少し気が小さく、リリカちゃんが苦手なプレイヤーです
きみのいちばん(中編)
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随分遅い時間帯だった、もうとうに日付は変わっていたのだが。
ボイドールからプレイヤーへの転送の話が来た。ボイドールの権限は絶対だ、
マルコスはオリジナルマルコスとは違う黒い色のパーカーを被ると、ボイドールの元へ向かうのだった。
カラバリヒーローと言うものは、オリジナルヒーローとは別で、二人目三人目の事が多く、
歓迎されることは少ない印象である。マルコスとしては、
部屋で引きこもってリリカを愛でているだけで充分だったのだが。
(めんどくさ……)
この遅い時間にヒロチケを引くのもちょっと遠慮していただきたいところだ。
まあこっちの気なんて知らないのが普通か。
やがて転送が完了する。目を開くと女性のようだった、パジャマを着ていて見るからに寝る前。
とりあえずマルコスは口を開いた。
「……こんなにカッコいいニート大丈夫かな」
「マル、コス……くん……?」
プレイヤーの反応がとっても妙だった。
「え……えぇ……」
「? なにぃ?」
嫌な反応だ、と心の中で思うが表に出ないようにする。
「き、来てくれて、本当にありがとう……」
「どういたしまして。……僕、寝る時間だから寝ちゃうよ?」
「は、はい。どうぞ……! むしろ遅くにすいませんでした……」
マルコスがこのプレイヤーの領域に来て数か月経った。
それまでずっとプレイヤーに声をかけられる事はなく、快適なニート生活を楽しんでいたのだが。
「あのっ……マルコスくんにお願いがあるんですが……」
ある日急にプレイヤーが部屋に尋ねてきた。
「なに?」
こっちはアニメを見るのに忙しいのだが。
「面倒だったら全然いいんだけど……次のシーズン、一緒に潜りたいなって」
「……」
正直、面倒だった。しかし
(いや、もしかしたらリリカちゃんに会えるかも……)
今のプレイヤーの領域にはまだリリカがいない、しかしシーズンとなれば会える機会が増える可能性がある。
「……分かった」
「え、本当?」
「けど、僕の練習もある程度してからにしてよね。行き成り入るとボコボコにされるのが目に見えてる」
「うん、頑張る」
どうやらプレイヤーはマルコスを扱う自信がなく、離れて暮らしていたマルコス使いの弟に会うまで、
呼ばなかったらしいのだ。シーズンが始まる前にプレイヤーの弟に色々教わりながら練習して、
シーズン当日を迎えたのだが。
「マ、マルコスくん……大丈夫」
「だ、大丈夫って言いたい……」
行き成りシーズン初日の洗礼を受けて7連敗だった。3勝はしないとデイリーすらクリアできない。
まだマルコスのデキレが低いために全鬼が多うえ。
このプレイヤーのアタッカーのセンスは正直言って皆無だった。
「入る……?」
「うん……」
行くんだ……と思いながら、従わざる負えないマルコスはプレイヤーに着いて言ったのだった。
シーズン半ば、相変わらず厳しい試合が続き、ぼこぼこにされ、よくもまぁ心が折れないものだと思う。
(きっつ……)
プレイヤーはどうやらこのシーズンのアリーナを全てマルコスで潜るらしい。
確かに今のプレイヤーの状態では多少強引にでもプレイスキルを上げないと話にならないが。
結果、その試合も完敗だった。
(勝ち確アピ……)
しかもわざわざ3人で一緒に、リス地を見上げて。
(感じ悪……)
『味方強すぎー』
『アタッカー狙う』
『大草原不可避』
『草生えた』
「……」
煽りの対象は間違いなくマルコスだ、確かに今の動きは多分本人も混乱していたのだろうが、
いい動きではない。味方に近距離は撃たれるし、最悪だ。
「ごめん……」
「もういいってば」
戻るとプレイヤーは謝罪を重ねてくる。
「沢山怪我させた……」
「だから、もういいって言ってるでしょ」
さっきの試合は流石にマルコスも堪えてしまって、言い方がきつくなる。
その声でプレイヤーはすぐに委縮してしまう。言いたい事は沢山あるが、
今そのまま全部言ってしまうと不味い、という程度の思考は働く。
「……もう、いいでしょ。今いくら入っても多分無理だと思う」
「……うん……、ごめんね……」
あ、まずい。と思った。多分今ので泣かせた。
気まずくなってマルコスはプレイヤーに別れの挨拶をすると、背を向けたのだった。
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