Everyday
昼ヶ崎の魔女
2023/07/14 22:58ウルラ:………よぉ。
依澄:よ、宵待さん!!
ユーゴ:知り合い~?
依澄:俺の家の……店で住み込みで働いてくれてる……。
アビス:じゃあ、もう安心だな。
ザギ:そうだね。
ウルラ:……………。
(いつものエプロン姿ではなく、黒いコートに目元にはゴーグルを着けていて。無言で依澄の方に歩きつつ)
依澄:あ、あの宵待さ……
ウルラ:こんの………阿呆がっ!!!
(手を振りかざしたかと思えば、依澄の頭部目掛けてチョップをし)
依澄:痛っ!!?!
ウルラ:お前……森に入るなっつったろうが!!お前が帰って来ねぇって、ひよがぴーぴー泣きわめいて大変だったんだぞ!!
依澄:……………っ、す、すみませんでした……。
ウルラ:ったく………アビ、お前闇憑きの話したのか?
アビス:ああ、したな。
ウルラ:ちっ………じゃあもう隠しても無駄だな………。
ザギ:まぁ……彼も急に色々言われて整理が付かないだろうし、程々にね。
ウルラ:うっせ………じゃあ、こいつは連れてかえっから。依澄、乗れ。
(しゃがみながら依澄に背中を向けて)
依澄:えっ、あ……いいんですか……?
ウルラ:怪我してんだろうが……それとも、前に抱えた方がいいのか?
依澄:背負う方でお願いします……。
ユーゴ:じゃあ、依澄~。また明日ね~?おやすみ~。
依澄:う、うん………おやすみ。
***
ウルラ:………おら、着いたぞ。
依澄:…………………。
(顔がすっかり青白くなっていて)
ウルラ:お前………大丈夫、じゃねえな。
依澄:ちょっと、………高いところが苦手で………まさか、空飛ぶとは………思ってなくて………。
ウルラ:あー……悪ぃ、忘れてたわ。
依子:………おかえり、依澄。
依澄:………!ば、ばあちゃん……。
依子:森に入ったそうね?
依澄:うっ………ご、ごめんなさい……。
依子:いいのよ、こうやって無事に帰ってこれたんですもの。お腹も空いてるでしょう?早く入りなさいな。
依澄:うん………あ、ひよは……?
依子:ひよちゃんは泣き疲れて寝ちゃったわ……明日、ちゃんと謝ることね。
依澄:うん………あのさ、ばあちゃん。
依子:なあに?
依澄:少し、聞きたいことがあるんだけど……。
───鵜久森家、依子の部屋前───
依澄:……………。
(今まで、ばあちゃんの部屋には一度も入れてもらったことがなかった……それでも、今日はいいよって言ってくれたってことは……話してくれるのでいいんだよな……?)
依子:依澄ー?早く入ってらっしゃい。
依澄:あ、うん……うわぁっ!!?
(促されるままドアノブを回す。恐る恐る扉を開けると、突如視界に現れた謎の生物に驚き思わず尻餅をついて)
依子:大丈夫よ………この子達は襲ったりしないから。
(宙を飛ぶ蝙蝠に手を伸ばせば、一匹手元に寄ってきて)
依澄:……………っ、これは………。
(部屋の中は暗く、妙な気配がする。見たことのない植物や壁一面に本が敷き詰められ、大きな釜や液体の入ったフラスコ等が宙に浮いていて)
依子:はい、じゃあ依澄にここでクイズで~す!
依澄:急に!?
依子:私の年齢はいくつでしょ~か?
依澄:え、………ろ、ろくじゅう……
依子:ブブーーーっ!違いま~す!
依澄:違うの……?
依子:まぁ、そうなるわよねぇ……因みに、正解は350歳よ。
依澄:は…………え、……ええっ!!?!
依子:私は魔女………厳密には人間じゃあ無いの。
依澄:まじょって………そんなの、お伽噺じゃ………。
依子:そうねぇ……でも、こうやって私は現代も生きている。見せた方が早いわねぇ……依澄、足を出してごらんなさい。
依澄:足……?
(尻餅をついたまま立ち上がっておらず、座ったまま怪我をしている方の裾を引っ張り上げて)
依子:…………見ていて。
(依澄の前にしゃがみこみ、患部の上に手を添えて。すると淡い緑色の光に包まれて)
依澄:!!
依子:………ほーら、治ったわよぉ。
依澄:え…………嘘…!?
(足首を動かし。痛みは全く無く、目を丸くしていて)
依子:少し昔話をしようかしらねぇ………あるところに、一人の魔女がおりました。魔女は自由気ままに暮らしていましたが、ある日一人の男に恋をするのです。
依澄:一人の、男……。
依子:そうして、魔女と男の間に娘が生まれるの。娘はなにも知らずに大きくなって、ある日自分の真実を知るのよ。自分は普通の人間ではない………と。
依澄:………………。
依子:娘は母親を罵倒し、家から出ていきました。それから、母親の知らない土地で人間の男と出会い、二人の子宝に恵まれるの。でも、生まれてきた子達はオッドアイで、男の子には自身の不運度を上げる力、女の子には自他の幸運度を上げ、且つ他人の能力値を上げる力が生まれつき備わっていたの。
依澄:それって…………。
依子:母親から離れても、子供達には人間とは違う力が備わっている……自分のせいで。その事に絶望した娘は、事故と見せかけて夫も巻き込んで心中したの……二人の子供を遺してね。
依澄:…………っ!!?
依子:昔から言っていたわね、依澄………両親の事が詳しく知りたいって………これが貴方がずっと知りたがっていた真実よ。
依澄:う、っ………!
(その場に膝をついて)
依子:出来ることならば、知って欲しくなかったのよ………知らなければ、親の死の真実に苦しまずに済んだでしょうに……。
依澄:…………っ、何で……ばあちゃんは俺達を育てようと思ったの……?
依子:どうしてかしらね……やっぱり、娘がああなってしまったから、代わりに愛するものが欲しかったのかも知れないわね。あの子の二の舞になってほしくなくて、二人には何も言わないつもりだった。何も知らずに、幸せに暮らして欲しかったのだけれどね……。
依澄:………………。
依子:それから依澄、………貴方には娘が死ぬ時に掛けた呪いが掛かってしまっているの。
依澄:………呪い?
依子:それが闇憑き。ありとあらゆる不幸を自分に引寄せてしまう負の呪い……元々、貴方には生まれつき不運増加の力がある。そこに輪をかけて闇憑きの呪いが掛かっているの。これ貴方が思ってるよりかなり危険なものなのよ。
依澄:それって、どのくらい……。
依子:私の結界と陽依の幸運増加、ウルラの闇喰いが無ければ貴方は今生きていないわね。
依澄:…………!
依子:それにあの森の夜は異界と一緒………何が起こってもおかしくないの。あの場所の安全地帯は、森の奥にあるダークナイトマンションだけ。
依澄:ダークナイト、マンション……?
依子:貴方が訪れた洋館よ。アレは普段は見えないけれど、満月を含む一週間だけ普通の人間でも認知出来るようになるの。たまたま貴方はお友達がいたから助かったけど、いなかったらどうなっていたかしらね…。
依澄:じゃあ………もし、新月の時に森に入ってたら………。
依子:死んでいたかもしれないわね。
依澄:…………………っ。
依子:この話を聞いて、貴方がどうするのかは知らないけれど……貴方がどの道を選んでも、私は止めるつもりはないわ。ひよちゃんにこの事を話してもいいし、私が気持ち悪いなら出ていってもいいし……。ただ、この家を離れる事はこれから先、死と隣り合わせの生活を送る事になる………と言うのは、頭に置いといて頂戴ね。
依澄:…………分かった……話してくれてありがとう………おやすみ。
依子:えぇ、おやすみ。
***
依澄:…………!あ………。
(二階に上がろうとした階段の手前に人影を見つけて)
ウルラ:おー。話、聞いたみたいだな。
(格好はいつものエプロン姿に戻っており)
依澄:………宵待さんも、人間ではないんですか?
ウルラ:俺はバアサンが使役する使い魔だからな。
依澄:………そうですか……。
(ウルラの前を通りすぎてそのまま二階に上がっていき)
ウルラ:……………大丈夫なんかねぇ、あいつ。
(上がっていく姿を見送りながらポツリと溢して)
依澄:よ、宵待さん!!
ユーゴ:知り合い~?
依澄:俺の家の……店で住み込みで働いてくれてる……。
アビス:じゃあ、もう安心だな。
ザギ:そうだね。
ウルラ:……………。
(いつものエプロン姿ではなく、黒いコートに目元にはゴーグルを着けていて。無言で依澄の方に歩きつつ)
依澄:あ、あの宵待さ……
ウルラ:こんの………阿呆がっ!!!
(手を振りかざしたかと思えば、依澄の頭部目掛けてチョップをし)
依澄:痛っ!!?!
ウルラ:お前……森に入るなっつったろうが!!お前が帰って来ねぇって、ひよがぴーぴー泣きわめいて大変だったんだぞ!!
依澄:……………っ、す、すみませんでした……。
ウルラ:ったく………アビ、お前闇憑きの話したのか?
アビス:ああ、したな。
ウルラ:ちっ………じゃあもう隠しても無駄だな………。
ザギ:まぁ……彼も急に色々言われて整理が付かないだろうし、程々にね。
ウルラ:うっせ………じゃあ、こいつは連れてかえっから。依澄、乗れ。
(しゃがみながら依澄に背中を向けて)
依澄:えっ、あ……いいんですか……?
ウルラ:怪我してんだろうが……それとも、前に抱えた方がいいのか?
依澄:背負う方でお願いします……。
ユーゴ:じゃあ、依澄~。また明日ね~?おやすみ~。
依澄:う、うん………おやすみ。
***
ウルラ:………おら、着いたぞ。
依澄:…………………。
(顔がすっかり青白くなっていて)
ウルラ:お前………大丈夫、じゃねえな。
依澄:ちょっと、………高いところが苦手で………まさか、空飛ぶとは………思ってなくて………。
ウルラ:あー……悪ぃ、忘れてたわ。
依子:………おかえり、依澄。
依澄:………!ば、ばあちゃん……。
依子:森に入ったそうね?
依澄:うっ………ご、ごめんなさい……。
依子:いいのよ、こうやって無事に帰ってこれたんですもの。お腹も空いてるでしょう?早く入りなさいな。
依澄:うん………あ、ひよは……?
依子:ひよちゃんは泣き疲れて寝ちゃったわ……明日、ちゃんと謝ることね。
依澄:うん………あのさ、ばあちゃん。
依子:なあに?
依澄:少し、聞きたいことがあるんだけど……。
───鵜久森家、依子の部屋前───
依澄:……………。
(今まで、ばあちゃんの部屋には一度も入れてもらったことがなかった……それでも、今日はいいよって言ってくれたってことは……話してくれるのでいいんだよな……?)
依子:依澄ー?早く入ってらっしゃい。
依澄:あ、うん……うわぁっ!!?
(促されるままドアノブを回す。恐る恐る扉を開けると、突如視界に現れた謎の生物に驚き思わず尻餅をついて)
依子:大丈夫よ………この子達は襲ったりしないから。
(宙を飛ぶ蝙蝠に手を伸ばせば、一匹手元に寄ってきて)
依澄:……………っ、これは………。
(部屋の中は暗く、妙な気配がする。見たことのない植物や壁一面に本が敷き詰められ、大きな釜や液体の入ったフラスコ等が宙に浮いていて)
依子:はい、じゃあ依澄にここでクイズで~す!
依澄:急に!?
依子:私の年齢はいくつでしょ~か?
依澄:え、………ろ、ろくじゅう……
依子:ブブーーーっ!違いま~す!
依澄:違うの……?
依子:まぁ、そうなるわよねぇ……因みに、正解は350歳よ。
依澄:は…………え、……ええっ!!?!
依子:私は魔女………厳密には人間じゃあ無いの。
依澄:まじょって………そんなの、お伽噺じゃ………。
依子:そうねぇ……でも、こうやって私は現代も生きている。見せた方が早いわねぇ……依澄、足を出してごらんなさい。
依澄:足……?
(尻餅をついたまま立ち上がっておらず、座ったまま怪我をしている方の裾を引っ張り上げて)
依子:…………見ていて。
(依澄の前にしゃがみこみ、患部の上に手を添えて。すると淡い緑色の光に包まれて)
依澄:!!
依子:………ほーら、治ったわよぉ。
依澄:え…………嘘…!?
(足首を動かし。痛みは全く無く、目を丸くしていて)
依子:少し昔話をしようかしらねぇ………あるところに、一人の魔女がおりました。魔女は自由気ままに暮らしていましたが、ある日一人の男に恋をするのです。
依澄:一人の、男……。
依子:そうして、魔女と男の間に娘が生まれるの。娘はなにも知らずに大きくなって、ある日自分の真実を知るのよ。自分は普通の人間ではない………と。
依澄:………………。
依子:娘は母親を罵倒し、家から出ていきました。それから、母親の知らない土地で人間の男と出会い、二人の子宝に恵まれるの。でも、生まれてきた子達はオッドアイで、男の子には自身の不運度を上げる力、女の子には自他の幸運度を上げ、且つ他人の能力値を上げる力が生まれつき備わっていたの。
依澄:それって…………。
依子:母親から離れても、子供達には人間とは違う力が備わっている……自分のせいで。その事に絶望した娘は、事故と見せかけて夫も巻き込んで心中したの……二人の子供を遺してね。
依澄:…………っ!!?
依子:昔から言っていたわね、依澄………両親の事が詳しく知りたいって………これが貴方がずっと知りたがっていた真実よ。
依澄:う、っ………!
(その場に膝をついて)
依子:出来ることならば、知って欲しくなかったのよ………知らなければ、親の死の真実に苦しまずに済んだでしょうに……。
依澄:…………っ、何で……ばあちゃんは俺達を育てようと思ったの……?
依子:どうしてかしらね……やっぱり、娘がああなってしまったから、代わりに愛するものが欲しかったのかも知れないわね。あの子の二の舞になってほしくなくて、二人には何も言わないつもりだった。何も知らずに、幸せに暮らして欲しかったのだけれどね……。
依澄:………………。
依子:それから依澄、………貴方には娘が死ぬ時に掛けた呪いが掛かってしまっているの。
依澄:………呪い?
依子:それが闇憑き。ありとあらゆる不幸を自分に引寄せてしまう負の呪い……元々、貴方には生まれつき不運増加の力がある。そこに輪をかけて闇憑きの呪いが掛かっているの。これ貴方が思ってるよりかなり危険なものなのよ。
依澄:それって、どのくらい……。
依子:私の結界と陽依の幸運増加、ウルラの闇喰いが無ければ貴方は今生きていないわね。
依澄:…………!
依子:それにあの森の夜は異界と一緒………何が起こってもおかしくないの。あの場所の安全地帯は、森の奥にあるダークナイトマンションだけ。
依澄:ダークナイト、マンション……?
依子:貴方が訪れた洋館よ。アレは普段は見えないけれど、満月を含む一週間だけ普通の人間でも認知出来るようになるの。たまたま貴方はお友達がいたから助かったけど、いなかったらどうなっていたかしらね…。
依澄:じゃあ………もし、新月の時に森に入ってたら………。
依子:死んでいたかもしれないわね。
依澄:…………………っ。
依子:この話を聞いて、貴方がどうするのかは知らないけれど……貴方がどの道を選んでも、私は止めるつもりはないわ。ひよちゃんにこの事を話してもいいし、私が気持ち悪いなら出ていってもいいし……。ただ、この家を離れる事はこれから先、死と隣り合わせの生活を送る事になる………と言うのは、頭に置いといて頂戴ね。
依澄:…………分かった……話してくれてありがとう………おやすみ。
依子:えぇ、おやすみ。
***
依澄:…………!あ………。
(二階に上がろうとした階段の手前に人影を見つけて)
ウルラ:おー。話、聞いたみたいだな。
(格好はいつものエプロン姿に戻っており)
依澄:………宵待さんも、人間ではないんですか?
ウルラ:俺はバアサンが使役する使い魔だからな。
依澄:………そうですか……。
(ウルラの前を通りすぎてそのまま二階に上がっていき)
ウルラ:……………大丈夫なんかねぇ、あいつ。
(上がっていく姿を見送りながらポツリと溢して)