Everyday

秘密の館と来訪者

2023/07/12 23:44
依澄:それって、どういう………。


ギィイイイ……


依澄:!!?
(屋敷の扉が開き、思わず身構え)


アビス:……ユーゴ!帰ったのか?

ユーゴ:うん~、ただいま~。

アビス:ああ、お帰り………と、そちらは……。

依澄:…………!!……あ、あの、俺は……。

ユーゴ:おれの友達だよ~。森に入って~、迷っちゃってたみたい~…。

アビス:なんと………ん?もしかして、怪我をしているのか?

依澄:あ、これは……。

アビス:こうはしてられん、急いで入ってくれ。手当てしよう。

ユーゴ:は~い。

依澄:ちょっ!?い、犬飼君…!!

ユーゴ:大丈夫、大丈夫~。



***



ザギ:…………うん、これで大丈夫だと思うよ。
(患部に包帯を巻きガーゼを被せて)


依澄:ありがとうございます……。

ザギ:これくらい構わないよ。それにしても、君は何故森にいたのかな?

依澄:…………!す、すみません……。

アビス:謝ることじゃないさ。だが、人間には夜の森は危険が多い……けれど、それでも入ったのには何か理由があるのだろう?

依澄:えっと………犬飼君……。

ユーゴ:なぁに~?

依澄:これ………。
(拾ったブレスレットをポケットから出して)


ユーゴ:っ!!
(依澄の手にあったそれを素早く取り)


依澄:!!?

ユーゴ:あっ………ご、ごめん……。
(申し訳なさそうに頭部の耳が垂れており)


依澄:いや、大丈夫だよ………それを犬飼君が俺と別れた時に落としたから、大事なものだといけないかなと思って……。

ユーゴ:それで、森に入ったの~……?

依澄:うん………まだ別れて一、二分だったし、走ったら追い付けると思って……。

アビス:………少年。君はユーゴの大切な友人だから、これだけは言わせてくれ。

依澄:……は、はい……。

アビス:気遣って届けに来てくれたことは、感謝する。だが、ここは夜見の森………人間が夜に足を踏み入れれば、命の保証は出来ない。そういう場所なんだ。

依澄:………!?

ザギ:この森はね……人じゃ無いモノがいる。僕等みたいに、人間に害を与えないのもいれば……その逆も。特に、人間はそういったモノの被害に遭いやすい。

アビス:特に君は闇憑きのようだから、用心に越したことはない。

依澄:やみ、つき……?

アビス:この世には、霊を引寄せやすい人間がいるだろう?君が引寄せているのは他人の『闇』だ。本来、他人が受ける筈だった悪い出来事を、自分へと強く引寄せている。君が今まで、良くない目に遭っていたのは他人から闇を引寄せていたからだ。

依澄:そ、そうなんですか……。

アビス:特に、闇憑きの者は夜になればなるほどそういったものを引寄せてしまう。本当に良く無事だったな。ユーゴが見に行ってくれたお陰だ。

依澄:えっ?

ユーゴ:ん~……妙に嫌~な感じがしたんだよね~……だから、散歩ついでに森を見回ってたの~……。そしたら、人間の気配がして~……。

依澄:それで、あそこにいたんだね……ありがとう、犬飼君……。

ユーゴ:おれはなにもしてないよ~……。
(ソファに座る依澄の前の床に膝を抱えて座って、依澄を見て)


依澄:………どうしたの?犬飼君……?

ユーゴ:依澄、怒ってない~……?

依澄:怒る?どうして?

ユーゴ:おれ、ずっと嘘ついてたんだよ~……。人間のふりして、学校に行ってたし~……ブレスレットだって………。

依澄:………でも、犬飼君は俺をここまで連れてきてくれたし、君がいなかったら俺は生きていなかったかもしれないから………ブレスレットのことも気にしないで?

ユーゴ:何も聞かないの~……?

依澄:話したくないことの一つや二つ、誰にだってあるよ。

ユーゴ:うぅ~……依澄~……優しい~……。
(パタパタと尻尾を振りつつ)


依澄:だって、犬飼君は友達だからね。

ユーゴ:うん~……ありがと~……。

アビス:さて、もう遅いし……我々が送っていこう。家の者には連絡したのか?

依澄:あっ……えっと、スマホがカラスに盗られてしまって……連絡手段が……。

ザギ:あー…………もしかして、これかな……?
(紺色のカバーのついたスマホを取り出しつつ)


依澄:俺のスマホ……!?

ザギ:すまない、あのカラスは僕の飼っているカラスなんだ。光り物が好きでね………多分、スマホの光に反応したんだと思うよ。

依澄:もう戻ってこないかと思った……!!れ、連絡………ひぇ……。

ユーゴ:どしたの~??

依澄:不在着信が32件来てる……。

ユーゴ:あ~……もう23時前だもんね~……ちゃんと言えば分かってくれるよぉ~。

依澄:だといいけど、………これは間違いなく怒られる……!

アビス:そう言えば、自己紹介をしていなかったな。俺はアビス。町役場の職員だ。

ザギ:僕はザギ。図書館の司書をしているよ。

依澄:あぁ……!何処かで見たことある気がしたけど、それでですか……!

ザギ:ふふ、全然人間じゃないだなんて思わなかっただろう?

依澄:全然分かりませんでした……。

アビス:俺達はこうやって人間達に擬態して暮らしているんだ。理由はまぁ、詳しくは言えないのだが……。

ザギ:でも、絶対に君や人間達に害を加えたりはしないから……そこは分かってほしい。出来れば僕達やこの屋敷、ユーゴのことも君だけの中に留めて置いてくれると助かるんだが……。

依澄:わ、かりました…!

ユーゴ:えへへ~。じゃあ、送るよ~。

アビス:帰る前に、君の名前を聞いてもいいか?

依澄:あ、名乗ってませんでしたね……鵜久森依澄です。

ザギ:………鵜久森?

アビス:それって、マダ……。


ブーーーッ!


全員:!!!

依澄:な、………何の音ですか?

アビス:客人用のブザーだな。

ユーゴ:こんな時間に~…?

ザギ:誰だろうね……。

アビス:俺が出よう………皆はここから動かないでくれ。
(胸元のループタイに触れ。触れれば何処からか身の丈以上の鎌が現れ)


依澄:………!!?か、鎌……!!?

ユーゴ:大丈夫、大丈夫~。

アビス:…………開けるぞ。
(扉の持ち手に手を掛けて)



ギィイイイ……

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