日常

同じ気持ち

2023/12/21 21:34
───儀式の洞窟───



雪白:ちくさくん、おまたせー!

千草:あ、帰ってきたか………って、……。

黒喰:…………………。

千草:どういう状況……?

小豆:くろさんがかーさんの家で呑んだくれてたので、にーさんが拘束して、あずが担いできたのです。よっと!
(担いでいた黒喰を地面に放り投げ)


黒喰:痛っ!
(小豆に投げられそのまま尻餅をつき)


千草:酒に逃げるのは………どうなんだ……。

黒喰:…………それには返す言葉もない……。

雪白:……………くーろさま?
(黒喰の目の前にしゃがんでにこにこしながら見つめて)


黒喰:…………なに……痛い痛い!!!
(恐る恐る言葉を紡ごうとするが、その瞬間に頭上から雹が降ってきて)


雪白:わたしがなんでおこってるかわかる?
(そのまま首より下を氷漬けにして)


黒喰:……………雪白、分かってくれ……。

雪白:やだ。

黒喰:……………我が儘言わないでくれ……。

雪白:はぁーーー!!?ワガママ言ってるのはクロさまでしょーーー!?なにこの手紙!!
(くしゃくしゃに丸めた手紙を黒喰の顔面に向かって投げて)


黒喰:…………、それは……。

雪白:そっちがついてきてって言ったのに!なんで勝手にまたいなくなろうとするの!

黒喰:…………君の母を殺したのは私だよ。

雪白:ちがうもん!

黒喰:違わないさ……都合の悪いことだけ忘れて、こうやって私だけがのうのうと生きていた……それこそが証明だよ……。

雪白:それじゃあ……クロさまは、わたしがいなかったらよかった……?

黒喰:……っ!!それは違う!!

雪白:だったら!!勝手にいなくなろうとしないで!!どうせクロさまのことだから……おかあさんとのやくそくを忘れていっぱい人をころした自分と、なにも知らないわたしがいっしょにいたらだめとか、そんなことを考えてたんでしょ!!

黒喰:………………………っ……。

小豆:(あれは………図星ですね。)

千草:(図星だな………。)

雪白:わたしはね、クロさま………クロさまがおとうさんとか……そういうのはどうでもいいの。

黒喰:………………?

雪白:おかあさんに言われたんだよね?おねがい、って………なのになんでいまさらまた離れようとするの?わたしをおいていくの?

黒喰:………………。

雪白:クロさまが……おかあさんを、おかあさんがクロさまを大好きだったように……わたしだって、クロさまが大好きなの……クロさまは、ちがうの……?

黒喰:……………それは……、っ、赤いお嬢さん。

小豆:ほよ?あずですか?

黒喰:氷を砕いてくれないか。

小豆:ああ!合点なのですよ。そりゃ!
(頼まれれば黒喰の側に寄って。右の拳を黒喰の背中に向かって放てば、氷が音を立てて崩れ)


黒喰:千草は私の蔦を切ってくれ。

千草:逃げないなら切るが……。

黒喰:もう何処にも逃げないよ。

千草:………………。
(近くに立て掛けてた太刀を手に取り。手元と足元に掠る程に振り下ろせば蔦は切れて)


黒喰:……………雪白。
(再び雪白に正面から向き直って)


雪白:………………なに、……!
(そのまま黒喰に強く抱きしめられて)


黒喰:私は……君が本当の事を知った時に、軽蔑されたくなくて……嫌われたくなくて、あんな手紙を書いて君から逃げたんだ。それは本当にすまなかった……。

雪白:…………………。

黒喰:情けない話だ……。こうやって、皆の力を借りなければ………私は一生君から逃げていただろう……。けど、私はね……君の事も、白藤の事も……同じくらい愛している………何ものにもかえがたい存在なんだ。この気持ちに嘘偽りなんてない。

雪白:………っ、………くろ、さま……。

黒喰:私は………君や皆が思っているよりもずっと臆病なんだ……。この先も至らない所があるだろう……。でも、それでも…………まだ私の事が好きだと、君は言ってくれるのかな……?

雪白:そんなの…………いまさら………だよ………クロさま……!
(ぼろぼろと泣きながら黒喰の背に腕を回して)


黒喰:…………そうだったね……、雪白。

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