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【菅玲】お前がそうならいいのに
診断メーカーさんより「恋人同士を演じる」をアンケートで1位になったキャラ、菅野夏樹で書かせてもらいました。
.*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.
「というわけで…玲、俺の恋人になってくれる?」
そういつもより低い声で菅野くんに耳元で囁かれる。
手を掴まれ逃げ場などなく…
「ヒューヒュー!お似合いカップル!」
…逃げ場はないが秀さんは冷やかしに来る。
「はいはい。マトリちゃんで遊ばないの。」
そしていいタイミングでくる耀さん。
菅野くんと芝さんの頭の上に乗せたのはまだ薄めの辞書かなと言うほどの書類。
「ちょっと耀さん!今いい所だったんですけど?!」
「楽しんでる暇があるならこれ今日の夜までにさばけるよねぇ?というわけでよろしくどうぞ。」
「え…この量を夜までに…?鬼かな?無理無理」
「それなら秀介の分追加であげる。ほれ。」
「頑張らせて頂きますのでそれだけはお許しください。」
「…自業自得だろおっさん。」
「うぅ…蒼生ー…手伝ってー…」
「俺には俺の分があるんだから静かにやってくれ。」
絶望の眼差しで書類を見つめる夏樹くんと芝さんがちょっと可哀想に見えてくる…
「はぁ…話、続けますよ。潜入捜査に玲さんが恋人役として入って欲しいんです。」
「は、はぁ…でもまたなんで菅野くんと?」
「たまたまパーティーで護衛を頼まれたのですがそのパーティーにホシも参加するようで。ホシにはコカインを使った殺人や売春の疑いがあるんです。元々裏で繋がってる暴力団を追っていたのですが。彼は女性たちに薬を盛り、意識を朦朧とさせた状態で売るのが手法のようです。貴方なら自分で対処は出来るでしょうが誰かといた方が狙われないかと。相手は一応反社会的勢力の一部ですからね。」
「は、はぁ…」
実際こちらにも話が上がっている。
聴いた限りの話だけでもいい話などない。
「パーティには俺、蒼生、秀さん、夏樹が潜入するつもりです。」
「なるほど…でもなんで菅野くんと…?」
「それはねー秀さんに任せるとこの人何するか分からないから。」
菅野くんは笑顔でサラッと酷いことを言った。
「えー秀さんならマトリちゃんのことをパーティ会場で華麗なエスコートしてあげるよ?」
動じてないかのように秀さんは私の手を取りまるで王子か何かのように跪く。
「だからさ、今からでも夏樹から俺に乗り換えない?マトリちゃん。」
いい笑顔で言われているが書類はもちろんそのままだ。
もちろんそれで耀さんが何も言わないわけはなかった。
「秀介はこっち。パソコンと書類が恋人だからねぇ。」
「え!?やだ!マトリちゃんとランデブーしたいんだよ!!」
「ほーん。それはいつになることやら。」
笑顔で黙らせるとはまさにその事でそのまま秀さんは座らされた。
「アハハー秀さん大変そう。」
菅野くんはまるで自分のことを忘れているかのように横で笑う。
「まぁ秀さんに俺の大事なハニーをとられるのは嫌だしね。」
「え、そのジョークってのったほうがいい?」
「玲、そこはのっかってよー。『そうね、ダーリン』とかって言おうよ!」
「あはは…それは無理かな…」
「で?大体は把握した?マトリちゃん。」
「はい。大丈夫です。」
「飲み込みが早いこと。じゃあそういう訳でよろしくどうぞ。」
耀さんのその一言でまとまりがついて私は一課から離れた。
そして当日…
「あれ?やっぱり緊張してる?」
「き、緊張しないって無理じゃない?」
緊張なんてするに決まってる。
パーティへの潜入捜査なんだ。
いつも通り神楽さんにお手伝いをしてもらい動きやすいドレスとはいえ普段パンツスーツスタイルの人にドレスを慣れろと言われても無理な話。
ふんわりとした紺色のAラインドレスは膝が隠れる位のものでスカートも広がるようになっていて実際動きやすい。
それにアウターもあり無駄な露出は無く、清楚に出来上がっている
でも慣れないドレスにプラスでパーティでの緊張感、そしてある程度のマナーを持っておかないとすぐにバレてしまう。
「少し力抜いていいんだよ?大丈夫。何かあっても俺が守るしね!」
いつもと変わらない笑顔で笑う菅野くん。
設定では恋人同士とはいえそこまで気にしない方がいいのかな…
「ホシ発見しました。今のところは動き無しでーす。」
菅野くんは軽く周りを見て正確に状況を伝えていく。
ホシに動きがあれば朝霧さん、荒木田さんが追跡、制圧してくれるはずだ。
それにこっちには芝さんもいる。
「さて、じゃあ俺たちは恋人っぽく踊ったりしてみる?」
「…っえ?!私踊れないよ?!」
「大丈夫だよ。俺がエスコートするしね!」
自信満々に言っている菅野くん。
でも私は不安しかない。
「どうせ動くまでは俺達も動けないからね。楽しむしかないでしょ。」
「でも離れる訳にも…!」
「大丈夫大丈夫!ほらほら、手、重ねて?」
そう言って菅野くんは私の手をとる。
重ねた手は温かく落ち着く温度だった。
…でも。
手を重ねたということは菅野くんに近づいたということで。
目の前にあるのは明るくカッコイイ菅野くんの整った顔だ。
「どう?緊張は和らいだ?」
そんな顔で言われてもむしろ…
「む、無理だよ…!」
「えー。玲ってばガチガチすぎない?」
パーティだからとか慣れないドレスだからとかそういう緊張はどっかに行ったのにまた違う緊張が来る。
「ほら、後ろに足出して?」
言われるがままに後ろに足を出してそのまま曲に合わせてステップを踏む。
ゆったりとしたバラードは足元を軽くさせステップを手伝うかのように流れていく。
「そ、上手。」
目の前で笑う彼は男の人の顔だ。
いつもの無邪気で子どもっぽくて明るい笑顔ではない。
そのいつもとは違う表情にドキッとして私はつい目をそらす。
すると「なんで目を逸らすの」って下から覗き込むように見られる。
「だって…」
菅野くんがカッコイイからなんて素直に言えるほど私は正直な訳でもない。
その時近くにいたホシが女性に声をかけた。
「こちら菅野。たった今ホシが女性に声掛けました。」
素早くインカムで報告をしたかと思うとできる限りホシの背後に居られるようにステップのまま動いていく。
「ドリンクなんかを勧めてる感じはないねー」
「確かに…別の部屋を用意してる可能性が大幅に上がったね。」
女性の腰に手を回して誘導している。
この会場を抜けるつもりだ。
「蒼生さん。A出入口から出るつもりです。」
小さく聞こえた了解という声。
「さて、俺達も合流するよ。」
そう言って来たのはもちろんVIPルーム。
途中で荒木田さんと合流してその部屋の前で待機する。
『1分後に突撃ね。ほんじゃよろしくどーぞ。』
という軽い指示が出され
「でも警備手薄だね~」
暴力団員らしき人もいなければスタッフもいない。
もちろんスタッフには掛け合っていて防犯カメラの状況は服部さんが把握している。
「…中にいるかもしれねーだろ。」
「そうですね…まだ軽く見ることは出来ません。」
小さく頷きあって服部さんからの指示を待つ。
『ほいじゃ、3…』
カウントダウンが始まると同時に緊張感が襲ってくる。
『2…』
拳銃を強く握りしめて突撃の用意をする。
『1…突撃。』
シンプルな突撃の合図と同時にドアを開く。
「警視庁捜査一課。全員手に持ってる物置いて手を上げて。」
「っ…!はぁ?!」
菅野くんのいつもより低い声とホシの驚愕する声が部屋に響く。
部屋にいたのはホシと女性、それから暴力団員らしき人が2人。
あるのは白い粉…コカインであろうものと注射器だ。
注射器の中は空。
ベッドに寝かされた女性は意識が朦朧としていて起きたことは容易く分かる。
「大人しくこのまま…」
そう言いかけた菅野くんにホシは我を忘れたかのようにナイフを向ける。
「危ない!」
気づいた時には遅く菅野くんの右肩を掠っていた。
そんな傷を気にせずナイフを持った腕を捻りそのまま身柄を拘束。
自分もそんな事を気にしてられるまもなく襲いかかる男を関さん直伝の合気道を駆使して拘束。
「19時31分47秒、身柄を拘束しました。」
業務連絡をした後近くにいたもう1人の暴力団員も荒木田さんが拘束。
時間でいえばだが呆気なく拘束をし、身柄を預けられた。
女性は意識は朦朧としているものの命に別状は無く、そのまま病院へ搬送。
そしてパーティーに紛れ込んでいた他の暴力団員も一斉摘発。
パーティー会場は一時騒然としたもののいつの間にか夜の静けさが馴染んでいた。
「あー終わった終わった。」
パーティーから出て芝さん達とも合流をしてひと段落した頃。
「おい、夏樹。」
「ん?なんですか?蒼生さん。」
「腕。無茶な拘束すんな。」
見事といえるくらい一直線にワイシャツの布が裂けていてその間は赤く染まり、見るからに痛そうな傷が出来ている。
「やば、ワイシャツ裂けた。」
「お前な…」
「そ、そうじゃないでしょ!」
私は持っていたハンカチで傷口を強く縛る。
「痛くないからってこんな無理しないでよ…!」
ハンカチにどんどん血が滲んでいき傷がどれくらい酷いのかが、どれだけ痛いのか自分の腕にも似たような感覚が襲う。
「大丈夫だって。これくらいならすぐに治るからさ。」
ありがとうと言って撫でる手は温かいのにそれすらも感じられない。
「お前は痛くなくても周りから見たら痛えんだよ。」
荒木田さんからも心配の声が聞こえる。
「本当だよ…腕でも酷かったら死んじゃうことだってあるんだから…!」
もちろん菅野くんが一番いい方法を選んだことは知っている。。
あの時女性を人質にしてとる可能性だってあった。
そして逃走した場合パーティー会場の方にも被害が及ぶかもしれなかったのだ。
それも知っていた。
でも、自分を犠牲にすることだけはして欲しくなかった。
「大丈夫だって」と言いながら笑う姿をあんまり見たくはない。
何度見てても心の抉られる瞬間だ。
「あはは、俺玲の恋人失格だな~」
私の目元を拭いながら菅野くんは言う。
「恋人ってさ、大事な大事な相手の事泣かせないでしょ?」
辛そうに顔を歪めてまた勝手に流れる涙を拭ってくれる。
「俺はほら、このとおり大丈夫だからもう泣かないで?」
この人はどこまで優しいのか。
「私が、ホントの恋人だったら菅野くんにも怪我して欲しくないよ。痛くなくったって…嫌だ…!」
拙い言葉で伝えた。
菅野くんには…もっと自分を大切にして欲しいと。
「っ…はは。弱ったな~。」
菅野くんは口元を左の手で覆う。
「お前に…玲に心配されるの、ちょっと嬉しいかもしんない。」
笑顔で言う言葉が深く心を抉る。
「…心配するよっ!怪我してるのに無茶苦茶な捕まえ方するし傷のこと気にしないし…!もう…ばか…!」
必死につく悪態も涙声になって上手く言葉にならない。
私だけじゃない。
菅野くんを心配している人なんていくらでもいる。
「ごめんって。もう本当に無茶はしないからさ。多分。」
笑ってる菅野くんがここまで苦しく見えたことは無い。
この人は本当に自分一人で無茶をする。
せめて…私が守られるだけにならないように。
「次は絶対…菅野くんの事守るから!」
「え?」
「怪我なんてして欲しくないからもう少し場数を踏んでちゃんと動けるようにする!」
「…ぷっ…はははっ!」
私が志を立てたところで菅野くんは笑った。
「やっぱお前面白いや。普通そこは逆だろ?」
「え?なんで?」
「守るのは普通男の役目でしょ。でも、お前らしいや。」
私の頭に手をポンっと乗せて優しく撫でてくれる。
「そしたらやっぱり俺怪我しないようにしなきゃなー」
「っ!本当に?!」
「うん。だって玲を守るのは俺の役目だから。守られてちゃ意味ないでしょ?」
ね?と言って笑う姿はいつもの調子に戻った菅野くんだった。
「ほら、もう戻んなきゃでしょ。行こ?」
「そ、それよりも病院!怪我してるんだから!」
忘れてたと笑う菅野くんはそのあと素直に病院に行って何ともないと言われたようだった。
診断メーカーさんより「恋人同士を演じる」をアンケートで1位になったキャラ、菅野夏樹で書かせてもらいました。
.*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.
「というわけで…玲、俺の恋人になってくれる?」
そういつもより低い声で菅野くんに耳元で囁かれる。
手を掴まれ逃げ場などなく…
「ヒューヒュー!お似合いカップル!」
…逃げ場はないが秀さんは冷やかしに来る。
「はいはい。マトリちゃんで遊ばないの。」
そしていいタイミングでくる耀さん。
菅野くんと芝さんの頭の上に乗せたのはまだ薄めの辞書かなと言うほどの書類。
「ちょっと耀さん!今いい所だったんですけど?!」
「楽しんでる暇があるならこれ今日の夜までにさばけるよねぇ?というわけでよろしくどうぞ。」
「え…この量を夜までに…?鬼かな?無理無理」
「それなら秀介の分追加であげる。ほれ。」
「頑張らせて頂きますのでそれだけはお許しください。」
「…自業自得だろおっさん。」
「うぅ…蒼生ー…手伝ってー…」
「俺には俺の分があるんだから静かにやってくれ。」
絶望の眼差しで書類を見つめる夏樹くんと芝さんがちょっと可哀想に見えてくる…
「はぁ…話、続けますよ。潜入捜査に玲さんが恋人役として入って欲しいんです。」
「は、はぁ…でもまたなんで菅野くんと?」
「たまたまパーティーで護衛を頼まれたのですがそのパーティーにホシも参加するようで。ホシにはコカインを使った殺人や売春の疑いがあるんです。元々裏で繋がってる暴力団を追っていたのですが。彼は女性たちに薬を盛り、意識を朦朧とさせた状態で売るのが手法のようです。貴方なら自分で対処は出来るでしょうが誰かといた方が狙われないかと。相手は一応反社会的勢力の一部ですからね。」
「は、はぁ…」
実際こちらにも話が上がっている。
聴いた限りの話だけでもいい話などない。
「パーティには俺、蒼生、秀さん、夏樹が潜入するつもりです。」
「なるほど…でもなんで菅野くんと…?」
「それはねー秀さんに任せるとこの人何するか分からないから。」
菅野くんは笑顔でサラッと酷いことを言った。
「えー秀さんならマトリちゃんのことをパーティ会場で華麗なエスコートしてあげるよ?」
動じてないかのように秀さんは私の手を取りまるで王子か何かのように跪く。
「だからさ、今からでも夏樹から俺に乗り換えない?マトリちゃん。」
いい笑顔で言われているが書類はもちろんそのままだ。
もちろんそれで耀さんが何も言わないわけはなかった。
「秀介はこっち。パソコンと書類が恋人だからねぇ。」
「え!?やだ!マトリちゃんとランデブーしたいんだよ!!」
「ほーん。それはいつになることやら。」
笑顔で黙らせるとはまさにその事でそのまま秀さんは座らされた。
「アハハー秀さん大変そう。」
菅野くんはまるで自分のことを忘れているかのように横で笑う。
「まぁ秀さんに俺の大事なハニーをとられるのは嫌だしね。」
「え、そのジョークってのったほうがいい?」
「玲、そこはのっかってよー。『そうね、ダーリン』とかって言おうよ!」
「あはは…それは無理かな…」
「で?大体は把握した?マトリちゃん。」
「はい。大丈夫です。」
「飲み込みが早いこと。じゃあそういう訳でよろしくどうぞ。」
耀さんのその一言でまとまりがついて私は一課から離れた。
そして当日…
「あれ?やっぱり緊張してる?」
「き、緊張しないって無理じゃない?」
緊張なんてするに決まってる。
パーティへの潜入捜査なんだ。
いつも通り神楽さんにお手伝いをしてもらい動きやすいドレスとはいえ普段パンツスーツスタイルの人にドレスを慣れろと言われても無理な話。
ふんわりとした紺色のAラインドレスは膝が隠れる位のものでスカートも広がるようになっていて実際動きやすい。
それにアウターもあり無駄な露出は無く、清楚に出来上がっている
でも慣れないドレスにプラスでパーティでの緊張感、そしてある程度のマナーを持っておかないとすぐにバレてしまう。
「少し力抜いていいんだよ?大丈夫。何かあっても俺が守るしね!」
いつもと変わらない笑顔で笑う菅野くん。
設定では恋人同士とはいえそこまで気にしない方がいいのかな…
「ホシ発見しました。今のところは動き無しでーす。」
菅野くんは軽く周りを見て正確に状況を伝えていく。
ホシに動きがあれば朝霧さん、荒木田さんが追跡、制圧してくれるはずだ。
それにこっちには芝さんもいる。
「さて、じゃあ俺たちは恋人っぽく踊ったりしてみる?」
「…っえ?!私踊れないよ?!」
「大丈夫だよ。俺がエスコートするしね!」
自信満々に言っている菅野くん。
でも私は不安しかない。
「どうせ動くまでは俺達も動けないからね。楽しむしかないでしょ。」
「でも離れる訳にも…!」
「大丈夫大丈夫!ほらほら、手、重ねて?」
そう言って菅野くんは私の手をとる。
重ねた手は温かく落ち着く温度だった。
…でも。
手を重ねたということは菅野くんに近づいたということで。
目の前にあるのは明るくカッコイイ菅野くんの整った顔だ。
「どう?緊張は和らいだ?」
そんな顔で言われてもむしろ…
「む、無理だよ…!」
「えー。玲ってばガチガチすぎない?」
パーティだからとか慣れないドレスだからとかそういう緊張はどっかに行ったのにまた違う緊張が来る。
「ほら、後ろに足出して?」
言われるがままに後ろに足を出してそのまま曲に合わせてステップを踏む。
ゆったりとしたバラードは足元を軽くさせステップを手伝うかのように流れていく。
「そ、上手。」
目の前で笑う彼は男の人の顔だ。
いつもの無邪気で子どもっぽくて明るい笑顔ではない。
そのいつもとは違う表情にドキッとして私はつい目をそらす。
すると「なんで目を逸らすの」って下から覗き込むように見られる。
「だって…」
菅野くんがカッコイイからなんて素直に言えるほど私は正直な訳でもない。
その時近くにいたホシが女性に声をかけた。
「こちら菅野。たった今ホシが女性に声掛けました。」
素早くインカムで報告をしたかと思うとできる限りホシの背後に居られるようにステップのまま動いていく。
「ドリンクなんかを勧めてる感じはないねー」
「確かに…別の部屋を用意してる可能性が大幅に上がったね。」
女性の腰に手を回して誘導している。
この会場を抜けるつもりだ。
「蒼生さん。A出入口から出るつもりです。」
小さく聞こえた了解という声。
「さて、俺達も合流するよ。」
そう言って来たのはもちろんVIPルーム。
途中で荒木田さんと合流してその部屋の前で待機する。
『1分後に突撃ね。ほんじゃよろしくどーぞ。』
という軽い指示が出され
「でも警備手薄だね~」
暴力団員らしき人もいなければスタッフもいない。
もちろんスタッフには掛け合っていて防犯カメラの状況は服部さんが把握している。
「…中にいるかもしれねーだろ。」
「そうですね…まだ軽く見ることは出来ません。」
小さく頷きあって服部さんからの指示を待つ。
『ほいじゃ、3…』
カウントダウンが始まると同時に緊張感が襲ってくる。
『2…』
拳銃を強く握りしめて突撃の用意をする。
『1…突撃。』
シンプルな突撃の合図と同時にドアを開く。
「警視庁捜査一課。全員手に持ってる物置いて手を上げて。」
「っ…!はぁ?!」
菅野くんのいつもより低い声とホシの驚愕する声が部屋に響く。
部屋にいたのはホシと女性、それから暴力団員らしき人が2人。
あるのは白い粉…コカインであろうものと注射器だ。
注射器の中は空。
ベッドに寝かされた女性は意識が朦朧としていて起きたことは容易く分かる。
「大人しくこのまま…」
そう言いかけた菅野くんにホシは我を忘れたかのようにナイフを向ける。
「危ない!」
気づいた時には遅く菅野くんの右肩を掠っていた。
そんな傷を気にせずナイフを持った腕を捻りそのまま身柄を拘束。
自分もそんな事を気にしてられるまもなく襲いかかる男を関さん直伝の合気道を駆使して拘束。
「19時31分47秒、身柄を拘束しました。」
業務連絡をした後近くにいたもう1人の暴力団員も荒木田さんが拘束。
時間でいえばだが呆気なく拘束をし、身柄を預けられた。
女性は意識は朦朧としているものの命に別状は無く、そのまま病院へ搬送。
そしてパーティーに紛れ込んでいた他の暴力団員も一斉摘発。
パーティー会場は一時騒然としたもののいつの間にか夜の静けさが馴染んでいた。
「あー終わった終わった。」
パーティーから出て芝さん達とも合流をしてひと段落した頃。
「おい、夏樹。」
「ん?なんですか?蒼生さん。」
「腕。無茶な拘束すんな。」
見事といえるくらい一直線にワイシャツの布が裂けていてその間は赤く染まり、見るからに痛そうな傷が出来ている。
「やば、ワイシャツ裂けた。」
「お前な…」
「そ、そうじゃないでしょ!」
私は持っていたハンカチで傷口を強く縛る。
「痛くないからってこんな無理しないでよ…!」
ハンカチにどんどん血が滲んでいき傷がどれくらい酷いのかが、どれだけ痛いのか自分の腕にも似たような感覚が襲う。
「大丈夫だって。これくらいならすぐに治るからさ。」
ありがとうと言って撫でる手は温かいのにそれすらも感じられない。
「お前は痛くなくても周りから見たら痛えんだよ。」
荒木田さんからも心配の声が聞こえる。
「本当だよ…腕でも酷かったら死んじゃうことだってあるんだから…!」
もちろん菅野くんが一番いい方法を選んだことは知っている。。
あの時女性を人質にしてとる可能性だってあった。
そして逃走した場合パーティー会場の方にも被害が及ぶかもしれなかったのだ。
それも知っていた。
でも、自分を犠牲にすることだけはして欲しくなかった。
「大丈夫だって」と言いながら笑う姿をあんまり見たくはない。
何度見てても心の抉られる瞬間だ。
「あはは、俺玲の恋人失格だな~」
私の目元を拭いながら菅野くんは言う。
「恋人ってさ、大事な大事な相手の事泣かせないでしょ?」
辛そうに顔を歪めてまた勝手に流れる涙を拭ってくれる。
「俺はほら、このとおり大丈夫だからもう泣かないで?」
この人はどこまで優しいのか。
「私が、ホントの恋人だったら菅野くんにも怪我して欲しくないよ。痛くなくったって…嫌だ…!」
拙い言葉で伝えた。
菅野くんには…もっと自分を大切にして欲しいと。
「っ…はは。弱ったな~。」
菅野くんは口元を左の手で覆う。
「お前に…玲に心配されるの、ちょっと嬉しいかもしんない。」
笑顔で言う言葉が深く心を抉る。
「…心配するよっ!怪我してるのに無茶苦茶な捕まえ方するし傷のこと気にしないし…!もう…ばか…!」
必死につく悪態も涙声になって上手く言葉にならない。
私だけじゃない。
菅野くんを心配している人なんていくらでもいる。
「ごめんって。もう本当に無茶はしないからさ。多分。」
笑ってる菅野くんがここまで苦しく見えたことは無い。
この人は本当に自分一人で無茶をする。
せめて…私が守られるだけにならないように。
「次は絶対…菅野くんの事守るから!」
「え?」
「怪我なんてして欲しくないからもう少し場数を踏んでちゃんと動けるようにする!」
「…ぷっ…はははっ!」
私が志を立てたところで菅野くんは笑った。
「やっぱお前面白いや。普通そこは逆だろ?」
「え?なんで?」
「守るのは普通男の役目でしょ。でも、お前らしいや。」
私の頭に手をポンっと乗せて優しく撫でてくれる。
「そしたらやっぱり俺怪我しないようにしなきゃなー」
「っ!本当に?!」
「うん。だって玲を守るのは俺の役目だから。守られてちゃ意味ないでしょ?」
ね?と言って笑う姿はいつもの調子に戻った菅野くんだった。
「ほら、もう戻んなきゃでしょ。行こ?」
「そ、それよりも病院!怪我してるんだから!」
忘れてたと笑う菅野くんはそのあと素直に病院に行って何ともないと言われたようだった。