日常
誘いの歌
2023/12/09 21:00黒喰:………この辺りから聞こえるんだが…………?
(森の中を声の聞こえる方に歩みを進め。幾つもの茂みを掻き分けた先に小さな祠とその側に社があり)
黒喰:(あの村にこんな社は無かったはず……と言うことは、隣の村まで来てしまったのか?……とりあえず、誰が歌っているかだけでも確認しよう………。)
(そっと社に近付き、格子窓から中を覗く。中には月明かりに照らされた白い髪の少女がいて)
黒喰:(……………少女……、か?それにしても、不思議な歌だ………心が穏やかになる………。)
???:………………、どなた……?
黒喰:!
???:…………そこの方です。鍵はかかってませんから、どうぞ入ってらして。
黒喰:………………。(罠だろうか………いや、敵意は感じない……彼女以外の気配もない……なるべく刺激しないように……。)
黒喰:(入り口側に回り込む。古びた木製の戸は言われた通り鍵はかかっていないものの外側から開かなくするための板が側に立て掛けられていて、それを横に寄せつつ戸を開けて)……………すまない…、怪しい者では……。
???:…………?………もしかして、外界の方…?
(祭壇の手前にある座布団の上に座っており。顔を黒喰の方に向けるが、何処か焦点は合っていないようで)
黒喰:え?
???:すみません、………私は目が見えないのです……。何もしませんから、此方に来てくれませんか……?
黒喰:……………貴方は……。
(言われるままに彼女の側に寄り膝をついて様子を窺い)
白藤:私は白藤(しらふじ)………訳あって此処で生活しています。貴方様はどちらから……?
黒喰:私は………。
(ここまで言って思わず口をつぐみ)
白藤:心配しないで下さい………貴方様も妖怪ですよね……?
黒喰:!!
白藤:私も妖怪の端くれ………宜しければ少しお話しませんか……?
***
黒喰:先視 ?
白藤:はい。この目は何も見えなくなってしまったけれど……その頃辺りでしょうか。先を視る事ができるようになったのです。
黒喰:この村へはどうやって……?
白藤:一月か二月前に、迷って困っていた所を村の方が……ずっと此処に居てくださいねと言われたものですから、甘えてしまって此方に居るのです。
黒喰:そうか……だが、これでは……。
(そう言い周囲を見回す。社の内部は先程見ていた祭壇の他、周囲に大量の貢物、壁には所狭しと札が貼られていて)
白藤:幽閉……ですか?
黒喰:!
白藤:分かっています、この力を利用されている事も…。それでも、盲目の私が誰かの役に立てるならば……それでいいんです……。
黒喰:………………。(彼女は………自分とは違う。誰かの為に己を捧げられる、心優しい人物。………恐れられ疎まれている自分とは……)
白藤:…………?ちょっと、此方に寄って下さいますか?
黒喰:………これ以上、かな……。
白藤:はい。確認したい事がございますので……。
黒喰:………………。
(言われた通りに彼女の目の前に座りなおし)
白藤:…………失礼。
(そっと黒喰の顔に手を伸ばして)
黒喰:っ!!
白藤:ああ……やっぱり……、お声が震えていたから……外は寒かったでしょう……?……そうだ、少し待っていて下さいな。
(頬を触っていた手を下ろし。黒喰に背を向ければ、何やら探っているようで)
黒喰:何か探しているなら私が取ろうか?
白藤:いえ、先程まで作っていたのでこの辺りに………ああ、ありました…!
(もそもそと数ある供物の中から一枚の襟巻きを取り出して、それを黒喰の首に巻き)
黒喰:…………………これは……。
(突然のことに目を丸くし、巻かれた襟巻きと白藤を交互に見て)
白藤:村の方から上等な布を頂いたので、何か作ろうと思って少しずつ作っていて……自分用にと思っていたのですが、宜しければ……。
黒喰:だが………私がこれをもらってしまったら、貴方が寒いだろう?
白藤:いいんです。これでも寒さには強いんですよ?………雪女ですから。
黒喰:そうか………ならば、ありがたく受け取ろう。ありがとう。
白藤:貴方様のお名前は?
黒喰:黒喰だ。
白藤:まぁ………白と黒で正反対なのですね。黒喰様………宜しければ、またお話相手になって下さいませんか……?
黒喰:だが………此処には村の者も立ち寄るのだろう?私のような者がいては………。
白藤:大丈夫です。村の方は来る時間が決まっていますので、その時間さえ避ければ…………駄目、でしょうか………。
黒喰:いや………構わないよ。私も一人では退屈していた所だ。
白藤:本当ですか……?では、決まりですね。宜しくお願いします、黒喰様。
(頭を床に着くほどに下げて)
黒喰:………………ああ。
(森の中を声の聞こえる方に歩みを進め。幾つもの茂みを掻き分けた先に小さな祠とその側に社があり)
黒喰:(あの村にこんな社は無かったはず……と言うことは、隣の村まで来てしまったのか?……とりあえず、誰が歌っているかだけでも確認しよう………。)
(そっと社に近付き、格子窓から中を覗く。中には月明かりに照らされた白い髪の少女がいて)
黒喰:(……………少女……、か?それにしても、不思議な歌だ………心が穏やかになる………。)
???:………………、どなた……?
黒喰:!
???:…………そこの方です。鍵はかかってませんから、どうぞ入ってらして。
黒喰:………………。(罠だろうか………いや、敵意は感じない……彼女以外の気配もない……なるべく刺激しないように……。)
黒喰:(入り口側に回り込む。古びた木製の戸は言われた通り鍵はかかっていないものの外側から開かなくするための板が側に立て掛けられていて、それを横に寄せつつ戸を開けて)……………すまない…、怪しい者では……。
???:…………?………もしかして、外界の方…?
(祭壇の手前にある座布団の上に座っており。顔を黒喰の方に向けるが、何処か焦点は合っていないようで)
黒喰:え?
???:すみません、………私は目が見えないのです……。何もしませんから、此方に来てくれませんか……?
黒喰:……………貴方は……。
(言われるままに彼女の側に寄り膝をついて様子を窺い)
白藤:私は白藤(しらふじ)………訳あって此処で生活しています。貴方様はどちらから……?
黒喰:私は………。
(ここまで言って思わず口をつぐみ)
白藤:心配しないで下さい………貴方様も妖怪ですよね……?
黒喰:!!
白藤:私も妖怪の端くれ………宜しければ少しお話しませんか……?
***
黒喰:
白藤:はい。この目は何も見えなくなってしまったけれど……その頃辺りでしょうか。先を視る事ができるようになったのです。
黒喰:この村へはどうやって……?
白藤:一月か二月前に、迷って困っていた所を村の方が……ずっと此処に居てくださいねと言われたものですから、甘えてしまって此方に居るのです。
黒喰:そうか……だが、これでは……。
(そう言い周囲を見回す。社の内部は先程見ていた祭壇の他、周囲に大量の貢物、壁には所狭しと札が貼られていて)
白藤:幽閉……ですか?
黒喰:!
白藤:分かっています、この力を利用されている事も…。それでも、盲目の私が誰かの役に立てるならば……それでいいんです……。
黒喰:………………。(彼女は………自分とは違う。誰かの為に己を捧げられる、心優しい人物。………恐れられ疎まれている自分とは……)
白藤:…………?ちょっと、此方に寄って下さいますか?
黒喰:………これ以上、かな……。
白藤:はい。確認したい事がございますので……。
黒喰:………………。
(言われた通りに彼女の目の前に座りなおし)
白藤:…………失礼。
(そっと黒喰の顔に手を伸ばして)
黒喰:っ!!
白藤:ああ……やっぱり……、お声が震えていたから……外は寒かったでしょう……?……そうだ、少し待っていて下さいな。
(頬を触っていた手を下ろし。黒喰に背を向ければ、何やら探っているようで)
黒喰:何か探しているなら私が取ろうか?
白藤:いえ、先程まで作っていたのでこの辺りに………ああ、ありました…!
(もそもそと数ある供物の中から一枚の襟巻きを取り出して、それを黒喰の首に巻き)
黒喰:…………………これは……。
(突然のことに目を丸くし、巻かれた襟巻きと白藤を交互に見て)
白藤:村の方から上等な布を頂いたので、何か作ろうと思って少しずつ作っていて……自分用にと思っていたのですが、宜しければ……。
黒喰:だが………私がこれをもらってしまったら、貴方が寒いだろう?
白藤:いいんです。これでも寒さには強いんですよ?………雪女ですから。
黒喰:そうか………ならば、ありがたく受け取ろう。ありがとう。
白藤:貴方様のお名前は?
黒喰:黒喰だ。
白藤:まぁ………白と黒で正反対なのですね。黒喰様………宜しければ、またお話相手になって下さいませんか……?
黒喰:だが………此処には村の者も立ち寄るのだろう?私のような者がいては………。
白藤:大丈夫です。村の方は来る時間が決まっていますので、その時間さえ避ければ…………駄目、でしょうか………。
黒喰:いや………構わないよ。私も一人では退屈していた所だ。
白藤:本当ですか……?では、決まりですね。宜しくお願いします、黒喰様。
(頭を床に着くほどに下げて)
黒喰:………………ああ。