多いのだ。
(リリカちゃん、リリカちゃん……)
とマルコスも心で念じていたのだが。
やって来たのはジャンヌとジャスティスとその他のカラバリのようだった。
「お、美人なお嬢さんだな」
「ジャスティスー、ありがとう。来るの遅かったね」
「俺が来たからには安心してくれ」
ジャスティスが温厚な声で言った。
「私の事は、ただジャンヌとお呼び下さい」
「タンクかー……、姉貴ドアないもんな」
「そうなんです……、ちょっとジャンヌと話してくるね。前からすっごい美人だと思ってたんだ」
そう言ってプレイヤーはジャンヌの方へ向かったのだった。
「リリカじゃなくって残念だったな、マルコス」
と横からアタリが言った。
「カラバリとか、同じヒーローが2回3回出てくるのはだめだよ……」
「これからも僕を使ってくれるんでしょうか……」
不安そうにソーンが言った。
「や、姉貴に限って使わなくなるとかは絶対ねぇよ。ほんっといくら強キャラ進めても、
お前ら以外一切使おうとしないからな。
メグメグとかなら完全にデッキが出来上がるのに、愛玩用だってさ」
「……」
マルコスは、何となくそれを見ながらジャンヌの方へ向かったプレイヤーの方を見る、
プレイヤーは楽しそうに笑っていた。あんなにヒーローチケットを引くのを渋っていたのに。
その変化にマルコスは違和感を感じる。
リリカちゃんだったらよかったのにね、マルコスの隣。
(君、は……)
マルコスは、あの時の言葉と今までのプレイヤーの行動に何か引っかかるものを感じ。IQ340を呪った。