Everyday

チョコ大作戦~後編~

2024/02/14 20:57
───14日・22時前、派出所───



ゼフ:……フェリシア?

フェリシア:な、なによ……。

ゼフ:こんな時間に出掛けるのですか?

フェリシア:ちょっとコンビニに行くだけよ。

ゼフ:何をしに?

フェリシア:あ、……明日授業で使うものを買いに……。

ゼフ:いつも用意周到なフェリシアが、授業で使うものを買い忘れますかね?

フェリシア:っ……。

ゼフ:それに、時間が時間です。貴女、髪色目立つんですから……行くなら俺も一緒に出ます……

フェリシア:いらないっ!とにかく、ぜっっったいついてこないでよね!?私はあんたより年上だし、お守りなんて要らないんだから!!
(コートを羽織りながら派出所のドアを開け)


ゼフ:ちょっと、………フェリシア!

リヒト:ふわぁ………どったの、騒がしい……。
(スウェット姿で目元を擦りつつ二階から降りてきて)


ゼフ:リヒト……フェリシアが……。

リヒト:んぁ?



───昼ヶ崎、某公園付近───



フェリシア:………くちゅ!!……寒いわね…。
(ベンチに腰掛け、肩にかけていたトートバッグから一つの包みを出し。カップケーキらしく、紺色のリボンで留めてあるそれを見つめて)


フェリシア:…………。(これが一番上手く出来たから包んでみたけど……会える保証もないのになんで飛び出して来たのかしらね……。いや、そもそもゼフが急に出てくるから……!)

フェリシア:はぁ、馬鹿みたいね……帰り……。

男:お嬢ちゃん、こんな所に一人でどーしたの?

フェリシア:!!!
(後ろから声をかけられ咄嗟に立ち上がって振り向き)


男:こんな時間に家出~?
(振り返った先に柄の悪い男が二人。何やらにやけつつフェリシアに近寄って)

フェリシア:ち、違うわよ。今から帰る所……。

男:ん?手に持ってるの……なにこれ?
(フェリシアの手元から包みを取って上に掲げて)

フェリシア:ちょっと、返しなさいよ!!
(取られた包みを取り替えそうと男に手を伸ばし)


男:あー、あれじゃね?バレンタインってやつ!!

男:こんな時間ってことは、受け取って貰えなかったの?うっわ、かわいそ~!!

フェリシア:っ!!

男:じゃあ、代わりに俺等が食べてやるよ。

フェリシア:は!?ふざけないでよ!!誰があんた達なんかに……!!

男:でも、こんな時間とか望み薄だろ?

男:俺等がちゃんと片付けっから、安心しなって~。
(包みのリボンをほどこうとして)

フェリシア:っ、いいから返しなさいよ!
(包みを持つ男の足を思い切り踏み)


男:いって!!
(踏まれた反動で包みを手放し。リボンがゆるくなっていたせいか、カップケーキは袋から出て地面へ転がって)

フェリシア:あっ……!

男:………おい、このガキ……!!何しやがる!!
(フェリシアの髪を引っ張り)

フェリシア:痛っ……離しなさいよ!この不細工!

男:なっ……!

男:お前……、痛い目みないと分からねぇみてぇだなぁ!!
(フェリシアの顔目掛け拳を掲げ)

フェリシア:………っつ!!!
(殴られそうになる手前で目を瞑って)




ドサッ



フェリシア:…………、………?
(一向に拳は降りてこず、恐る恐る目を開きつつ)


アビス:…………ふぅ……間一髪、だな。
(男達は地面に倒れ気を失っているようで)


フェリシア:………あ、……。

アビス:今晩は、フェリシア。駄目じゃないか……こんな夜中に一人で外に出たら。俺がたまたま通りかかったから良かったが……。

フェリシア:どうして……あんた……。

アビス:マダムの店に行っていてな。帰りに公園から聞き覚えのある声が聞こえたからもしや、と思ったんだが……どこも怪我はないか?
(フェリシアの前にしゃがみこみ)


フェリシア:私は、ないけど……。

アビス:ん?これは……?
(ふと視界に入ったものを拾い上げ)


フェリシア:!!

アビス:カップケーキ?
(ココア生地のカップケーキは砂が所々付いており、それをはらいつつ)


フェリシア:か、返して!!

アビス:そうか……今日はバレンタインだったな。……もしかして、誰かにあげる為に作ったのに先程の男達に駄目にされてしまった……のか?

フェリシア:………いいのよ、別に。自分で食べるつもりだったか……。

アビス:どれ……。
(躊躇いもなく一口食べ)


フェリシア:!!!?!

アビス:………うん、美味い。
(紙のカップを千切りながらもくもくと食べ進めて)


フェリシア:ち、ちょっとあんた何してるのよ!?馬鹿なの!!?吐き出して!!!
(アビスの肩に両手を置いて揺らしつつ)


アビス:む、それは無茶だフェリシア……もう俺の腹の中だからな。
(あっという間に食べ終えており)


フェリシア:仮にも地面に落ちてるのをあんた……ランでも食べないのに……。

アビス:折角フェリシアが誰かの為に頑張って作ったんだ。それなのに、誰にも食べられないのは悲しいだろう?まぁ、俺が相手じゃ不服かもしれないが……味の保証は俺が持つ。次はきっと上手くいくさ。

フェリシア:それは……………あんた………に……。

アビス:ん?

フェリシア:…………、何でもない。さっきは助けてくれて………ありがと……。

アビス:ああ……気にするな。フェリシア、もう帰るなら俺が派出所まで送って行こう。

フェリシア:いらないわよ、私は大人なんだから……一人で……。

アビス:フェリシアに何かあったら俺が嫌なんだ。それに、一人で帰したらリヒトやゼフにも怒られてしまう………俺に免じて、今日は送らせてくれないか?

フェリシア:…………し、仕方無いわね……今日だけよ……。

アビス:ありがとう、フェリシア。じゃあ、ほら。

フェリシア:…………は?
(立ち上がったアビスに手を伸ばされ)


アビス:繋ごう!

フェリシア:はぁ!!?なっ………なんでよ!!!!?
(突然の提案に顔を真っ赤にして)


アビス:はぐれたらいけないだろう?

フェリシア:そ、そんな子供みたいな事……!

アビス:生憎、今日は手袋を忘れてしまってな……フェリシアは炎の精霊だし、握っていると暖かくていいかと思ったんだが……。

フェリシア:……………っ、あ、あんた本当に……!!いい加減にしなさいよ!!

アビス:ん?なんで怒ってるんだ?





ゼフ:…………心配いりませんでしたね。

リヒト:んなことだろうと思ったー………ほんと、あれ全部素でやるの怖いわー……。

ゼフ:同感です……まぁ、アビスさんらしいですが……。とりあえず、フェリシアが着く前に俺達も派出所に戻りましょう。

リヒト:はいはい、りょーかい………っとに、相変わらずの脳内花畑だよなぁ………クソ偽善者め……。
(物陰からアビスとフェリシアを一瞥しながらボソリと呟き)


ゼフ:あ、リヒト。その前にコンビニに寄って下さい。牛乳買わないと……ヴォルフラムに頼まれてるんです。

リヒト:それもしかしなくても、あのぬいぐるみ用?

ゼフ:もしかしなくても、です。ぬいぐるみって言うと怒られますよ?

リヒト:へへーん!本人(?)がいなけりゃへっちゃらだもーん!

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