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【関玲】sweet valentineはマカロンで
.*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.
仕事も少し落ち着いてきた2月……
「そう言えば来週バレンタインだよねー。玲ちゃんなんか用意したりしないの?」
キーボードをカタカタと叩きながら夏目くんは言う。
「すっかり忘れてた。そっか。バレンタインの時期だもんね。」
「女子にとっては最大の楽しみなんじゃないの?」
「確かにね。でも私がそんな女子力あるように見える?」
「見えないね。」
バサッと笑顔で言われた言葉に私は心を抉られる。
「夏目くん…もうちょっと優しい言い方ないの…?」
「玲ちゃん遠回しに言っても気づくじゃん。」
すると青山さんがサラッと会話に混ざってくる。
「なんだ?泉の女子力の話か?」
「女子力があるように見える?って聞かれたから答えただけなんですけどねー。」
「容赦ない言い方だな…夏目。」
「せめて欠片くらいはあると思っておきたいですね…」
「…小さい気配りに関しては女子力あると思うぞ。」
「その言い方だとそれ以外に無いって事ですよね?!」
「ほらやっぱり気づいてる。」
「うっ…」
「それ以外にも僕は泉さんの魅力はあると思いますけどね。」
「泉の魅力と言えばやはり体質だろう。そんなものに惹き付けられたヤツらからは俺が守るから代わりに髄液の…」
「いいえ!結構ですから!」
そして帰ってきた由井さんと今大路さん。
一気に話が混沌と化していく。
バレンタインの話からどうしてこんなにもぶっ飛ぶのか…
「と言うか樹さん逃げなくていいんですか?もう定時になりますけど。」
「え?逃げる?」
「…バレンタイン近くなると質問責めされるから基本は定時で帰ってるんだよ。」
何そのイケメンの悩み…。
でもここの人達って本当に顔がいいからなぁ…正直惹かれるのもわかるかも。
「いっそここの人たち全員玲ちゃんくらいにバレンタイン興味なくなってくれないかなーって思いますよね。」
「夏目くん?!サラッと私を貶さないでよ?!」
そのイケメンな顔でサラッと吐かれる言葉に私は更に心を抉られる。
「だって本当のことじゃん?バレンタインなんか用意してたりするの?」
「私だって多少は用意してるもん!」
実際休憩の時間なんかに色々調べてるし…
正直なところを言えば関さんにちゃんと渡したいけど…他の人からもチョコレートは貰うだろうしな…
「なんか玲ちゃん悩みだしてない?」
それどころか1月末からは現場を押さえたからか関さんはずっと走り回っている。
そんな状態でもここに来る時は仕事の疲れを一切見せないし…私としては心配で仕方ない。
それこそバレンタインなんか楽しんでる程暇ではない。
分かっていても少しくらい仕事の疲れを癒せるなら…って思うけど。
「泉?」
でもどんなことをしたら関さんは喜んでくれるんだろうか…
「泉。」
「関さん、今玲ちゃん自分の世界に入ってますよ。」
後ろを振り向けば考えていた人が目の前に居た。
「わっ!関さん!お疲れ様です!」
「少し前から居たよ?玲ちゃん大丈夫?」
「なら教えてよ!夏目くん!」
「だって自分の世界に入り込んでたし。」
「なんか驚かせたみたいだね。」
「俺もいるよー。」
ひょこっと関さんの後ろから出てきた渡部さん。
「渡部さん、外交官の仕事は落ち着いたんですか?」
「今大路くん痛いところついてくるねー。だいぶ片付いたんだけどまだ終わってないかな。来週はまた飛ばされそうな感じだし?」
「渡部…ならこっちに寄ってる暇無いんじゃないか?」
「ワー関パパ怖いー。」
つい私は苦笑いを浮かべる。
「そうだ、泉。後でこの書類に目を通しておいてくれるか?」
「分かりました。」
「由井はこの鑑定書を頼む。」
「了解です。」
「皆、終わり次第昼休憩を取ってくれ。」
「関さんもちゃんと取ってくださいよー。」
笑いながら言ってるけどきっと心配してるんだろうなって伝わってくる言い方で夏目くんは言った。
「そうだそうだー。関がバタンキューしたら大変なんだからなー。」
「あはは。気をつけるよ。」
軽い言葉で渡部さんも言っていた。
そう言えば渡部さんって関さんと長いんだよね…もしかしたら好きな物とかわかるかも…
後でアドバイス聞いてみるのもありかも…
渡部さんなら選ぶものもいいだろうし…
そう思ってみんなが話で盛り上がってる間に渡部さんに声をかける。
「あの…渡部さん。相談があるのですが…」
「んー?なになに?玲ちゃんが聞いてくるってことは関の事でしょ?喧嘩でもした?」
「い、いえ!喧嘩はしてないですよ!」
「そっかー。で、どうしたの?」
「その…関さんが喜びそうなバレンタインってどんなのだろうなと…」
「あーそっか。バレンタインの時期だもんねー。関の事だし玲ちゃんから貰ったものはなんでも喜びそうだけど。」
ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべながら渡部さんはそういう。
「せっかくなんですから関さんがちゃんと喜ぶ物にしたいじゃないですか。それに…その…チョコレートは他の人から沢山貰ってそうで。」
「ありゃ、嫉妬?」
「そういう訳じゃないですよ。でも同じものじゃ嫌かなと。」
「うーん…玲ちゃんが買ってきた缶ビールひとつでも喜んで惚気けてくる関が玲ちゃんから何を貰っても嫌な顔なんてしないと思うけど。」
「そ、そんなことが…」
「あ、秘密だったのかな。関、ごめん」
カラッと笑いながら聞こえてない関さんに謝ってた。
「でももらう側の男としては愛の篭もった手作りチョコがいちばん良いかな。味が美味しくなくても、どこか焦げてたりしても自分のために作ってくれたって思ったらなんでも美味しく感じるからね。」
「うーん…そんなものなのでしょうか…」
「もし関が頑張って作った料理ならどんなものでも食べるでしょ?」
そう言われて関さんの頑張った姿を想像すると少しにやけてしまう。
「…そうですね。精一杯の女子力を振り絞って手作り頑張ろうと思います!」
「あはは。やる気満々だねー。」
…と言っても…
「どんなのがいいんだろう…」
ここ三日間ほどあんまり人のこない屋上で昼休みを取りながらスマホでレシピを色々検索するけどやっぱり何がいいのか全然わかんない…
「もうあと2日しかないのに…」
レシピを試すどころかどんなのがいいのかさえ決まってない。
「あ…このなるっちです。さんの生チョコすごく美味しそう。ランキングにあるあおぴょんさんのショコラマカロンも美味しそうだし…でもあげるものによって意味があるとか言うし…ちゃんと調べよ。」
ブラウザを開き治して【バレンタイン あげるもの 意味】といれてとりあえずひとつ開く。
「わぁ…色々あるなぁ。キャラメルって安心する存在って意味なんだ…関さんにピッタリかも…でも恋愛とは違うの?こ、細かい…」
マカロンには特別な存在かぁ…でも作るの難しそうかも…さっきの作り方は簡単な方なのかな…。
こういう時はブログであげてる人とかって羨ましくなるな。
こういうのを家で出来る材料で作っちゃうんだから。
うーん…決めた!1年に1回なんだし!気合い入れてマカロン作ってみよう!
まぁ…関さんが意味を知ってるかは分からないけど。
「なに1人で百面相してるんだ?」
「うひゃぁ!?」
唐突に後ろから声をかけてきた青山さんに私は悲鳴をあげる。
「あ、青山さん!驚かせないでくださいよ!」
「悪かったな。驚かせる気は無かったんだが。で?何見てるんだ?すごく集中していたみたいだが。」
「えっと…バレンタインに用意する物を考えているんです。せっかくだから喜んで欲しくて…」
「あげる人いたんだな。」
「失礼なこと言わないでください…」
「悪かった。でも今開いてるマカロンのやつは家で簡単に作れるやり方でしかも食べやすい量で計算してあるから作りやすいはず…ってそのレシピで作った知り合いが感想で言っていたな。」
「そうなんですね。ならちょっと安心です。」
私はほっとしながらも画像のように出来るように頑張ろうと思えた。
「ありがとうございます。青山さん。こんな画像のように出来るかは分かりませんが頑張りますね。」
「嫌われないようにな」
「失礼ですね!」
でもどこか青山さんの言葉に励まされた気がする。
その日のうちに私は材料を買いに行く。
明日帰ってきてすぐに試せるように。
「ふう…私にしては頑張ったかな。」
どこも焦げていたりしてないしピエと呼ばれる部分もちゃんとある。
乾燥の時間や作る時間を考えると今日のやつが限界か…なんて思う。
定時で帰って頑張ったはずがもう暗くなっている。
夕飯も食べずにやっていたからかお腹が空いていて1口試しに食べてみた。
「うん…やっぱりお店のものには適わないけど味は美味しい…はず。」
少し苦めに作ったガナッシュも成功したらしい。
明日作る事は出来なくてもこれなら渡せる!
ちゃんとしたラッピングとして箱も用意したしこれに入れれば完璧。
先輩方やお世話になってる人達へのチョコも用意したし…私にしては完璧じゃない?
明日は定時で上がれそうだし関さんもその日は定時で上がるって言ってたはずだ。
関さんに1番に渡せるといいな…なんて思いながらマカロンを一つ一つ丁寧に箱に入れていく。
あとはメッセージカードを書いて入れれば完成…でもメッセージカードは明日入れた方がいいかな。
何か思ってた以上の出来になって少し満足。
その箱を手に取って冷蔵庫にそっと入れる。
これで明日は完璧だし…夕飯も私が作ると言ってある。
なんか待ち遠しいなぁ…
遠くもない明日なのに長く感じる。
私はその日心を弾ませながら眠りについた。
バレンタイン当日も予定は狂わずすんなり定時で帰れた。
バレンタインにこんなにテンション上がるのいつぶりだろう。
LIMEで「もうすぐ着く」というメッセージも来ている。
私はそのメッセージに「分かりました」と返信をする。
関さんどんな顔するかなぁ…
私は自分の家の冷蔵庫から取り出してきたチョコをバッグに入れてバレないようにして関さんを待つ。
時々ちゃんと入っているのか心配になってバッグの中を見たりして。
ゆっくりに感じる時計の針を見ながら待った。
すると彼が帰ってきた事を伝えるドアの開く音が聞こえた。
私は玄関まで行って帰ってきた関さんに笑顔を向けた。
「おかえりなさい、関さん。」
「あぁ、ただいま。玲。」
仕事の時には聞けない名前呼びにまだ少し慣れず恥ずかしさが込み上げる。
そんな彼の手には紙袋があった。
「それはどうしたんですか?」
「ん、あぁ、バレンタインだからと貰ったんだ。甘いものは食べないからと断ったんだが…」
…まぁこれも予想通りといえば予想通りだけど…どこか胸が痛む。
「食べないのは勿体ないから最悪は渡部への差し入れにしようかと思ったんだが。」
「確かに、渡部さん甘いもの好きそうですもんね。」
「よくチョコやクッキーなんかを差し入れに持ってくるからな。」
紙袋に入っているのはやっぱり上手に出来たパウンドケーキやトリュフチョコなど。
見た目だけでも私の作ったものの何倍も上手だ。
…なんか…渡すの勇気いるな。
その後は普通に夕飯を食べて私がシャワーを浴びて…って感じで未だに渡せていない。
それどころかバッグから出すことすらままならず…
今は関さんがシャワー浴びている今がチャンスだと思ってバッグからとりあえず取り出してみる。
赤色の箱にピンクのリボン。
それを脳内でイメトレをしながら関さんがシャワーから出てくるのを待った。
「上がったよ。」
その言葉と同時に振り返れば上半身裸の関さん。
相変わらず色気が…
「って関さん!上着てくださいよ!」
「あはは、ごめん。」
軽く流す関さんは楽しんでるように思えた。
薄めのTシャツを着ながら関さんは笑っていた。
「今日の夕飯も美味しかった。楽しみにして仕事を頑張った甲斐があったよ。」
「普通ですよ。私も別に上手とは言えないですけど…」
「俺からしたら玲の料理が1番美味しいよ。」
そんな素直な言葉が私は嬉しくてつい照れてしまう。
…渡すなら絶対に今だ。
「…あ、あの…」
「ん?」
「その…私もバレンタイン用意したんです。多分関さんは沢山貰うから迷ったんですけど…」
つい視線をさ迷わせながら言ってしまう。
「玲が用意してくれたのか?忙しかったのに?」
「えっと…はい…」
つい恥ずかしくてそっぽを向いてしまう。
会話が途切れてどうしようなんて思いながらゆっくり関さんの方を向けば目を輝かせながら開けたそうにしていた。
「あ、開けていいですよ。正直言ってほかの人たちよりは全然不格好ですが…」
「いいのか?じゃあ早速開けさせてもらうよ。」
大人っぽく言う言葉とは裏腹に目は輝いていて楽しみにしていてくれた事がわかる。
関さんが箱を開ける。
すると…その中にはメッセージカードは無くてマカロンだけが入っていた。
心の中で少し焦りと困惑が広がる。
そっか…!昨日確か一緒に入れるのはまずいからって後でにしてた…!
そんな事を知らない関さんは中身にビックリしていた。
「これは…」
「マカロンです。これでも…一応…その…手作りで頑張りました。」
「このマカロンを?お店のものよりも美味しそうだ。」
「ありがとうございます…正直自信なかったんですけど…」
「俺からしたら最高のプレゼントだよ。ありがとう。」
箱の中のマカロンを1つ、関さんが手に取って口に運ばれていく。
味見はちゃんとしたし大丈夫…だよね?
「ど、どうですか?」
「もちろん、甘くて美味しい。マカロンってこんなに美味しいものなんだな。」
「良かったぁ…関さん甘すぎるのはダメかなって思って…ちょっと苦めに作ったんです。」
ほっと肩をなで下ろす。
「…本当は玲からバレンタイン貰えるかもしれないとか期待してて…浮かれてたんだ。」
「…へ?」
「別に祝日でもないから興味もなかったんだけどね。でも玲がくれるかもって思ったらなんかいつの間にか楽しみになってたんだ。」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん。はは、俺は結構単純だよ。」
そんな純粋な笑顔を向けられたらついこっちだって笑顔になる。
メッセージカードじゃなくても…今の素直な気持ちを伝えよう。
そう思った。
「私も…関さんが喜ぶ姿ずっと想像しながらバレンタインの用意してました。」
「うん。」
「そしたら作るのも楽しくて、前日なんか眠れなかったりして…遠足前の子供みたいな感じになってました。」
「なんか想像が出来るな。」
「あはは。でもそれくらいずっと関さんの事考えてました。…その…好きです。」
「…っ…そんな可愛い顔で言われると照れるな…」
口元を手で覆いながら照れる仕草をする彼。
「…ありがとう。俺も、玲の事が好きだよ。」
自然と唇が重なり私の口の中にも甘い味が広がった。
バレンタイン。
こんなに幸せな日だなんて知らなかったな。
.*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*..*・゚ .゚・*.
仕事も少し落ち着いてきた2月……
「そう言えば来週バレンタインだよねー。玲ちゃんなんか用意したりしないの?」
キーボードをカタカタと叩きながら夏目くんは言う。
「すっかり忘れてた。そっか。バレンタインの時期だもんね。」
「女子にとっては最大の楽しみなんじゃないの?」
「確かにね。でも私がそんな女子力あるように見える?」
「見えないね。」
バサッと笑顔で言われた言葉に私は心を抉られる。
「夏目くん…もうちょっと優しい言い方ないの…?」
「玲ちゃん遠回しに言っても気づくじゃん。」
すると青山さんがサラッと会話に混ざってくる。
「なんだ?泉の女子力の話か?」
「女子力があるように見える?って聞かれたから答えただけなんですけどねー。」
「容赦ない言い方だな…夏目。」
「せめて欠片くらいはあると思っておきたいですね…」
「…小さい気配りに関しては女子力あると思うぞ。」
「その言い方だとそれ以外に無いって事ですよね?!」
「ほらやっぱり気づいてる。」
「うっ…」
「それ以外にも僕は泉さんの魅力はあると思いますけどね。」
「泉の魅力と言えばやはり体質だろう。そんなものに惹き付けられたヤツらからは俺が守るから代わりに髄液の…」
「いいえ!結構ですから!」
そして帰ってきた由井さんと今大路さん。
一気に話が混沌と化していく。
バレンタインの話からどうしてこんなにもぶっ飛ぶのか…
「と言うか樹さん逃げなくていいんですか?もう定時になりますけど。」
「え?逃げる?」
「…バレンタイン近くなると質問責めされるから基本は定時で帰ってるんだよ。」
何そのイケメンの悩み…。
でもここの人達って本当に顔がいいからなぁ…正直惹かれるのもわかるかも。
「いっそここの人たち全員玲ちゃんくらいにバレンタイン興味なくなってくれないかなーって思いますよね。」
「夏目くん?!サラッと私を貶さないでよ?!」
そのイケメンな顔でサラッと吐かれる言葉に私は更に心を抉られる。
「だって本当のことじゃん?バレンタインなんか用意してたりするの?」
「私だって多少は用意してるもん!」
実際休憩の時間なんかに色々調べてるし…
正直なところを言えば関さんにちゃんと渡したいけど…他の人からもチョコレートは貰うだろうしな…
「なんか玲ちゃん悩みだしてない?」
それどころか1月末からは現場を押さえたからか関さんはずっと走り回っている。
そんな状態でもここに来る時は仕事の疲れを一切見せないし…私としては心配で仕方ない。
それこそバレンタインなんか楽しんでる程暇ではない。
分かっていても少しくらい仕事の疲れを癒せるなら…って思うけど。
「泉?」
でもどんなことをしたら関さんは喜んでくれるんだろうか…
「泉。」
「関さん、今玲ちゃん自分の世界に入ってますよ。」
後ろを振り向けば考えていた人が目の前に居た。
「わっ!関さん!お疲れ様です!」
「少し前から居たよ?玲ちゃん大丈夫?」
「なら教えてよ!夏目くん!」
「だって自分の世界に入り込んでたし。」
「なんか驚かせたみたいだね。」
「俺もいるよー。」
ひょこっと関さんの後ろから出てきた渡部さん。
「渡部さん、外交官の仕事は落ち着いたんですか?」
「今大路くん痛いところついてくるねー。だいぶ片付いたんだけどまだ終わってないかな。来週はまた飛ばされそうな感じだし?」
「渡部…ならこっちに寄ってる暇無いんじゃないか?」
「ワー関パパ怖いー。」
つい私は苦笑いを浮かべる。
「そうだ、泉。後でこの書類に目を通しておいてくれるか?」
「分かりました。」
「由井はこの鑑定書を頼む。」
「了解です。」
「皆、終わり次第昼休憩を取ってくれ。」
「関さんもちゃんと取ってくださいよー。」
笑いながら言ってるけどきっと心配してるんだろうなって伝わってくる言い方で夏目くんは言った。
「そうだそうだー。関がバタンキューしたら大変なんだからなー。」
「あはは。気をつけるよ。」
軽い言葉で渡部さんも言っていた。
そう言えば渡部さんって関さんと長いんだよね…もしかしたら好きな物とかわかるかも…
後でアドバイス聞いてみるのもありかも…
渡部さんなら選ぶものもいいだろうし…
そう思ってみんなが話で盛り上がってる間に渡部さんに声をかける。
「あの…渡部さん。相談があるのですが…」
「んー?なになに?玲ちゃんが聞いてくるってことは関の事でしょ?喧嘩でもした?」
「い、いえ!喧嘩はしてないですよ!」
「そっかー。で、どうしたの?」
「その…関さんが喜びそうなバレンタインってどんなのだろうなと…」
「あーそっか。バレンタインの時期だもんねー。関の事だし玲ちゃんから貰ったものはなんでも喜びそうだけど。」
ニヤニヤと楽しそうな笑みを浮かべながら渡部さんはそういう。
「せっかくなんですから関さんがちゃんと喜ぶ物にしたいじゃないですか。それに…その…チョコレートは他の人から沢山貰ってそうで。」
「ありゃ、嫉妬?」
「そういう訳じゃないですよ。でも同じものじゃ嫌かなと。」
「うーん…玲ちゃんが買ってきた缶ビールひとつでも喜んで惚気けてくる関が玲ちゃんから何を貰っても嫌な顔なんてしないと思うけど。」
「そ、そんなことが…」
「あ、秘密だったのかな。関、ごめん」
カラッと笑いながら聞こえてない関さんに謝ってた。
「でももらう側の男としては愛の篭もった手作りチョコがいちばん良いかな。味が美味しくなくても、どこか焦げてたりしても自分のために作ってくれたって思ったらなんでも美味しく感じるからね。」
「うーん…そんなものなのでしょうか…」
「もし関が頑張って作った料理ならどんなものでも食べるでしょ?」
そう言われて関さんの頑張った姿を想像すると少しにやけてしまう。
「…そうですね。精一杯の女子力を振り絞って手作り頑張ろうと思います!」
「あはは。やる気満々だねー。」
…と言っても…
「どんなのがいいんだろう…」
ここ三日間ほどあんまり人のこない屋上で昼休みを取りながらスマホでレシピを色々検索するけどやっぱり何がいいのか全然わかんない…
「もうあと2日しかないのに…」
レシピを試すどころかどんなのがいいのかさえ決まってない。
「あ…このなるっちです。さんの生チョコすごく美味しそう。ランキングにあるあおぴょんさんのショコラマカロンも美味しそうだし…でもあげるものによって意味があるとか言うし…ちゃんと調べよ。」
ブラウザを開き治して【バレンタイン あげるもの 意味】といれてとりあえずひとつ開く。
「わぁ…色々あるなぁ。キャラメルって安心する存在って意味なんだ…関さんにピッタリかも…でも恋愛とは違うの?こ、細かい…」
マカロンには特別な存在かぁ…でも作るの難しそうかも…さっきの作り方は簡単な方なのかな…。
こういう時はブログであげてる人とかって羨ましくなるな。
こういうのを家で出来る材料で作っちゃうんだから。
うーん…決めた!1年に1回なんだし!気合い入れてマカロン作ってみよう!
まぁ…関さんが意味を知ってるかは分からないけど。
「なに1人で百面相してるんだ?」
「うひゃぁ!?」
唐突に後ろから声をかけてきた青山さんに私は悲鳴をあげる。
「あ、青山さん!驚かせないでくださいよ!」
「悪かったな。驚かせる気は無かったんだが。で?何見てるんだ?すごく集中していたみたいだが。」
「えっと…バレンタインに用意する物を考えているんです。せっかくだから喜んで欲しくて…」
「あげる人いたんだな。」
「失礼なこと言わないでください…」
「悪かった。でも今開いてるマカロンのやつは家で簡単に作れるやり方でしかも食べやすい量で計算してあるから作りやすいはず…ってそのレシピで作った知り合いが感想で言っていたな。」
「そうなんですね。ならちょっと安心です。」
私はほっとしながらも画像のように出来るように頑張ろうと思えた。
「ありがとうございます。青山さん。こんな画像のように出来るかは分かりませんが頑張りますね。」
「嫌われないようにな」
「失礼ですね!」
でもどこか青山さんの言葉に励まされた気がする。
その日のうちに私は材料を買いに行く。
明日帰ってきてすぐに試せるように。
「ふう…私にしては頑張ったかな。」
どこも焦げていたりしてないしピエと呼ばれる部分もちゃんとある。
乾燥の時間や作る時間を考えると今日のやつが限界か…なんて思う。
定時で帰って頑張ったはずがもう暗くなっている。
夕飯も食べずにやっていたからかお腹が空いていて1口試しに食べてみた。
「うん…やっぱりお店のものには適わないけど味は美味しい…はず。」
少し苦めに作ったガナッシュも成功したらしい。
明日作る事は出来なくてもこれなら渡せる!
ちゃんとしたラッピングとして箱も用意したしこれに入れれば完璧。
先輩方やお世話になってる人達へのチョコも用意したし…私にしては完璧じゃない?
明日は定時で上がれそうだし関さんもその日は定時で上がるって言ってたはずだ。
関さんに1番に渡せるといいな…なんて思いながらマカロンを一つ一つ丁寧に箱に入れていく。
あとはメッセージカードを書いて入れれば完成…でもメッセージカードは明日入れた方がいいかな。
何か思ってた以上の出来になって少し満足。
その箱を手に取って冷蔵庫にそっと入れる。
これで明日は完璧だし…夕飯も私が作ると言ってある。
なんか待ち遠しいなぁ…
遠くもない明日なのに長く感じる。
私はその日心を弾ませながら眠りについた。
バレンタイン当日も予定は狂わずすんなり定時で帰れた。
バレンタインにこんなにテンション上がるのいつぶりだろう。
LIMEで「もうすぐ着く」というメッセージも来ている。
私はそのメッセージに「分かりました」と返信をする。
関さんどんな顔するかなぁ…
私は自分の家の冷蔵庫から取り出してきたチョコをバッグに入れてバレないようにして関さんを待つ。
時々ちゃんと入っているのか心配になってバッグの中を見たりして。
ゆっくりに感じる時計の針を見ながら待った。
すると彼が帰ってきた事を伝えるドアの開く音が聞こえた。
私は玄関まで行って帰ってきた関さんに笑顔を向けた。
「おかえりなさい、関さん。」
「あぁ、ただいま。玲。」
仕事の時には聞けない名前呼びにまだ少し慣れず恥ずかしさが込み上げる。
そんな彼の手には紙袋があった。
「それはどうしたんですか?」
「ん、あぁ、バレンタインだからと貰ったんだ。甘いものは食べないからと断ったんだが…」
…まぁこれも予想通りといえば予想通りだけど…どこか胸が痛む。
「食べないのは勿体ないから最悪は渡部への差し入れにしようかと思ったんだが。」
「確かに、渡部さん甘いもの好きそうですもんね。」
「よくチョコやクッキーなんかを差し入れに持ってくるからな。」
紙袋に入っているのはやっぱり上手に出来たパウンドケーキやトリュフチョコなど。
見た目だけでも私の作ったものの何倍も上手だ。
…なんか…渡すの勇気いるな。
その後は普通に夕飯を食べて私がシャワーを浴びて…って感じで未だに渡せていない。
それどころかバッグから出すことすらままならず…
今は関さんがシャワー浴びている今がチャンスだと思ってバッグからとりあえず取り出してみる。
赤色の箱にピンクのリボン。
それを脳内でイメトレをしながら関さんがシャワーから出てくるのを待った。
「上がったよ。」
その言葉と同時に振り返れば上半身裸の関さん。
相変わらず色気が…
「って関さん!上着てくださいよ!」
「あはは、ごめん。」
軽く流す関さんは楽しんでるように思えた。
薄めのTシャツを着ながら関さんは笑っていた。
「今日の夕飯も美味しかった。楽しみにして仕事を頑張った甲斐があったよ。」
「普通ですよ。私も別に上手とは言えないですけど…」
「俺からしたら玲の料理が1番美味しいよ。」
そんな素直な言葉が私は嬉しくてつい照れてしまう。
…渡すなら絶対に今だ。
「…あ、あの…」
「ん?」
「その…私もバレンタイン用意したんです。多分関さんは沢山貰うから迷ったんですけど…」
つい視線をさ迷わせながら言ってしまう。
「玲が用意してくれたのか?忙しかったのに?」
「えっと…はい…」
つい恥ずかしくてそっぽを向いてしまう。
会話が途切れてどうしようなんて思いながらゆっくり関さんの方を向けば目を輝かせながら開けたそうにしていた。
「あ、開けていいですよ。正直言ってほかの人たちよりは全然不格好ですが…」
「いいのか?じゃあ早速開けさせてもらうよ。」
大人っぽく言う言葉とは裏腹に目は輝いていて楽しみにしていてくれた事がわかる。
関さんが箱を開ける。
すると…その中にはメッセージカードは無くてマカロンだけが入っていた。
心の中で少し焦りと困惑が広がる。
そっか…!昨日確か一緒に入れるのはまずいからって後でにしてた…!
そんな事を知らない関さんは中身にビックリしていた。
「これは…」
「マカロンです。これでも…一応…その…手作りで頑張りました。」
「このマカロンを?お店のものよりも美味しそうだ。」
「ありがとうございます…正直自信なかったんですけど…」
「俺からしたら最高のプレゼントだよ。ありがとう。」
箱の中のマカロンを1つ、関さんが手に取って口に運ばれていく。
味見はちゃんとしたし大丈夫…だよね?
「ど、どうですか?」
「もちろん、甘くて美味しい。マカロンってこんなに美味しいものなんだな。」
「良かったぁ…関さん甘すぎるのはダメかなって思って…ちょっと苦めに作ったんです。」
ほっと肩をなで下ろす。
「…本当は玲からバレンタイン貰えるかもしれないとか期待してて…浮かれてたんだ。」
「…へ?」
「別に祝日でもないから興味もなかったんだけどね。でも玲がくれるかもって思ったらなんかいつの間にか楽しみになってたんだ。」
「ほ、本当ですか?」
「もちろん。はは、俺は結構単純だよ。」
そんな純粋な笑顔を向けられたらついこっちだって笑顔になる。
メッセージカードじゃなくても…今の素直な気持ちを伝えよう。
そう思った。
「私も…関さんが喜ぶ姿ずっと想像しながらバレンタインの用意してました。」
「うん。」
「そしたら作るのも楽しくて、前日なんか眠れなかったりして…遠足前の子供みたいな感じになってました。」
「なんか想像が出来るな。」
「あはは。でもそれくらいずっと関さんの事考えてました。…その…好きです。」
「…っ…そんな可愛い顔で言われると照れるな…」
口元を手で覆いながら照れる仕草をする彼。
「…ありがとう。俺も、玲の事が好きだよ。」
自然と唇が重なり私の口の中にも甘い味が広がった。
バレンタイン。
こんなに幸せな日だなんて知らなかったな。