Everyday
二人きりのコンサート
2024/11/01 00:51───西洋魔界・魔淵 城───
ネク:おい。
近衛兵:お、お疲れ様です!ネク様!
ネク:あいつ何処行った。
近衛兵:ボスですか?
近衛兵:ボスなら旋律の間に昨日から籠っておられるみたいです。
ネク:ま た か よ ぉ!!!
近衛兵:まぁまぁ……そろそろアビス様が来られる頃なので……。
ネク:甘太郎?それとあの馬鹿が籠ってるのとなんの………あー……そう言うことかよ……。
コンコン
ベアード:………入れ。
アビス:失礼します。遅くなりました、ボス……。
(おずおずと控え気味に扉を開け覗いていて)
ベアード:別に構わない。向こうで祝いの席でも設けてもらっていたのだろう……?
アビス:………そ……そんなところです。
ベアード:………?何故そんな角にいるんだ……此方に来い、アビス。向こう側だ。
(灰色と黒以外の色のない、吹き抜けた部屋。天窓から月明かりが射し込み、それに照らされるようにグランドピアノが2台背中を合わせるように並んでいて。自分が座っていない方へと促し)
アビス:………失礼します。
(向かい側のピアノの前まで来れば、椅子を引き腰掛けて)
ベアード:さて、………今宵は何がいいんだ?今日はお前の誕生日。望むならば、どんな曲でも弾いてやろう。クラシックでもポップスでも、お前が好きなにんじゃ、とやらのてーまそんぐ?でも構わん。
アビス:………あの、ボスは……。
ベアード:……ん?
アビス:どうして、……俺の為に弾いて下さるんですか……?
ベアード:む………弾きたいからだが?
アビス:そ、それはそうかもしれませんが………ピアノや此処にある沢山の楽譜も………人間界から持ってきた、もので………。
ベアード:………人間達の事を信頼していないのに、か?
アビス:…………っ、……。
ベアード:………それは、その通りだ。今後も否定するつもりもない。
アビス:……………。
ベアード:だが、それでも俺が弾くのは……、弾けばお前が喜ぶからだ。
アビス:………………え?
ベアード:拾ったばかりの頃、お前はずっと城で塞ぎ込んでいただろう。その時に、何が望みなのか聞いた事がある……。
アビス:それがピアノ、ですか……?
ベアード:そうだ。確か、……ネクが一時的に人間界に出向いていた時に持って帰ってきた書物に載っていた。その挿し絵を指差しながら、お前はこれがやりたい、と……。
アビス:………………。
ベアード:覚えていないのか?
アビス:…………お恥ずかし、ながら……。
ベアード:それで、ネクに無茶を言い持ってきたピアノの前に座らせてみれば……お前はするする弾きだすものだから、……城の者は皆驚いたものだ。
アビス:そっ………そうですか……。
ベアード:あまりにも楽しそうにお前が弾くから、俺も少し興味が湧いてな。ネクに楽譜を集めてもらったり、……お前に教わって自分でも弾いてみたり……。
アビス:!!?
ベアード:…………?何を驚いているんだ。
アビス:お、俺が教えたんですか……!?いつ…………。
ベアード:小さかったから、覚えていないのも無理ないだろう。お前は中々スパルタでな……少しでも俺が音を外そうものなら『ちがう!!』と大泣きし出して………。
アビス:ぼ、ボス!!!
(思わず椅子から立ち上がって、ピアノの向こう側をみれば、顔をあげていた反対側の人物と視線が合い)
ベアード:…………アビス。やっと目が合ったな。
アビス:!!
ベアード:今日は一回もまだ合っていなかったぞ。
アビス:……っ……すみません。
(謝罪をすれば、そのまま俯き気味に椅子に座って)
ベアード:お前はいつも遠慮をし過ぎだ、アビス。普段は上司と部下でも、……今日、せめてこの時くらいは………もう少し、俺の子供らしくしてくれてもいい。
アビス:………子供らしく、ですか……。
ベアード:我が儘になればいい。誕生日とは、主役の我が儘を聞く日だろう?
アビス:で、では…………あの………。
ベアード:うん?
アビス:…………あ、貴男の隣に座って、演奏を聴いても良いでしょうか……?
ベアード:………………………。
(思っていなかった言葉に目を丸くしながらアビスを見つめて)
アビス:っ、や、………やっぱりいいです、冗談で……!!?
(ぶんぶんと手を顔の前で振っていると突然視界が揺れ、気付けば自分の椅子ごとベアードの横まで移動してきていて)
ベアード:…………愛いな、お前というやつは。いつもそうしてくれても良いのだが……。
(わしゃわしゃと目の前のアビスの頭を撫で)
アビス:ちょっ…………、ぼ、ボス……!!いつもは無理です……!!
(頬を紅潮させながら顔を逸らしていて)
ベアード:まぁ、今はそれでもいい………。そろそろ披露させてくれないか、アビス。聴かせたい曲が沢山ある。
アビス:………っ、分かりました……ボス。あ、あの……。
ベアード:ん?
アビス:あとででいいのですか……れ、連弾、とか……してみたい、のですが……。
ベアード:………勿論だ。今日はお前にとことん尽くすとしよう。覚悟しておくことだ、アビス。
アビス:………!……はい!
ネク:おい。
近衛兵:お、お疲れ様です!ネク様!
ネク:あいつ何処行った。
近衛兵:ボスですか?
近衛兵:ボスなら旋律の間に昨日から籠っておられるみたいです。
ネク:ま た か よ ぉ!!!
近衛兵:まぁまぁ……そろそろアビス様が来られる頃なので……。
ネク:甘太郎?それとあの馬鹿が籠ってるのとなんの………あー……そう言うことかよ……。
コンコン
ベアード:………入れ。
アビス:失礼します。遅くなりました、ボス……。
(おずおずと控え気味に扉を開け覗いていて)
ベアード:別に構わない。向こうで祝いの席でも設けてもらっていたのだろう……?
アビス:………そ……そんなところです。
ベアード:………?何故そんな角にいるんだ……此方に来い、アビス。向こう側だ。
(灰色と黒以外の色のない、吹き抜けた部屋。天窓から月明かりが射し込み、それに照らされるようにグランドピアノが2台背中を合わせるように並んでいて。自分が座っていない方へと促し)
アビス:………失礼します。
(向かい側のピアノの前まで来れば、椅子を引き腰掛けて)
ベアード:さて、………今宵は何がいいんだ?今日はお前の誕生日。望むならば、どんな曲でも弾いてやろう。クラシックでもポップスでも、お前が好きなにんじゃ、とやらのてーまそんぐ?でも構わん。
アビス:………あの、ボスは……。
ベアード:……ん?
アビス:どうして、……俺の為に弾いて下さるんですか……?
ベアード:む………弾きたいからだが?
アビス:そ、それはそうかもしれませんが………ピアノや此処にある沢山の楽譜も………人間界から持ってきた、もので………。
ベアード:………人間達の事を信頼していないのに、か?
アビス:…………っ、……。
ベアード:………それは、その通りだ。今後も否定するつもりもない。
アビス:……………。
ベアード:だが、それでも俺が弾くのは……、弾けばお前が喜ぶからだ。
アビス:………………え?
ベアード:拾ったばかりの頃、お前はずっと城で塞ぎ込んでいただろう。その時に、何が望みなのか聞いた事がある……。
アビス:それがピアノ、ですか……?
ベアード:そうだ。確か、……ネクが一時的に人間界に出向いていた時に持って帰ってきた書物に載っていた。その挿し絵を指差しながら、お前はこれがやりたい、と……。
アビス:………………。
ベアード:覚えていないのか?
アビス:…………お恥ずかし、ながら……。
ベアード:それで、ネクに無茶を言い持ってきたピアノの前に座らせてみれば……お前はするする弾きだすものだから、……城の者は皆驚いたものだ。
アビス:そっ………そうですか……。
ベアード:あまりにも楽しそうにお前が弾くから、俺も少し興味が湧いてな。ネクに楽譜を集めてもらったり、……お前に教わって自分でも弾いてみたり……。
アビス:!!?
ベアード:…………?何を驚いているんだ。
アビス:お、俺が教えたんですか……!?いつ…………。
ベアード:小さかったから、覚えていないのも無理ないだろう。お前は中々スパルタでな……少しでも俺が音を外そうものなら『ちがう!!』と大泣きし出して………。
アビス:ぼ、ボス!!!
(思わず椅子から立ち上がって、ピアノの向こう側をみれば、顔をあげていた反対側の人物と視線が合い)
ベアード:…………アビス。やっと目が合ったな。
アビス:!!
ベアード:今日は一回もまだ合っていなかったぞ。
アビス:……っ……すみません。
(謝罪をすれば、そのまま俯き気味に椅子に座って)
ベアード:お前はいつも遠慮をし過ぎだ、アビス。普段は上司と部下でも、……今日、せめてこの時くらいは………もう少し、俺の子供らしくしてくれてもいい。
アビス:………子供らしく、ですか……。
ベアード:我が儘になればいい。誕生日とは、主役の我が儘を聞く日だろう?
アビス:で、では…………あの………。
ベアード:うん?
アビス:…………あ、貴男の隣に座って、演奏を聴いても良いでしょうか……?
ベアード:………………………。
(思っていなかった言葉に目を丸くしながらアビスを見つめて)
アビス:っ、や、………やっぱりいいです、冗談で……!!?
(ぶんぶんと手を顔の前で振っていると突然視界が揺れ、気付けば自分の椅子ごとベアードの横まで移動してきていて)
ベアード:…………愛いな、お前というやつは。いつもそうしてくれても良いのだが……。
(わしゃわしゃと目の前のアビスの頭を撫で)
アビス:ちょっ…………、ぼ、ボス……!!いつもは無理です……!!
(頬を紅潮させながら顔を逸らしていて)
ベアード:まぁ、今はそれでもいい………。そろそろ披露させてくれないか、アビス。聴かせたい曲が沢山ある。
アビス:………っ、分かりました……ボス。あ、あの……。
ベアード:ん?
アビス:あとででいいのですか……れ、連弾、とか……してみたい、のですが……。
ベアード:………勿論だ。今日はお前にとことん尽くすとしよう。覚悟しておくことだ、アビス。
アビス:………!……はい!