Everyday

夜の迷い子

2023/07/10 22:59
───夜見の森───



依澄:……………犬飼くーん!!………おかしいな、まだ一分くらいしか経ってない筈なのに……もういない……。

依澄:(犬飼君は確か、走るのが得意って言ってたな………だとしたら、一瞬入る森は走って突っ切ったのかな?………一旦、犬飼君に連絡を取ってみようかな……。)えっと……スマホ……。


クァーーーーーーッ!!!!!


依澄:うわぁっ!!?
(突然のカラスの鳴き声に思わずスマホを宙に投げ。そのスマホをカラスが咥えていき)あっ!?僕のスマホ!!ちょ……待って!!




依澄:…………ぜぇ……ぜぇ……、ど、どうしよ……見失っちゃった……。
(途中まで追い掛けていたが見失い、息を切らしており)


依澄:(…………結構、森の奥まで来ちゃった気がする……立ち入り禁止区域、過ぎてないよな……?確か、プレートが掛かっている筈だけど………。)月があって助かった……新月だったら、打つ手無しだったな………とにかく、もう少し歩いてみよう。民家とか……あ、あるのかな……?

依澄:(そう言えば、ばあちゃん言ってたな……森の奥には『人じゃ無いものが住んでる』って………。)

依澄:(もしかして今の状況、凄くまずい………?今日に限って、腕時計置いて来ちゃって時間も分からない………けど……)い、いつかは出れるよね……?歩こう!とにかく!



───昼ヶ崎町、鵜久森家───



陽依:ううっ………ぐすっ………。

ウルラ:…………………。

依子:ただいまぁ。

陽依:……!!おばあちゃん!!
(リビングに入ってきた祖母を見るなり抱き付いて)


依子:どうしたの、ひよちゃん……。まさか、ウルちゃんにセクハラされた……?

ウルラ:しねぇわ!!

陽依:おばあちゃん、どうしよう……お兄ちゃんが帰ってこないの……!

依子:依澄が?

陽依:お兄ちゃん、……友達と別れる時にその友達が落とし物したらしくて……それを届けるって言って………。

依子:あらあら……よしよし、ひよちゃん。大丈夫よぉ……ウルちゃん、依澄が最後に連絡してきたのは?
(泣きじゃくる陽依の頭を撫でて)


ウルラ:……………二時間前だ。
(言いながらリビングの時計を見れば、時刻は既に21時30分を過ぎていて)


依子:んー………まずいわねぇ……。

陽依:わ、私探してくるぅ!!

ウルラ:阿呆か、ガキが何言ってやがる。

陽依:だ、だってぇ……スマホだって出てくれないし、……お兄ちゃん、不幸体質なんだよ……!?もし、何かあったら……あ!!け、警察!!警察に言おう!?

ウルラ:いい、………俺が捜してくる。

陽依:ウルラさんが……!?

ウルラ:大丈夫だから、ひよはさっさと飯食って寝ろ。バアサン、あとは頼んだぞ。
(ぽんぽんと陽依の頭を数回撫で)


依子:……分かったら連絡頂戴ね。

ウルラ:おう。

陽依:………おばあちゃん、ウルラさんに任せて大丈夫かな……?

依子:大丈夫よぉ。ウルちゃんはスーパーな店員だもの。さ、ひよちゃんは私とお夕飯にしましょ?

陽依:………わ、………わかった……。



───夜見の森───



依澄:(…………詰んだ。歩いても歩いても、何処かに着く気がしない。
自業自得か………森に入ったら駄目だよって、犬飼君にも言われていたのに……おまけに転んで足は捻るし………。)どうしようかな……。


依澄:(ひよも、ばあちゃんも……宵待さんも心配してるよな………。)


ガサガサッ。
(近くの茂みが大きく揺れ)


依澄:!!?

依澄:(えっ……もしかして、この森野生動物いるの……?だとしたら、今だいぶまずいのでは……!?)に、逃げなきゃ……!


ガサガサッ!!!
(茂みから大きな影が飛び出し)


依澄:っつ!!!
(思わず目を瞑り腕で眼前を覆い)


???:………依澄……?

依澄:…………!!その声、犬飼く………!!?
(聞き覚えのある声に目を開けるも、入ってきた情報に一時停止し)


ユーゴ:ど、どうしたの~……!森に入っちゃ駄目だよって、おれ言ったでしょ~……!
(慌てて依澄の側に寄り。制服姿ではなく、頭部と臀部から犬耳と尻尾が生えていて)


依澄:ほ、………んとうに犬飼君、だよね……?

ユーゴ:そうだよ~…………あっ。
(言われてからはっとして頭を触り。それから何事も無かったかのように一瞬でどちらも仕舞いこんで)


依澄:!!?

ユーゴ:よし、おっけ~……。

依澄:いやいやいや!?もう見たよ!!?

ユーゴ:え~っと、………こっ、コスプレだよぉ~……?

依澄:だとしたら、随分クオリティ高いね!?

ユーゴ:まぁ、今のは気にしないで~……。ほら依澄、立てる~?おれ、森の入り口まで送ってあげるよ~。

依澄:ご、ごめん………ちょっと足を捻っちゃって……。

ユーゴ:マジ~……?ん~……。
(言われた箇所を見ると、腫れ上がっており)


依澄:い、犬飼く…

ユーゴ:依澄~……。今から行く場所を見ても、誰にも言わないって、約束できる~……?

依澄:えっ……?それは……。

ユーゴ:…………………。
(真剣な表情で依澄を見つめつつ)


依澄:で、できるよ……。

ユーゴ:おっけ~……!はい、じゃあおれの背中乗って~……?
(いつものようにへらりと笑みを浮かべたら、依澄に背を向けて)


依澄:お、重いよ?

ユーゴ:へいき、へいき~。あ、乗ってる間は口閉じてた方がいいよぉ~…。
(依澄を背負い上げれば、再び耳と尻尾が生えてきて)


依澄:えっ!?いや、犬飼君……!?これは……。

ユーゴ:ちょっととばすから~………よっ!!
(地面を軽く蹴れば、そのまま走りだして。スピードは車くらい出ていて)


依澄:うわぁああああああああああっ!!!???



***



ユーゴ:…………と~ちゃ~く。……依澄、大丈夫~~?

依澄:ちょっと、酔ったかも………。

ユーゴ:あ~……ごめんね~……?人を背負いながらって、加減出来ないかもしんない~……。

依澄:少し休んだらだいじょ……ん?…………!!
(何処からか強い花の香りがし、顔を上げ。そこには一面のゲッカビジンが咲き誇り、その中心に大きな洋館があり)


ユーゴ:ここ、おれの家なんだ~……。

依澄:ここが!?こんな大きなお屋敷、あったら地図に載ってるはずじゃ……!!

ユーゴ:ん~……ここはねぇ、人間が住んでないから載ってないんだよ~……。

依澄:…………えっ?

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